- 民事訴訟法ー18.終局判決に付随する裁判
- 1.仮執行宣言
- 仮執行宣言
- Sec.1
1仮執行宣言
■仮執行宣言
(1) 仮執行宣言の意義
仮執行宣言は、終局判決の確定前に、その内容を実現できる効力を付与する形式的裁判である。
判決は確定して初めて執行力を生ずるのが原則であるが、強制執行に常に確定を要求すると、敗訴者が執行の引き延ばし上訴を濫用することが予想される。そこで、判決確定前にも執行できることにして、勝訴者の利益と敗訴者の上訴の利益との調和を図ったものである。したがって、即時に執行力を生じる決定や命令には仮執行の必要はない。
(2) 仮執行宣言の要件
① 財産権上の請求に関する判決であること(民訴法259条1項)
強制執行終了後、判決が上訴審で取り消された場合、財産権上の請求であれば原状回復、金銭賠償が容易だからである。ただ、財産権上の請求であっても、登記訴訟のような意思表示を命ずる判決には仮執行宣言を付すことができない。確定により意思表示があったものとみなされるからである(民執法177条)。
② 仮執行の必要性があること
必要性の有無の決定は、裁判所の裁量による(民訴法259条1項)。
ただし、手形又は小切手による金銭の支払及びこれに付帯する法定利率による損害賠償の支払を命ずる判決(民訴法259条2項)及び少額訴訟の請求認容判決(民訴法376条1項)の場合には、職権で必ず仮執行宣言を付さなければならないとされている。詳しくは、後述する。
(3) 仮執行宣言の手続
① 第1審判決
申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てさせないで仮執行をすることができることを宣言することができる(民訴法259条1項)。なお、仮執行宣言は、当事者が民事訴訟手続による紛争処理を選んだ結果なされた裁判に付随して裁判制度維持の公共目的との関係でされる裁判であるから、当事者の申立てがない場合に仮執行宣言を付すことは、処分権主義に反するものではない。
② 控訴審判決
申立てがあるとき、不必要と認める場合を除き、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、控訴審裁判所が相当と認めるときは、担保を立てさせることができる(民訴法310条)。
(4) 不服申立て
仮執行宣言は終局判決の確定前にその内容を実現できる効力を付与する形式的裁判であり、終局判決に付随する裁判であるから、これに対する独立した不服申し立ては認められない。
平成○○年(ワ)第○○○○号 貸金請求事件 口頭弁論終結の日 平成○○年○月○○日
判 決
大阪市北区芝田一丁目2番3号 原 告 乙 野 次 郎 神戸市中央区三宮一丁目2番3号 被 告 丙 野 三 郎
主 文 1.被告は、原告に対し金80万円及びこれに対する平成年月日から支払済みまで年5分の 割合による金員を支払え。 2.訴訟費用は被告の負担とする。 3.この判決は、第1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由 第1 請求 主文第1項と同旨。 第2 事案の概要 本件は、原告が貸金残金80万円及びこれに対する弁済期日の翌日から支払済みまで 年5分の割合による遅延損害金の支払請求をしたのに対し、被告が弁済の抗弁を主張 するとともに、仮定的に反対債権である売買代金債権80万円をもって本件訴求債権 と対等額で相殺する旨の主張をし、請求棄却判決を求めた事案である。 ・ ・ ・ ・ ○○簡易裁判所 民事○○部 裁判官 法務 四郎 印
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