- 民事訴訟法ー11.証拠方法
- 2.当事者尋問
- 当事者尋問
- Sec.1
1当事者尋問
■当事者尋問
(1) 当事者尋問の意義
当事者尋問とは、当事者本人が経験した事実を報告させ、それを証拠資料とする証拠調ベをいう。
裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる(民訴法207条1項)。
当事者本人が当事者尋問において陳述した事実は、訴訟資料ではなく、証拠資料である。
(2) 当事者尋問の対象
当事者本人、その法定代理人、法人の代表者、権利能力なき社団・財団の代表者、管理人である(民訴法211条)。これ以外の者に対する尋問は証人尋問による。
判例 |
(最S27.2.22) |
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代表取締役も、自ら会社を代表しない訴訟においては、証人となることができる。 |
(3) 証人尋問と当事者尋問の順序
証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする。ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる(民訴法207条2項)。
(4) 尋問に応じる義務
尋問を命ぜられた当事者は、出頭義務、供述義務を負うが、宣誓は任意である(民訴法207条1項)。cf 証人尋問の場合、特別の定めがある場合を除いて宣誓は義務であったことと比較!(民訴法201条1項参照)
① 不出頭等の効果
当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓もしくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる(民訴法208条)。
cf 証人尋問の場合
正当な理由なく出頭しないときは、これにより生じた訴訟費用の負担を命ぜられ、かつ、過料の制裁を受けたり、罰金又は拘留の刑事罰を受けたり、場合によっては勾引を受けることもある点と比較!(民訴法192条~194条参照)
② 当事者が虚偽の陳述をした場合
宣誓をした当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、10万円以下の過料に処する(民訴法209条1項)。この決定に対しては、即時抗告をすることができるし(同条2項)虚偽の陳述をした当事者が訴訟の係属中その陳述が虚偽であることを認めたときは、裁判所は、事情により、過料の決定を取り消すことができる(同条3項)。
cf 証人尋問の場合は刑法169条の偽証罪に問われる点と比較!
(5) 当事者尋問の手続
① 職権証拠調べ
当事者尋問は申立て又は職権により行う(民訴法207条1項)。弁論主義の例外に当たる。
cf 証拠調べは、当事者が申し出たものに限られ、証人尋問の申出は証人を指定してしなければならず、職権で開始されることもない!
② 当事者尋問の手続
(イ)証人尋問に関する規定の準用
当事者尋問の手続は、証人尋問の手続に関する規定が準用される(民訴法210条、民訴規127条)。
(ロ)準用される規定
証人尋問に関する以下の規定は民訴210条で当事者尋問にも準用される。
a) 受命裁判官・受託裁判官が裁判所外で尋問できる(民訴195条) b) その際の受命裁判官・受託裁判官の権限(民訴206条) c) 16歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解できない者に宣誓させられない(民訴201条2項) d) 尋問の順序(民訴202条)書類に基づく陳述の原則禁止(民訴203条) e) テレビ電話会議システム(民訴204条) |
よって受訴裁判所に出頭するために不相当な費用を要する者に対する受命裁判官による裁判所外での尋問はその者が証人である場合と同様に当事者本人である場合にも行うことができる。
証人尋問と当事者尋問の比較
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証人尋問 |
当事者尋問 |
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受命裁判官・受託裁判官による裁判所外での 尋問 |
○(195) |
○(210) |
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宣誓 |
必要的(201) |
裁量的(207Ⅰ) |
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書類に基づく陳述(*1) |
×(203) |
×(210) |
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テレビ会議システムによる尋問 |
○(204) |
○(210) |
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職権証拠調べ |
×(207) |
○ |
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虚偽の陳述に対する制裁 |
偽証罪(刑169) |
過料(209) |
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義務違反 |
不出頭 |
過料・罰金・拘留・勾引 |
尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる |
宣誓拒絶 |
過料・罰金・拘留 |
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陳述・証言拒絶 |
過料・罰金・拘留 |
(*1)裁判長の許可があればできる。