• 民事訴訟法ー20.多数当事者訴訟
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  • 同時審判申出共同訴訟
  • Sec.1

1同時審判申出共同訴訟

堀川 寿和2022/02/03 13:30

同時審判申出共同訴訟

(1) 同時審判申出共同訴訟の意義

 共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利が、法律上併存し得ない関係にある場合において、原告が同時審判の申出をすれば、弁論及び裁判は分離しないでしなければならない(民訴法41条1項)。通常共同訴訟であるが、同時審判によって矛盾のない統一的な判決を実現しようとするものである。

 

      Aが自己所有の土地をBの代理人と称するCと売買契約を締結した場合

 

 Aは本人Bに対して売買代金の支払請求を、Cが無権代理人であった場合に備えて、同時にCに対し代金又は損害賠償請求の訴訟を提起しようと考えている。

 この場合、別訴によると、Bに対する訴訟では無権代理人であるとして敗訴し、Cに対する訴訟では逆に有権代理であるとして再び敗訴するということが起こり得る。そこで、AはBとCとを共同被告として訴えを提起し、同時審判の申出をすれば、このような矛盾した判決を避けることができるメリットがある。

 

(2) 同時審判申出共同訴訟の要件

共同訴訟であること

原告による申出があること

 被告による申出はできない。

共同被告に対する各権利が法律上併存し得ないこと

事実審の口頭弁論終結の時までであること

 訴え提起時のみならず、控訴審の口頭弁論終結までできる(民訴法41条2項)。

 

(3) 同時審判申出共同訴訟の手続

 申出は、期日でする場合を除き、書面で又は電子情報処理組織を用いてしなければならない。弁論と裁判の分離が禁じられる(民訴法41条1項)。ただし、通常共同訴訟としての性質は失わず、共同訴訟人独立の原則が適用される。したがって、共同訴訟人の1人について生じた事由は他の共同訴訟人に対し効力を及ぼさず、共同訴訟人の1人に中断事由が生じても他の当事者の訴訟は当然に中断しない。

 

(4) 控訴審における併合義務

 第1審判決での勝敗が分かれ、各共同被告に係る控訴事件が同一の控訴裁判所に各別に係属するときは、弁論及び裁判は併合してしなければならない(民訴法41条3項)。控訴審でも審判の統一が確保されることになる。例えば、前例で、Cに対する請求が棄却、Bに対する請求が認容された場合、それを不服としたC及びBが別々に控訴し、両事件が同一の控訴審裁判所に各別に係属したときは、弁論は併合してしなければならない。