• 民事執行法ー7.強制執行の開始と停止・取消し
  • 1.強制執行開始の要件
  • 強制執行開始の要件
  • Sec.1

1強制執行開始の要件

堀川 寿和2022/02/03 16:04

強制執行開始の要件

(1) 強制執行の申立て

 強制執行は、債権者の申立てにより開始する(民執法2条)。申立ては書面でしなければならず、執行力ある債務名義の正本を添付しなければならない。

 

(2) 執行開始の要件

 強制執行を開始するには、次の要件を具備していなければならない。

債務名義が債務者に送達されていること

 強制執行を開始するには、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ又は同時に債務者に送達されていなければならない。

条件成就執行文、承継執行文が送達されていること

 単純執行文の送達は原則として必要がないが、条件成就執行文、承継執行文、債務者を特定しない執行文及びその付与を求めるために債権者が提出した文書の勝本は、あらかじめ又は執行開始と同時に債務者に送達しなければならない。債務者に条件成就、承継につき争う機会を与えるためである。

確定期限が到来していること

 請求が確定期限の到来にかかる場合には、その期限到来後でなければ強制執行を開始することができない(民執法30条1項)(ex 4月1日になったら、金100万円支払え。)。

担保提供の証明があること

 担保を立てることを強制執行の実施の条件とする債務名義による強制執行の場合には、債権者がその命じられた担保を立てたことを文書(供託事項証明書等)により証明しなければならない(民執法30条2項)。

反対給付の履行が証明されたこと

 債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものであるときは、債権者が反対給付の履行又はその提供をしたことを証明したときに限り、強制執行を開始できる(民執法31条1項)。例えば、1000万円を支払うのと引換えに建物の引渡しを命ずる旨の債務名義に基づく強制執行がその例である。

 反対給付の履行は、執行文付与の要件ではなく、執行開始の要件とされている。

代償請求の場合、他の給付の執行不能の証明

 執行不能なときはそれに代えて他の給付が命じられている債務名義の場合は、債権者が本来的給付の強制執行が不能であったことを証明したときに限り開始することができる(民執法31条2項)。

 例えば、自動車の引渡しができない場合には、その給付に代えて金300万円を支払えとする債務名義の場合である。

執行障害がないこと

 以上の要件が具備されていても、債務者につき破産手続開始の決定、会社更生手続開始又は特別清算の開始の事由がある場合、執行を開始し又は続行することができなくなるため、このような執行障害がないことが必要である。