- 民事訴訟法ー19.複数請求訴訟
- 2.訴えの客観的併合
- 訴えの客観的併合
- Sec.1
1訴えの客観的併合
■訴えの客観的併合
(1) 意義
訴えの客観的併合とは、1人の原告が1人の被告に対して、当初から1つの訴えで数個の請求をすることをいう。
(2) 要件
請求の併合の一般的要件と同様である。
① 各請求が同種の訴訟手続で審判されるものであること(民訴法136条)
② 法律上特に併合が禁止されていないこと。
③ 各請求について受訴裁判所が管轄権を有すること
(3) 併合の態様
① 単純併合
相互に両立しうる数個の請求を併合して、そのすべてにつき判決を求める場合をいう。
a) 請求相互に関連性がない場合
(ex)売買代金支払請求と貸金返還請求
b) 請求相互に一定の関連性がある場合
(ex)売買代金支払請求と貸金返還請求、建物明渡請求と明渡までの延滞賃料の支払請求
② 予備的併合
a) 意義
法律上相互に両立しえない数個の請求に順位をつけて、第1順位の請求(主位請求)が認容されなければ次順位の請求(副位請求)の認容を求めるという形の併合をいう。相互に両立しない.主位請求の認容を解除条件とする予備的請求の併合である。
例えば、買主が売買の目的物の引渡しを求め(第1次請求)、売買が無効でそれが認められない場合に備えて第2次的に売買代金の返還を求める場合がこれにあたる。予備的併合は、各請求が両立しない場合に認められる。
b) 裁判所の審判
原告は主位・副位という順位をつける必要があり、裁判所はこの順位に従い判断しなければならない。
裁判所は1次請求を認容するときは、2次請求については審理をせず、1次請求を棄却又は却下する場合には、2次請求について審判しなければならない。
③ 選択的併合
a) 意義
数個の請求のうちどれか1つの請求が認められれば、他の請求については審理を求めないという趣旨の併合をいう。どれか1つの請求の認容を解除条件とする併合である。
例えば、同一物の引渡しにつき、占有権に基づく引渡し請求と所有権に基づく返還請求とを併合したり、数個の離婚原因に基づいて離婚請求をしたりする場合がこの例である。
b) 裁判所の審判
裁判所はどれか1つの請求を認容すれば他の請求については審判する必要はないが、請求を棄却するにはすべての請求を審判したうえで、理由なしと判断した場合でなければならない。
(4) 併合訴訟の審理と判決
① 併合要件の調査
併合要件は、併合訴訟の訴訟要件であるため、裁判所は職権でその具備の有無を調査しなければならない。
② 本案の審理
併合要件を具備するときは、数個の請求は同一の訴訟手続内で審理裁判される。弁論、証拠調べもすべての請求につき共通に行う(最S41.4.12)。
③ 本案の判決
a) 単純併合
全請求につき審判しなければならず、一部の請求につき判決を脱漏した場合には追加判決をすることを要する(民訴法258条1項)。
b) 予備的併合
裁判所は、原告の指定した順位に従い判断しなければならない。主位請求が認容されると、予備的請求につき裁判をする必要はなくなる。予備的請求認容の場合には、主位請求棄却の裁判が主文で示されなければならない。
c) 選択的併合
1つの請求を認容する場合、他の請求について審理判断する必要はない。ただし、原告敗訴判決をする場合には、併合された全請求について審理して棄却又は却下しなければならない。
④ 弁論の分離・一部判決の可否
a) 単純併合
弁論の分離、一部判決は許される。
b) 予備的併合
弁論の分離・一部判決は許されない。これを認めると主位請求と副位請求とで矛盾判断がなされるおそれがあるからである。
c) 選択的併合
弁論の制限は可能だが、弁論の分離・一部判決は許されない。