• 民事訴訟法ー2.訴訟の主体
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  • Sec.1

1裁判所

堀川 寿和2022/01/31 15:55

 民事訴訟は、原告の被告に対する請求(権利主張)に対して裁判所の判決を求める手続であるから、原告、被告、裁判所の3つの主体が存在しなければ訴訟は成立しない。このうちどの主体が欠けても訴訟は不成立になり、いったん成立した後もその一つが欠ければ訴訟は終了する。

 

裁判所の種類

(1) 種類

 最高裁判所の下に、下級裁判所として高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所の4種類がある。

 

(2) 審級関係

 簡易裁判所が一審裁判所の場合、地方裁判所が控訴審裁判所となり、高等裁判所が上告裁判所となる。一方、地方裁判所又は家庭裁判所が一審裁判所の場合、高等裁判所が控訴審裁判所となり、最高裁判所が上告裁判所となる。

 

裁判所の構成

(1) 合議制と単独制

 裁判機関としての裁判所は、一人の裁判官で構成される「単独制」と複数の裁判官で構成される「合議制」がある。

 

(2) 裁判所の構成員

① 裁判官

 裁判官は、最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官、判事、判事補、簡易裁判所判事に分けられる。

② 補助機関

 裁判所には補助機関として、裁判所書記官、執行官、裁判所調査官、家庭裁判所調査官その他の裁判所職員(事務官、技官など)が置かれる。

 

裁判所構成員の除斥・忌避・回避

 裁判官は、裁判の公正の確保のため、一定の場合その職務の執行から排除される。

 

(1) 裁判官の除斥・忌避・忌避

① 除斥

 裁判官が事件の当事者や事件と特殊な関係がある場合に、法律上当然その事件から排除されることをいう(民訴法23条)。この民訴法23条が列挙する「除斥原因」があるときは、裁判所は申立又は職権により除斥の裁判をする(同条2項)。

 

裁判官の除斥原因(民訴23条1項)

(イ)裁判官又はその配偶者もしくは配偶者であった者が事件の当事者であるとき、又は事件について当事者と共同権利者、共同義務者もしくは償還義務者の関係にあるとき

(ロ)裁判官が当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族もしくは同居の親族であるとき又はあったとき

(ハ)裁判官が当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき

(ニ)裁判官が事件について証人又は鑑定人となったとき

(ホ)裁判官が事件について当事者の代理人又は補佐人であるとき又はあったとき

(ヘ)裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき(ただしこの場合、他の裁判所の嘱託により受託裁判官として関与することは可能。)

 

② 忌避

 裁判の公正を疑わせる事情がある場合に、当事者の申立てにより、裁判によってその職務から排除されることをいう(民訴法24条1項)。当事者は、裁判官の面前において弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、忌避申立をすることができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、除く(同条2項)。

③ 回避

 裁判官自らが除斥、忌避の事由があると認めて職務執行を避けることをいう。回避には、司法行政上の監督権のある裁判所の許可が必要である(民事訴訟規則12条、以下、民訴規という。)。

 

(2) 除斥・忌避申立てによる手続停止

 除斥・忌避の申立てがあったときは、その申立てについての決定が確定するまで訴訟手続を停止しなければならない。

 

(3) その他の裁判所職員の除斥・忌避・回避

 裁判所書記官についても、除斥・忌避・回避の制度が準用される(民訴法27条、民訴規13条)。