- 民事訴訟法ー19.複数請求訴訟
- 3.訴えの変更
- 訴えの変更
- Sec.1
1訴えの変更
■訴えの変更
(1) 訴えの変更の意義
① 意義
訴えの変更とは、訴えを提起した後に、新たな請求を審判対象とすることをいう。既に開始されている訴訟手続を維持利用しながら申立事項を変更して、新たな審判対象(訴訟上の請求)を提示するものである。
② 趣旨
原告がある請求につき訴えを提起したが、これに対する審理が進行する中で、当初の請求が誤っていたり、当初の請求では十分な満足が得られないことが判明することがある。このような場合に、新たに訴訟を提起しなおさなければならないとすると、原告に酷であるし、訴訟経済にも反するため、従来の請求に適宜変更を加え、紛争のより実質的な解決を図ることを認めたものである。
(2) 訴えの変更の態様
① 訴えの追加的変更
a) 意義
当初の請求を維持しつつ、新請求についても審理を求める場合である。その結果、請求の併合を生ずるため、さらに単純併合、予備的併合、選択的併合の態様が生ずる。
b) 請求の拡張と減縮
金銭支払請求訴訟で請求額を増額したり、家屋の一部明渡請求を全部明渡請求に変更する場合は訴えの追加的変更である。逆に請求の減縮の場合、判例は訴えの一部取下げと考える(最S30.7.5)。
なお、請求額増額による訴えの変更があった場合、変更後の請求につき訴訟の目的の価格に応じて算出して得た額から変更前の請求にかかる手数料の額を控除した額の手数料を納めなければならない。
② 訴えの交換的変更
従来の請求に代えて、新請求について審判を求める場合である。例えば、建物明渡請求訴訟を提起したが、すでに当該建物が被告の過失により滅失していることが判明した場合に、損害賠償請求に変更する場合がこれにあたる。
(3) 訴えの変更の要件
訴えの変更も、請求併合の一場面なので、請求併合の一般的要件を具備することが必要であるが、訴えの変更を無制限に認めると被告側に混乱が生ずることになるし、また訴訟遅滞をもたらすため、これを防止するため特別の要件が加重されている。
① 請求の併合の一般的要件
a) 各請求が同種の訴訟手続で審判されるものであること(民訴法136条)
b) 法律上特に併合が禁止されていないこと。
c) 各請求について受訴裁判所が管轄権を有すること
② 特別要件
a) 事実審の口頭弁論終結前であること
b) 請求の基礎に変更がないこと
この要件は被告が予想外の変更によって応訴が困難となるのを防ぐためのものであるため、請求の基礎の同一を欠く場合でも、被告が変更に同意したり、変更後の訴えに異議なく応訴した場合には、訴えの変更が認められる(最S28.6.8)。逆にいうと、請求の基礎に変更がない限り、被告の同意は不要であるし、控訴審での訴えの変更の場合も同様である。
判例 |
(最S29.2.26) |
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控訴審においても請求の基礎に変更がない場合には、訴えの変更ができる。 |
⇒ 請求の基礎が同一であれば、新請求についても実質的に審理を受けていることになり審級の利益は害されないからである。
c) 著しく訴訟手続を遅延させないこと
たとえ請求の基礎に変更がなく、被告の同意や応訴があっても、手続が著しく遅延する場合には、訴えの変更は許されない。別訴によらせる方が適当だからである。
d) 交換的変更の場合、相手方の同意があること
訴えの交換的変更は、実質的に訴えの取下げを含んでいることから、相手方が本案につき準備書面を提出し、又は、弁論準備手続で申述したり口頭弁論をしている場合には、その同意を必要とする(民訴法261条2項)。
(4) 訴えの変更の方式
訴えの変更は、書面によりなすことを要する(民訴法143条2項)。しかし、判例は請求の趣旨を変更しない請求原因のみの変更の場合は、書面による必要はないとする(最S35.5.24)。
また、簡易裁判所では口頭で訴えの変更ができる(民訴法271条)。
なお、訴えの変更が書面で行われた場合、その書面を相手方に送達しなければならない(民訴法143条3項)。訴えの変更は、新しい請求を持ち出す点で訴えの提起に準ずるものがあるからである。
時効完成猶予等の効果が、書面提出の時に生ずる点も、新訴の提起と同様である。
(5) 訴えの変更に対する裁判所の措置
① 訴えの変更が不適法であるとき(民訴法143条4項)
訴えの変更がその要件を欠くときは、被告の申立て又は職権で変更を許さない旨の決定をし、従来の請求についての審理を継続する。
② 訴えの変更が適法であるとき
交換的変更の場合には新請求について審理し、追加的変更の場合には旧請求と併合された新請求について審理を継続する。