- 民事訴訟法ー20.多数当事者訴訟
- 3.通常共同訴訟
- 通常共同訴訟
- Sec.1
1通常共同訴訟
■通常共同訴訟
(1) 通常共同訴訟の意義
本来個別に訴訟を提起し審判することができる数個の請求につき便宜上共同訴訟とすることが認められる場合である。必要的共同訴訟と異なり、全員が共同で訴え又は訴えられる必要性も判決の合一確定の必要性もない。
(2) 通常共同訴訟の趣旨
通常共同訴訟は、本来別々の訴訟で審判を受けてもよく共同訴訟とする必要がない場合であるが、弁論や証拠調べ等が共通の期日でなされるため、審理の重複が避けられ、また事実上事件の統一的な解決が期待でき、当事者の便宜と訴訟経済に資することができることから認められる。
(3) 審理の方式
① 期日
弁論及び証拠調べは原則として共同訴訟人全員に共通の期日で行われる。したがって弁論の全趣旨及び証拠調べの結果も共通して斟酌される。
② 共同訴訟人独立の原則
a) 意義
通常共同訴訟では、各共同訴訟人は訴訟上独立した地位をもち、それぞれ独自に訴訟を追行することができる。「共同訴訟人独立の原則」という。もともと通常共同訴訟は別々の手続で審判されるべきものを、便宜上、共同訴訟としたものであるからである。
したがって、訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、和解は各共同訴訟人が単独ですることができる。
また、上訴についても各共同訴訟人が単独であることができる。
cf 必要的共同訴訟は合一確定の必要があることから共同訴訟人独立の原則は適用がない。
b) 共同訴訟人の1人につき生じた事由
共同訴訟人の1人に生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない(民訴法39条)。したがって、共同訴訟人の1人が期日に欠席したり、訴訟手続の中断又は中止事由が発生しても、他に影響を及ぼさない。
③ 主張共通との関係
共同訴訟人の一方の主張は他方の共同訴訟人の訴訟にも直接影響をもち、他方のためにも主張されたものと扱うことはできないか。例えば、主たる債務者と保証人が共同訴訟人の場合、主たる債務者の弁済の事実の主張は、保証人についてもその事実の主張があったものとして裁判所が認定できないか。判例は、主張共通を否定している(最S43.9.12)。その結果、主たる債務者と保証人に対する訴訟で、保証人は主たる債務の消滅時効を主張したが主たる債務者は主張しなかった場合、それが証拠により認定されても裁判所は主たる債務者については消滅時効を認定することができず、保証人に対しては主たる債務消滅、主たる債務者に対しては存在という不自然な結論を出さざるを得なくなる。
④ 証拠共通との関係
共同訴訟人の1人に対し又は1人により提出された証拠は他の共同訴訟人が援用しているか否かに関係なく、他の共同訴訟人に共通又は関連する事実の認定資料とすることができるか。例えば、主たる債務者と保証人が共同訴訟人の場合、主たる債務者が弁済の事実を主張しその証拠を提出したときは、保証人が弁済の事実を証明しなくとも主たる債務者の提出した証拠によって、裁判所は保証人に対する請求についても弁済の事実を認定できるかという問題である。
判例・通説はこれを認め、通常共同訴訟において、共同訴訟人の1人が提出した証拠又はこれに対して提出された証拠は、特に他の共同訴訟人の援用がなくても共通の事実認定の資料とすることができるとする(大T10.9.28)。自由心証主義の下では、1つの事実についての認定判断(心証)は1つしかありえないことを理由とする。