- 民事訴訟法ー3.訴訟の客体
- 2.請求の個数
- 請求の個数
- Sec.1
1請求の個数
■請求の個数の意義
民事訴訟法は1個の手続で1個の請求を審判することを原則とするが、特別の規定がある場合には、1個の手続で数個の請求をすることを認める(民訴法38条、136条)。
請求の個数は、①原告②被告③訴訟物の3つを基準に決めることになる。
当事者の数 |
請求の個数 |
① 原告・被告が各1名 |
1個 |
② 原告・被告が各1名 |
2個 |
③ 原告が1名・被告が2名 |
2個 |
■請求の個数の決定基準(訴訟物理論)
例えば、AがBに自転車を奪われたため返還請求をする場合、所有権と占有権の2つの実体法上の根拠があるときは、2つの請求権が認められる。つまり、所有権に基づく返還請求のほか、占有権に基づく返還請求が考えられる。その際、訴訟物を1つと考えるか2つと考えるかについて、旧訴訟物理論と新訴訟物理論の2つの考え方がある。
(1) 旧訴訟物理論
旧訴訟物理論とは、実体法上の権利を訴訟物と捉える立場である。この立場は、実体法上の権利の主張=訴訟物と考えるから、同じ給付を求める訴えでも請求原因とされる請求権が異なれば、訴訟物も数個のものになるとする。つまり、1個の実体法上の請求権ごとに1個の訴訟物を認める説である。上記の事例でいうと、所有権と占有権の2つの訴訟物が認められることになる。
したがって、所有権に基づく返還請求が認められなかったとしても、理屈の上では後日別の訴訟で占有権に基づく返還請求の訴えを提起することが可能ということになる。
(2) 新訴訟物理論
新訴訟物理論とは、例えば給付請求訴訟においては、給付を求める地位を1個の訴訟物と考える。したがって、上記の事例に当てはめると、所有権と占有権の2つの請求権があっても、それは単に1個の訴訟物を基礎づける理由付けにすぎず、訴訟物は1つと考える。したがって、所有権に基づく返還請求が認められなかった場合、後日別訴で占有権を持ち出して争うことはできないことになる。
(3) 判例の立場
判例・実務は、従来から旧訴訟物理論の立場に立つ(最S35.4.12)。旧説に対しては、同一紛争の蒸し返しがなされる結果となるとする批判があるが、判例は後訴提起を信義則違反として許さないとする(最S51.9.30)ため問題ないと考える。