• 民事訴訟法ー10.事実認定
  • 1.事実認定の必要性
  • 事実認定の必要性
  • Sec.1

1事実認定の必要性

堀川 寿和2022/02/03 09:10

事実認定の意義

 事実認定とは、裁判官による具体的事実を認識・確定する作業である。事実認定はその客観化のため証拠に基づかなければならない。

事実認定の必要性

 事実認定は、当事者間で争いがなければ証明を要しない(民訴法179条)が、争いがある事実の場合は、裁判所は事実の認定をしなければならず、それは証拠により行われる。

 

証拠の評価(自由心証主義)

(1) 自由心証主義の意義

 自由心証主義とは、裁判に必要な事実を認定するにあたって用いるべき証拠について、裁判官の自由な判断に委ねる主義をいう。いかなる証拠に基づいて、いかなる事実を認定すべきかにつき、あらかじめ法定しておき、裁判官がそれに従って事実を認定する法定証拠主義に対する。

 現行民事訴訟法は、自由心証主義を採用しており、「裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する」と定めている(民訴法247条)。

 

(2) 自由心証主義の内容

証拠方法の無制限

 事実認定のための証拠方法には限定がないのが原則である。民事訴訟では、人証、物証あらゆるものに証拠能力が認められる。

 

判例

(最S27.12.5)

 

伝聞証拠の採否も、自由な心証による判断に任せられる。

 

証明力の自由評価(証拠共通の原則)

 証拠はどちらの当事者が提出したものであるかにかかわらず、いずれの当事者の有利にも用いることができる。

 

 

判例

(最S28.5.14)

 

裁判所が、一方当事者の提出した証拠方法の取り調べで得た証拠資料を、相手方の援用の有無を問わず相手方当事者に有利な事実認定の基礎として用いることも可能である。

 

弁論の全趣旨の斟酌

 証拠調べの結果だけでなく弁論の全趣旨もしん酌して自由に事実認定をすることができる(民訴法247条)。弁論の全趣旨だけで事実認定をすることもできる。なお、弁論の全趣旨とは、当事者の陳述の内容・態度から受けた印象などの一切の状況をさす。