- 民事訴訟法ー12.証明責任
- 3.立証責任分配の原則の修正
- 立証責任分配の原則の修正
- Sec.1
1立証責任分配の原則の修正
■立証責任分配の原則の修正
(1) 立証責任の転換
証明責任の転換とは、本来の分配原則に基づく証明責任の分配を、特別規定によって相手方に転換することをいう。
(2) 趣旨
責任の転換は、反対事実の証明責任を相手方に負担させるという形で一方当事者の負担を軽減し両当事者の公平をはかる証明責任配分についての法技術である。例えば、民法709条では被害者の側に相手方の過失の立証責任があるが、自動車事故の場合、自賠法3条により、加害者たる被告の側に注意を怠らなかったことの立証責任を負わせている。
(3) 法律上の推定
法律上の推定は、「法律上の事実推定」と「法律上の権利推定」に分類される。
① 法律上の事実推定
ある実体規定でAという法律効果の要件事実とされている乙事実につき、他の推定規定で「甲事実(前提事実)あるときは乙事実(推定事実)あるものと推定する」と定める場合である。
例えば、時効取得を主張する者は、民法162条1項の20年間の占有継続の証明ができなくても、前後両時において占有していたことさえ証明すれば、その間の占有継続を民法186条2項が推定する場合である。
② 法律上の権利推定
法律上の権利推定とは、甲事実が存在すれば乙という権利の存在が推定されると法規に規定されている場合をいう。この場合、権利の存在を主張する者は、甲事実の存在を証明すれば足りる。相手方が乙権利の不存在を立証しない限り、この権利の存在が認められる。
例えば、占有の事実から占有物の上に行使する権利を推定する民法188条がこの例である。
(4) 効果
法律上の推定によって相手方に推定事実の不存在・権利の不存在の立証責任が転換される。