• 民事訴訟法ー11.証拠方法
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1証人尋問

堀川 寿和2022/02/03 09:30

証人の意義

 証人とは、裁判所の命令に基づき、自らが体験した過去の事実を供述する第三者をいう。その供述が証言であり、証人を証拠方法としてこれから証言を得るための証拠調べを証人尋問いう。

証人能力

 証人となりうる一般的な資格であり、自然人であれば何人も証人能力を有する。

証人適格

 特定の訴訟において証人として尋問されうる能力である。原告や被告は訴訟当事者であるため、証人適格を有しない。

 

判例

(最S36.3.6)

 

通常の共同訴訟の共同訴訟人の一方のみが控訴し他方は控訴せず第1審判決が確定している場合、他方は控訴審において証人になることができる。

 

証人義務

 

(1) 意義

 証人義務とは、証人となって尋問に応ずる義務をいう。裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができる(民訴法190条)ため、わが国の裁判権に属する者は原則として証人となる義務を負う。公法上の一般的義務である。

 

(2) 証人義務の内容

 わが国の裁判権に服する者はすべて出頭義務、宣誓義務、供述義務を負い、これらの公法上の義務を総称して証人義務という。正当な理由なくこれに反すると制裁が加えられ、勾引される。

出頭義務

 証人として呼出を受けながら、正当な理由なく出頭しないときは、これにより生じた訴訟費用の負担を命ぜられ、かつ、過料の制裁を受けたり(民訴法192条)、罰金又は拘留の刑事罰を受けたり(民訴法193条)、場合によっては勾引を受けることもある(民訴法194条)。

宣誓義務

(イ)原則

 証人には、宣誓をさせなければならない(民訴法201条1項)。なお、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処せられる(刑法169条)。

(ロ)例外

a) 宣誓無能力者

 16歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができない(民訴法201条2項)。

b) 民訴法196条の規定に該当する証人で証言拒絶の権利を行使しない者を尋問する場合

 宣誓させないことができる(民訴法201条3項)。

c) 宣誓を拒否できる者

 自己又は自己と民訴法196条各号に掲げる関係を有する者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは、宣誓を拒むことができる(民訴法201条4項)。

証言義務

 わが国の裁判権に属する者は原則として証言義務を負うが、次の場合には証言を拒否することができる。

a) 証人自身又は証人の親族等が刑事訴追や有罪判決を受けるおそれのある事項に関するとき(民訴法196条1項)

b) 証人の職務上の秘密に関する事項につき尋問を受ける場合(民訴法197条1項)

 医師、弁護士などが職務上知り得た事実や、技術・職業上の秘密に関する事項がこれにあたる。

 なお、黙秘義務が免除されたときは、拒否できない(民訴法197条2項)。

c) 一般の公務員、国務大臣、国会議員が職務上の秘密につき尋問する場合

 それぞれ監督官庁、内閣、院の承認を要する(民訴法191条1項)。公共の利益を害し又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合を除き、承認を拒むことはできない(同条2項)。

 この場合も、承認がなければ証言を拒絶できるが、黙秘義務が免除された場合は拒絶できない(民訴法197条)。

証言拒絶の方式と裁判

 証言を拒絶しようとする証人は、証言拒絶の理由を疎明しなければならない(民訴法198条)。

 受訴裁判所は、民訴法197条1項1号の場合(公務員につき承認がない場合)を除き、当事者双方を審尋して、証言拒絶の当否につき決定で裁判をする(民訴法199条1項)。この決定に対しては即時抗告が認められる(同条2項)。

 

(3) 不出頭、宣誓拒否、証言拒否についての制裁

 

制裁内容

民訴法の根拠条文

過料

罰金

勾引

出頭義務

192条~194

宣誓義務

×

201条5

供述義務

×

200

 

 

 

尋問手続

(1) 法廷における証人尋問

 証人尋問の申出を採用した裁判所は、期日を定めて証人に呼出状を送達して証人を呼び出し、人違いでないことを確認し、原則として事前に宣誓させて尋問に入る。尋問は、裁判長の指揮の下、まず証人を申し出た当事者が(主尋問)次に他の当事者が(反対尋問)、そして裁判長が順に行う(補充尋問)。これを交互尋問という(民訴法202条1項)。裁判所は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、尋問の順序を変更することができる(同条2項)。この変更について異議を述べたときは、裁判所は決定で、その異議について裁判をする(同条3項)。

 同一の期日に複数の証人を尋問する場合には、証人か他の証人の目を気にすることなく自由に証言できる環境を確保する趣旨から、尋問すべき証人のみを在廷させるのを原則とする(隔離尋問の原則)。

 しかし裁判長の許可かあれば、他の証人の尋問中に在廷することができる(民訴規120条)。

 

(2) 書類に基づく陳述の禁止

原則

 証人の陳述は、口頭によらなければならない(民訴法203条)。

例外

 ただし、裁判長の許可を受けたときは、書類に基づいて陳述することができる。

 

(3) 付添い

 証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認められる場合、裁判所は、その不安・緊張の緩和に適当な者を、尋問の間証人に付き添わせることができる(民訴法203条の2第1項)。

 

(4) 遮へい措置

 裁判長は、証人が当事者本人又はその法定代理人の面前において陳述するときは、圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、その当事者本人又は法定代理人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状況を認識できないようにするための遮へい措置をとることができる(民訴法203条の3第1項)。また、傍聴人と証人との間で、相互に相手の状態を確認することができないようにするための遮へい措置をとることができる(民訴法203条の3第2項)。

 

(5) テレビ会議システムによる尋問

 裁判所は、次に掲げる場合、テレビ会議システム(音声映像送受信)により証人を尋問することができる(民訴法204条)。

証人が遠隔の地に居住するとき

事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるとき

 

(6) 尋問に代わる書面の提出(書面尋問)

 裁判所は、相当と認める場合において、当事者に異議がないときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる(民訴法205条)。証人が遠隔の地に居住していたり、病気等の理由により出頭が困難である場合に、陳述すべき事項について記載した書面の提出について当事者に異議がないのであれば、当該陳述に高度の信用性が認められる等の相当と認める事情がある限り、これを証拠として排除する必要はないため、証人の尋問に代えて書面を提出させ、当該書面を証拠とすることができるものと規定した。 cf 当事者尋問にはこの規定は準用されていない!

 

(7) 受命裁判官等による裁判所外での証人尋問

 裁判所は、次に掲げる場合に限り、受命裁判官又は受託裁判官に裁判所外で証人尋問をさせることができる(民訴法195条)。証人尋問については、その他の証拠調べ一般よりもさらに直接主義、公開主義の要請が強いため、より厳格な要件をみたした場合についてのみ、裁判所外での受命裁判官又は受託裁判官による証人尋問を認めたものである。

証人が受訴裁判所に出頭義務がないか、正当の理由により出頭できないとき

証人が受訴裁判所に出頭するについて不相当な費用や時間を要するとき

現場において証人を尋問することが真実を発見するために必要であるとき

当事者に異議がないとき