• 商業登記法ー23.通常の株式会社への移行
  • 1.実体手続
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1実体手続

堀川 寿和2022/01/31 13:23

 特例有限会社は、その商号中の有限会社の文字を外して、株式会社という文字を用いる定款の変更をすることによって、通常の株式会社へ移行することができる。(整備法45条1項)

 この定款の変更の効力は、本店の所在地においてその旨の登記をすることによって生じる。(同条2項)

 

実体手続

特例有限会社が通常の株式会社に移行するためには、定款変更及び登記の手続が必要である。

 

(1) 定款変更

 定款を変更して、その商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更をする。この定款変更をするには、株主総会の特別決議が必要である。(会社法466条)特例有限会社の特別決議の要件は、株式会社とは異なり、「総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の4分の3以上に当たる多数」をもって行う。(会整法14条3項)

 

(2) 登記

 特例有限会社が上記の定款変更をする株主総会の決議をしたときは、本店所在地においては2週間以内に、支店の所在地においては3週間以内に以下の登記を行わなければならない。(会整法46条)

① 特例有限会社については解散の登記

② 商号変更後の株式会社については設立の登記

 これらの登記の申請は、組織変更による解散及び設立の登記と同様に、同時に申請しなければならず、いずれかにつき却下事由があるときは、共に却下される。(会整法136条21項、23項)

 

(3) 商号変更時に在任中の取締役及び監査役の任期

 特例有限会社の取締役については、会社法の取締役の任期に関する規定の適用はなく(会整法18条)、定款に取締役の任期を定めるなどしていなければ、特例有限会社の取締役に任期はない。

 しかし、特例有限会社が商号の変更をし、通常の株式会社に移行した場合は取締役の任期に関する会社法332条の規定が適用されることになる。そのため、通常の株式会社に移行したことに伴い、取締役の任期が満了する場合がある。この点は、監査役についても同様である。

 例えば、選任後12年を経過している取締役は、通常の株式会社への移行の際に任期満了退任することになる。一方、選任後1年の取締役については、移行後さらに1年(定款に任期伸長規定があればそれにしたがって)任期が継続することになる。