- 宅建業法ー7.重要事項説明
- 1.総説
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1総説
本章からは毎年3問程度出題される。言うまでもなく、宅建試験における最重要テーマであり、最も厳しく暗記が求められる内容である。ここをしっかりと得点できないと合格には近づけない。じっくり時間をかけて取り組んで欲しい。
近年は、貸借や区分建物に関する説明事項が、売買に関する説明事項よりも頻出な傾向もあり、注意が必要である。
■重要事項説明の方法
『重要事項の説明』は、業者の行う商品説明である。宅建業者の扱う『不動産』は、人の生活と活動に不可欠なものであると同時に、非常に高額なものでもある。多くの一般消費者にとって一生に一度の買い物といっても過言でない商品を説明するのが、専門知識を欠く、無資格の従業者であってはならない。よって、 『重要事項の説明』は専門知識を有する取引士だけが行うことができる。
ここでは、重要事項の説明は、顧客に対し、その物件を買ってもよいか(借りてもよいか)どうかを決めてもらうために説明する、ということを理解しておこう。
宅建業法は、その説明の手順を以下のように定める。
宅建業者は、
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※ ただし、物件の買主・借主・交換の両当事者が「宅建業者」である場合は、書面を交付するのみで足りる
なお、宅建業者は、宅地又は建物に係る信託の受益権の売主となる場合における売買の相手方に対し、その者が取得しようとしている信託の受益権に係る宅地又は建物に関し、一定の事項を、取引士をして、説明させなければならない。
Point1 説明義務を負っているのは、「宅建業者」である。実際に説明するのは「取引士」なので、勘違いしやすい。「宅建業者」が、「取引士」を使って、説明させる義務を負っているのである。よって、この義務に違反すると、宅建業者が業務停止処分、特に情状が重いと免許取消を受けることになる。
Point2 説明の相手方は「買主」「借主」、交換の場合は「両当事者」である。これは、その取引対象である物件について一番利害関係をもつ者に説明するということである。売主は、その物件については十分知っているであろうことがいえるし、また、知らなくてもどのみち売り払うのであるからどうでもよいという本音もある。交換の場合は、両当事者とも、その物件を取得するのであるから、両当事者に利害関係があるということである。
Point3 説明時期は、「契約が成立するまでの間」である。これから買うかどうかを決めてもらう、その材料を提供するのだから、契約成立後に説明しても意味がない。
Point4 実際に説明するのは、「取引士」である。取引士以外の者による説明は、『代表取締役』、『社長』等いかなる肩書きの者によっても全て違法である。
Point5 取引士は、「取引士証」を提示して説明しなければならない。説明の相手方から請求されなくても提示義務がある。この提示義務に違反すると10万円以下の過料が課される。
Point6 記名・押印をするのも「取引士」である。この記名・押印をする取引士と説明をする取引士とは別々の取引士でもよい。
Point7 重要事項は、書面を「交付して」説明しなければならない。これは、説明を受ける側が、書面を見ながら説明を聞けるようにするためである。したがって、説明してから書面を交付することは業法違反となる。
Point8 重要事項の説明の場所には制限がなく、どこで行ってもよい。
Point9 重要事項説明書の作成は取引士が行う必要はない。よって、取引士ではない従業者も作成できる。
Point10 「買主」「借主」、「交換の当事者」が「宅建業者」である場合は、取引士が記名押印した書面(35条書面)を交付するだけでよく、取引士に説明をさせる必要がない。
■重要事項の説明にITを活用する場合の取扱い
宅建業者が宅地建物の売買・交換を自ら行う場合や宅地建物の売買・交換・貸借の代理・媒介を行う場合に重要事項の説明にテレビ会議等のITを活用することができる。
ITを活用した重要事項の説明は、次に掲げるすべての事項を満たしている場合に限り、対面による重要事項の説明と同様に取り扱われる。
① 取引士及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像を視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること。
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なお、取引士は、ITを活用した重要事項の説明を開始した後、映像を視認できない又は音声を聞き取ることができない状況が生じた場合には、直ちに説明を中断し、当該状況が解消された後に説明を再開しなければならない。
Point 取引士証の提示は、相手方の承諾があったとしても、省略することはできない。