- 民事訴訟法ー16.判決の効力
- 1.確定前の判決の効力
- 確定前の判決の効力
- Sec.1
1確定前の判決の効力
■自己拘束力・自縛力
言渡しによって判決が成立すると、確定をまたず、判決をした裁判所はもはや判決の撤回や変更をすることができなくなる。これを成立した判決の自己拘束力又は自縛力という。しかし、判決の自己拘束力を徹底することはかえって判決の適正を欠くことがあることから、判決の変更と判決の更正の例外が認められる(民訴法256条、257条)。
なお、後述するが、決定•命令については、抗告に基づく再度の考案が認められている(民訴法333条)。
■判決の変更
(1) 判決の変更の意義
判決の変更とは、判決をした裁判所が自ら法令違反に気づいたときに、その判決を撤回して新たな判決をすることをいう。この判決を変更判決という(民訴法256条)。上訴で取り消される瑕疵ならば、上訴を待たずに是正を認めてやってよいから、厳格な要件のもとで自ら変更を認める。
(2) 判決の変更の要件
① 判決に法令違反があること
② 判決言渡後、1週間以内であること
③ 判決が確定していないこと
したがって、1週間以内であっても、あらかじめ不上訴の合意がある場合や、当事者双方が上訴権を放棄したときなど、判決が確定すれば変更できない。
④ 変更のために口頭弁論を新たに開く必要がないこと
口頭弁論が必要なら、上訴審でまとめて判断させた方がよいからである。
(3) 手続
当事者に判決変更の申立権はなく、常に職権で行う。
(4) 効果
判決の変更により、前の判決は撤回され、それに代って新判決が成立する。前判決は変更された限度で失効する。
■判決の更正
(1) 判決の更正の意義
判決の更正とは、裁判所が判決書の表現上の誤りを訂正することをいう。上訴によるまでもなく、簡易な判決書の訂正を認めたものである。
(2) 判決の更正の要件
判決に計算違いや書き損じ、その他これに類する表現上の誤りがあって、その誤りが明白であること(民訴法257条1項)。
(3) 手続
更正は申立て又は職権により、決定で行われる(民訴法257条1項)。これを更正決定という。
なお、決定・命令にはその性質に反しない限り判決に関する規定を準用する(民訴法122条)とされるので、判決についての更正決定の規定は決定にも準用される。つまり決定に対する更正決定も可能である。
(4) 更正の時期
更正決定はいつでもできる(民訴法257条1項)。上訴提起後でも、判定確定後でも可能である。
(5) 効果
更正決定があると、判決が言い渡された当初から更正されたとおりの判決がなされたことになる。
(6) 不服申立て
更正決定に対しては、即時抗告により不服を申し立てることができる(民訴257条2項)。
変更判決と更正決定の比較
|
変更判決 |
更正決定 |
期間 |
判決言渡後1w以内 |
いつでも可 |
判決確定後 |
不可 |
可 |
口頭弁論の開催 |
不可 |
任意 |
申立or職権 |
職権 |
申立or職権 |
形式 |
判決 |
決定 |
不服申立方法 |
上訴 |
即時抗告 |