- 民事訴訟法ー20.多数当事者訴訟
- 4.必要的共同訴訟
- 必要的共同訴訟
- Sec.1
1必要的共同訴訟
■必要的共同訴訟
(1) 必要的共同訴訟の意義
必要的共同訴訟とは、訴訟の目的である権利又は法律関係が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定されなければならない共同訴訟をいう(民訴法40条)。
(2) 必要的共同訴訟の種類
① 固有必要的共同訴訟
全員が共同して訴え、又は訴えられることを必要とする共同訴訟をいう。全員が訴え、又は訴えられなかった場合は当事者適格なしとして訴えは却下されることになる。
例えば、婚姻当事者以外の第三者が提起する婚姻無効確認の訴え、婚姻取消しの訴えの場合には、常に夫婦を共同被告としなければならない。また、株主が提起する取締役の解任の訴えは、会社と取締役双方を被告としなければならない。
② 類似必要的共同訴訟
必ずしも全員が共同訴訟人として訴えを提起する必要があるわけではなく、一部の者のみで訴えを提起することも許されるが、各共同訴訟人と相手方当事者間に訴訟が係属した以上は、判決が各共同訴訟人につき区々となることが許されず、合一確定が要求される共同訴訟である。
例えば、数人の株主による株主代表訴訟や株主総会決議取消しの訴えの場合、株主全員で訴える必要はないが、原告となった数人の株主間で同一の判決が下されなければならない。
(3) 必要的共同訴訟の審判
判決の合一確定を図るため、共同訴訟人独立の原則は認められず、訴訟資料の統一、訴訟進行の統一が図られる。
① 訴訟資料の統一
共同訴訟人の1人がした訴訟行為は有利なものは全員につき効力を生じるが、不利なものは全員がしなければ効力を生じない(民訴法40条1項)。
a) 有利な行為
相手方主張事実の否認、抗弁や証拠の提出、上訴など。
証拠の提出は一般的に有利な行為といえるので、結果的に他の当事者に不利益なものとなったとしても共同訴訟人の一人が提出した証拠は、共同訴訟人全員のために効力を生じるし、相手方の主張を1人でも争えば全員が争ったことになる
b) 不利な行為
請求の放棄、認諾、和解、自白、訴えや上訴の取下げ、訴えの取下げに対する同意など。
よって例えば、AがB及びCを共同被告として訴えている訴訟において、Bが口頭弁論期日において請求を認諾する旨の意思表示をしたとしても、請求の認諾は共同訴訟人にとって不利な行為であり全員でしなければ効力を生じないため、裁判所が固有必要的共同訴訟であることを理由としてBの請求の認諾を認めず、証拠調べをした上でA敗訴判決を言い渡すことは処分権主義に反しない。
また、共同訴訟人の1人が自白してもその効力は生じない。ただし、類似必要的共同訴訟の場合は単独取下げができる。もともと単独で訴えられるものだからである。
c) 相手方の訴訟行為
共同訴訟人の1人に対する相手方の訴訟行為はその利益・不利益に拘わらず、全員につき効力が生ずる(民訴法40条2項)。
② 訴訟進行の統一
必要的共同訴訟人の1人につき中断・中止の事由が生じたときは全員につき訴訟手続が停止される(民訴法40条3項)。また、弁論の分離や一部の共同訴訟人に対する一部判決はできない。
また、共同訴訟人の1人が上訴を提起した場合は、全員に対する関係で判決の確定が遮断し、全訴訟が移審して、上訴審の判決の効力は上訴しなかった共同訴訟人にも及ぶ。
|
通常共同訴訟 |
固有必要的共同訴訟 |
類似必要的共同訴訟 |
訴えの提起 |
必要なし |
必要 |
必要 |
合一確定の要否 |
不要 |
必要 |
必要 |
共同訴訟人独立の原則 |
あり |
制限 |
制限 |
弁論の分離・一部判決の可否 |
可 |
不可 |
不可 |