• 民事訴訟法ー6.審理と審理の諸原則
  • 5.訴訟指揮権
  • 訴訟指揮権
  • Sec.1

1訴訟指揮権

堀川 寿和2022/02/02 15:45

訴訟指揮権の意義

 訴訟手続の円滑・迅速な進行を図るために、裁判所に与えられた手続主宰権能を訴訟指揮権という。

職権進行主義の具体的現れである。

訴訟指揮権の対象

(1) 訴訟の進行に関するもの

① 期日の指定・変更(民訴法93条)

② 期間の短縮・伸長(民訴法96条1項)

③ 中断手続の続行命令(民訴法129条)

 

(2) 口頭弁論の整理に関するもの

① 弁論の指揮(民訴法148条1項)

② 弁論の終結・再開(民訴法153条)

③ 弁論の制限・分離・併合(民訴法152条1項)

④ 争点・証拠の整理手続の開始(民訴法164条)

 

(3) 弁論の促進に関するもの

① 時機に遅れた攻撃防御方法の却下(民訴法157条1項)

② 釈明に応じない攻撃防御方法の却下(民訴法157条2項)

 

(4) 訴訟関係を明瞭にするもの

① 釈明権(民訴法149条)

② 釈明処分(民訴法151条)

弁論の制限・分離・併合

 裁判所は、訴訟指揮権の一環として、弁論の制限、分離、併合を命じ、またその命令を取り消すことができる(民訴法152条1項)。弁論の制限・分離・併合は訴訟指揮権の一内容であるため、裁判所の職権によることになり、当事者に申立権はない。

 

(1) 弁論の制限

 数個の併合請求中の1つ又は独立した攻撃・防御方法の1つに限定して審理することをいう。

 例えば、A株式会社に対する公害訴訟で争点として①A株式会社の過失の有無と、②因果関係の存否が問題となっている場合、①と②を同時に審理すると混乱するので、争点②の因果関係の有無についての弁論の制限をし、争点①の過失の有無についてだけを集中審理するような場合である。

 

(2) 弁論の分離

 数個の請求について併合審理をやめて、それぞれ別個の手続に分離して審理することをいう。

その後は弁論・証拠調べも判決も別々に下される。

 例えば、賃貸人Aが家賃を滞納している賃借人BとCを共同被告として訴えたが、裁判所の判断でA・B間とA・C間を別個の手続で審理するような場合である。

 

(3) 弁論の併合

 別個に係属している数個の請求を同一手続に併合して審理することをいう。併合の結果、訴えの客観的併合又は共同訴訟となる。