• 商業登記法ー26.社員に関する登記
  • 3.社員の退社
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  • Sec.1

1社員の退社

堀川 寿和2022/01/31 14:03

社員の退社

(1) 退社事由

① 任意退社

 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、6か月前までに予告をすることにより事業年度の終了の時において退社をすることができる。(同条1項)また、各社員はやむを得ない事由がある時は、いつでも退社することができる。(同条3項)

② 法定退社

(イ)定款で定めた事由の発生(会社法607条1項1号)

(ロ)総社員の同意(会社法607条1項2号)

 総社員の同意があれば予告をなさず、またやむを得ない事由なくしてただちに退社することができる。

(ハ) 死亡(会社法607条1項3号)

 ただし、定款で、当該持分を相続人が承継する旨を定めていれば、相続人が持分を承継し社員となることができる。(会社法608条1項)

(ニ)合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。会社法607条1項4号)

(ホ)破産手続開始の決定(会社法607条1項5号)

(へ)解散(会社法607条1項6号)((ホ)による解散は除く)

(ト)後見開始の審判を受けたこと(会社法607条1項7号)

(チ)除名(会社法607条1項8号、859条)

 持分会社の社員について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象社員の除名を請求することができる。

a) 出資義務の不履行

b) 業務を執行する社員の競業の禁止義務違反

c) 業務を執行するに当たって、不正の行為をし、又は業務を執行する権利がないのに業務の執行に関与したこと

d) 持分会社を代表するに当たって、不正の行為をし、又は代表権がなぃのに持分会社を代表し て行為をしたこと

e) a)d) に掲げるもののほか、重要な義務を尽くさないこと

(リ) 持分の差押債権者による退社(会社法609条)

 社員の持分を差し押さえた債権者は、6か月前までに持分会社及び当該社員に予告をすることにより、事業年度の終了時において当該社員を退社させることができる。(会社法609条1項)

(ヌ)持分会社の継続に同意しなかった社員の退社(会社法642条2項)

(ル)設立無効又は取消しの原因が一部の社員のみにある場合において、他の社員全員の同意により持分会社を継続する場合の当該社員の退社(会社法845条)

* 上記の事由により社員が退社した場合は、持分会社は、当該社員が退社した時に、当該社員に係る定款の定めを廃止する定款の変更をしたものとみなされる。(会社法610条)

* (ハ)~(ト)については、定款で退社事由としない旨の定めを設けることができる。

 

(2) 退社に伴う持分の払戻し

① 意義

 退社した社員は、その出資の種類を問わず、当該社員の一般承継人が社員となった場合を除いて、その持分の払戻しを受けることができる。(会611条1項)この場合に、退社した社員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる。(会社法611条3項)

② 債権者保護手続(合同会社の場合のみ)

 合同会社が社員の退社時に行う持分の払戻しは、持分の払戻しをする日における剰余金額の範囲内でなされなければならない。(会社法635条1項)持分払戻額が剰余金額を超えない場合は債権者保護手続を要しないが、持分払戻額が剰余金額を超える場合は、債権者保護手続を要する。(同条2項)

③ 資本金の額の減少(合同会社の場合のみ)

 合同会社は、持分の払戻しをするときは、債権者保護手続をすることによって、その資本金の額を減少することができる。(会社法626条、627条)合同会社の資本金の額は登記事項とされているため、資本金の額が減少した場合には、その変更登記をしなければならない。(会社法914条5号)

 

(3) 登記申請手続

① 変更登記事項

 合名会社及び合資会社では「社員の氏名又は名称及び住所」が登記事項であるため、退社した社員についての退社の登記しなければならない。

 一方、合同会社では「業務を執行する社員の氏名又は名称」が登記事項であるため、退社する社員が業務執行社員の場合にのみ登記をすることになる。また合同会社が社員の退社に伴って資本金の額を減少した場合、資本金の額の変更登記も申請しなければならない。

② 添付書面

(イ)退社の事実を証する書面

 退社事由によって、次に掲げる書面を添付する。

退社事由

退社の事実を証する書面の内容

① 任意退社

退社予告書

(6か月前に予告し退社したことを証する書面)

② 定款で定めた事由の発生

1.定款

2.定款で定めた事由の発生を証する書面

③ 総社員の同意

1.総社員の同意書

2.退社届

④ 持分の差押え

1.持分差押命令書

2.退社させる旨の予告書

⑤ 死亡

戸籍謄抄本(又は死亡診断書)

⑥ 合併

(当該法人である社員を消滅会社とする場合)

法人の登記事項証明書

⑦ 破産手続開始決定

破産手続の開始決定書謄本

⑧ 解散

(上記⑥⑦に掲げる事由によるものを除く)

法人の登記事項証明書

⑨ 後見開始の審判を受けたこと

後見の登記事項証明書

⑩ 除名(*嘱託登記による)

 ―

⑪ 持分の譲渡

1.総社員の同意書

2.持分譲渡契約書

 

(ロ)合同会社において資本金の額を減少した場合にあっては、次に掲げる書面

a) 資本金の額の減少につき業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面

b) 債権者保護手続関係書面

c) 資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面

d) 代理人によって申請する場合、「委任状

③ 登録免許税

(イ)社員の退社について

 登録免許税は、申請1件につき金3万円(合名会社、合同会社及び資本金の額が金1億円以下の合同会社については金1万円)である。(登録免許税法別表一、二十四(一)カ)

(ロ)合同会社において、同時に資本金の額を減少した場合

(イ)にさらに3万円を加算した額である。(登録免許税法別表一、二十四(一)ツ)

 

合資会社の社員が退社した場合の登記 申請書 記載例 

登記の事由

  社員の退社

登記すべき事項

  平成何年何月何日有限責任社員D退社

登録免許税

   金3万円(1万円)

添付書類

   退社の事実を証する書面                 1通

   委任状                         1通

 

合同会社の業務執行社員が退社し、資本金の額を減少した場合の登記 申請書 記載例 

登記の事由

  業務執行社員の退社及び資本金の額の減少

登記すべき事項

  平成何年何月何日有限責任社員F退社

  同日変更

  資本金の額 金何万円 

登録免許税

   金万円(万円)

添付書類

   退社の事実を証する書面                 1通

   業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面   1通

   公告及び催告をしたことを証する書面           何通

   異議を述べた債権者はいない

   資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面  1通

   委任状                         1通