- 民事訴訟法ー19.複数請求訴訟
- 1.請求の複数
- 請求の複数
- Sec.1
1請求の複数
■請求の複数
(1) 複数請求訴訟の意義
複数請求訴訟とは、同一当事者間において、複数の請求が同一手続内で審判される訴訟をいう。
(2) 複数請求訴訟の機能
例えば、原告が被告に対し、貸金返還請求と売掛金返還請求を同時に請求し解決することができれば当事者にとっても便利であるし、裁判所としても審理の重複や裁判の矛盾を避けることができる。また、請求訴訟が認められることによって、原告がある請求につき訴えを提起して、訴訟の進展を見ながらこれに関連する新たな請求をこの手続において追加したり、逆に被告の方から原告の請求に関連する訴えを提起したりして、紛争を一挙に解決することも可能となる。
(3) 請求の併合の発生
(4) 請求の併合の要件(一般的要件)
① 併合の要件の必要性
請求の併合が認められれば、審判の重複と矛盾判断を回避し、複数の紛争を一挙に解決できるというメリットがあるが、審理が複雑化して訴訟遅延を招く可能性もある。そこで民事訴訟法は併合の要件を定めている。ただ、併合の要件はさほど厳格ではない。請求の併合により審理が複雑化するようなことがあれば、裁判所は、弁論の分離・制限し、また一部判決などにより対応することができるからである。
② 請求の併合の要件
a) 各請求が同種の訴訟手続で審判されるものであること(民訴法136条)
民事訴訟事件と人事訴訟事件、行政訴訟事件とはそれぞれ手続が異なり、弁論主義の採否など基本原理が異なるため併合できない。例えば、離婚請求訴訟と家屋の明渡請求訴訟は併合できない。前者が人事訴訟で後者が民事訴訟だからである。
b) 法律上特に併合が禁止されていないこと
同種の訴訟手続でも特に併合が禁止されていれば併合できない。
c) 各請求について受訴裁判所が管轄権を有すること
ただし、1つの請求につき管轄があれば、他の請求についても民訴法7条の関連裁判籍が認められるため、本来管轄のない請求も併合することができる。したがってこの要件で併合が許されないのは併合される請求が他の裁判所の専属管轄に属する場合である。