• 宅建業法ー3.取引士
  • 1.取引士の業務内容等
  • 取引士の業務内容等
  • Sec.1

1取引士の業務内容等

堀川 寿和2021/11/22 13:43

 本章からは毎年2~3問出題される。宅地建物取引士制度は、免許制度とともに、宅建業者の資質の向上を図るものとして重要である。免許制度と類似する点が多いので、両者を区別し、かつ、両者の関係を理解する必要がある。「不動産会社(宅建業者)に勤務しているのが取引士」というイメージで、本章の内容を整理しよう。

 なお、取引士の事務、専任の取引士、取引士証等の知識については、不可欠の知識ではあるものの、難解な内容ではないので、過去問演習等を通じて着実に知識を身につけよう。


取引士の定義

 「宅地建物取引士」とは、宅地建物取引士試験に合格し、合格した試験を行った知事の登録を受け、取引士証の交付を受けた者をいう。

 つまり、宅建試験に合格しても、それは単なる合格者であり、「宅地建物取引士」ではない。知事のもとに登録したら「宅地建物取引士資格者」となり、その登録した知事から取引士証の交付を受けて、初めて「宅地建物取引士」となるのである。



取引士の業務

 取引士は、どのような仕事(事務)ができるかという問題である。この点、宅建業法が定める業務は、わずか3つしかない。

①重要事項の説明
②重要事項の説明書面への記名押印
③契約成立後に交付する書面(37条書面)への記名押印


 『重要事項の説明』とは、主に客に対して、その希望する物件がどのようなものかを説明する、いわば「商品説明」のことである。略称は『重説』である。

取引士は、一般の顧客を相手に物件の説明をし、質問があれば懇切丁寧に説明しなければならない。この説明が不十分だと、後で「債務不履行責任」や「契約不適合責任」といった民法上の責任を問われかねないのである。

 重説書面も、37条書面もその内容が正確であることを確認するために押印するのであるから、取引において大きな意味を持つ。


Point 上記の事務を行うためには、取引士でありさえすればよく、「専任の」取引士である必要はない。専任云々が問題となるのは、次項の、「事務所に備えるべき取引士」の話のみである。


専任の取引士の設置

(1) 設置すべき人数

① 宅建業者は、事務所においてはその従業者5人に1人以上の割合で、成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない。
② 宅建業者は、案内所等においては1人以上の、成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない。

※ 案内所等については、契約の申出を受ける場合や、そこで契約をする場合に限り、その従業者の人数にかかわらず、1人以上の専任の取引士を置かなければならない。


 取引士は、宅地建物の取引に関して一般消費者保護のため、取引に係る土地や建物の法的性質を説明する資格者である。したがって、事務所等(案内所等を含む)の規模によって、それ相当の人数が設置されていなければならない。


(2) 必要な人数を欠く場合

 上記の専任の取引士の数が、事務所開設時にそもそも足りなかったり、取引士の退職等の事情で、法定の人数に足りなくなったりすることがある。その場合にどうなるかの規定は以下のとおり。

①宅建業者は、専任の取引士の数が法定数に不足する場合には、その事務所等を開設してはならない。
②既存の事務所等において専任の取引士の数が法定数に不足するに至った場合には、2週間以内に法律に適合させるために必要な措置をとらなければならない。

※ 「法律に適合させるための措置」とは、取引士を増やすことのほか、従業者の数を減らす、事務所自体を廃止する等が考えられる。


Point1 『成年者』である取引士とは、

① 20歳以上の者

② 20歳未満でも、婚姻をしている者

をいう。


Point2 宅建業者本人(法人の場合は、その役員)が取引士であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、その者がその事務所等に置かれる成年者である専任の取引士とみなされるという規定がある(宅建業法31条の3第2項)ので、この場合も、未成年者でも『成年者』とみなされることになる。


Point3 『専任』とは、その事務所に『常勤』していることをいう。したがって、パートで週3日来るとか、アルバイトで午前中だけ来るといった場合は『専任』ではない。また、専任の取引士は、他の事務所の『常勤』の取引士を兼ねることはできない。