• 宅建業法ー3.取引士
  • 2.登録の要件と欠格事由
  • 登録の要件と欠格事由
  • Sec.1

1登録の要件と欠格事由

堀川 寿和2021/11/22 13:51

 宅地建物取引士になるためには、まず、合格した試験の実施者である都道府県知事に登録しなければならない。登録の要件については単純で、さほど重要度は高くないが、重要なのは欠格事由である。

登録の要件

 登録するための要件についての規定は以下のとおり。

宅建試験に合格した者で、
① 宅地もしくは建物の取引に関し2年以上の実務経験を有する者
②または国土交通大臣が実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者
は、試験を行った都道府県知事の登録を受けることができる。


Point 「国土交通大臣が実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者」とは、以下の者である。

(ア) 国土交通大臣の登録を受けた宅地又は建物の取引に関する実務についての講習(登録実務講習)を修了した者

(イ) 国、地方公共団体又はこれらの出資により設立された法人において宅地又は建物の取得又は処分の業務に従事した期間が通算して2年以上である者

(ウ) その他国土交通大臣が(ア)・(イ)の者と同等以上の能力を有すると認めた者


 (ア)が、「取引士登録のための実務講習(登録実務講習)」といわれるものである。

「講習」にはこの他にも種類があり、特に、「登録のための実務講習」と宅地建物取引士証交付前に行われる「法定講習」とを混同しないようにする必要がある。前者は「国土交通大臣の登録を受けた」講習であるのに対し、後者は「知事の指定する」講習である。

 また、2つ以上の都道府県で宅建試験に合格した者は、当該試験を行った都道府県のうち、いずれか一方の都道府県の登録を受けることができる。宅建試験には受験資格の制限がないため、既合格の者でも受験・合格ともに可能である。あまり考えにくい状況ではあるが、参考までに知っておこう。


欠格事由

 免許に「免許の基準」があるように、取引士にも「登録の基準」がある。

 免許の場合と同じく登録を拒否して不適格な取引士を排除しようというものである。したがって、多くの部分が免許欠格事由と重複する。「登録の基準」に独特なものを覚えることである。


(1) 登録の基準

 免許の基準と同じものは以下のとおり。

 【登録欠格事由(1)】

【欠格事由①】破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
【欠格事由②】不正手段による免許取得、業務停止処分事由に該当し情状が特に重い、又は業務停止処分に違反、のいずれかに該当し免許を取り消され、取消しの日から5年を経過していない者
【欠格事由③】②によって免許を取り消された者が法人である場合において、その取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示日前60日以内にその法人の役員だった者で、その取消の日から5年を経過していない者
【欠格事由④】上記②のいずれかの事由に該当するとして免許の取消処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日までの間に相当の理由なくして廃業の届出があった者で、その届出の日から5年を経過していない者
【欠格事由⑤】上記④の期間内に相当の理由なくして合併により消滅した法人、又は廃業等の届出があった法人の聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内に役員だった者で、その消滅又は届出の日から5年を経過していない者
【欠格事由⑥】禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
【欠格事由⑦】宅建業法違反、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反、又は傷害罪・傷害助勢罪・暴行罪・凶器準備集合罪・脅迫罪・背任罪もしくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
【欠格事由⑧】暴力団の構成員や構成員でなくなった日から5年を経過しないもの。

 以上、いずれもChapter. 2 宅建業者 「免許の基準」参照のこと。

 

次に、「登録の基準」にのみ適用されるものをみていこう。


(2) 「登録の基準」独特のもの

【欠格事由⑨】

⑨ 宅建業に係る営業に関して、成年者と同一の行為能力を有しない未成年者


 「免許の基準」では、「宅建業に係る営業に関して、成年者と同一の能力を有しない未成年者」については共通していたが、「その法定代理人が免許欠格事由のいずれかに該当している場合」として、法定代理人を免許審査の対象としていた。その違いには十分注意しておこう。


【欠格事由⑩】

⑩ 不正の手段により登録または取引士証の交付を受けたこと、事務禁止処分事由に該当し情状が特に重い、事務禁止処分違反等に該当することにより登録の消除処分を受け、その処分の日から5年を経過していない者。



【欠格事由⑪】

⑪ 上記⑩に掲げるいずれかの事由に該当するとして登録の消除処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をするかしないかを決定する日までの間に相当の理由なくして登録の消除の申請をした者で、当該登録が消除されてから5年を経過していない者。



【欠格事由⑫】

⑫ 取引士としてすべき事務の禁止処分を受け、その禁止の期間中に自ら申請して登録の消除を受け、まだその禁止期間が満了しない者。



【欠格事由⑬】

⑬ 心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの


 「国土交通省令で定める者」として、「精神の機能の障害により宅地建物取引士の事務を適正に行うに当たって必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない者」が定められている。


(3) 登録事項

 登録は、宅建試験を行ったところの都道府県知事が、次の事項を取引士資格登録簿に登載して行う。

【資格登録簿への登載事項】

氏名、生年月日
住所、本籍(外国人の場合は国籍)、性別
③ 試験の合格年月日及び合格証書番号
④ 2年以上の実務経験を有する場合は、申請時現在の当該実務の経験の期間・内容、従事していた宅建業者の商号・名称・免許証番号
⑤ 2年以上の実務経験を有する者と同等以上の能力を有すると認められた者である場合においては、当該認定の内容・年月日
⑥ 宅建業者の業務に従事する者にあっては、当該業者の商号または名称・免許証番号
⑦ 登録番号・登録年月日

ここでは、次に述べる「変更の登録」との関連で、変更の可能性のあるもの(①②⑥)が特に重要である。


Point 資格登録簿は業者名簿とは異なり、一般の閲覧に供されない。