- 商業登記法ー23.通常の株式会社への移行
- 2.登記申請手続
- 登記申請手続
- Sec.1
1登記申請手続
■登記申請手続ー1
(1) 登記期間
特例有限会社が定款の変更(株式会社への商号変更)をする株主総会の決議をしたときは、その本店の所在地においては2週間以内に、その支店の所在地においては3週間以内に、当該特例有限会社については解散の登記をし、商号の変更後の株式会社については設立の登記をしなければならない。(会整法46条)
(2) 同時申請
特例有限会社が商号の変更をした場合の特例有限会社についての登記の申請と商号の変更後の株式会社についての登記の申請とは、同時にしなければならない。(会整法136条21項)
登記官はいずれかにつき商登法24条各号のいずれかの却下事由があるときは、これらの申請を共に却下しなければならない。(会整136条23条)。
(3) 登記の事由
① 商号変更による設立登記
「年月日商号変更による設立」と記載する。年月日は、定款変更についての株主総会の決議の日を記載する。
② 商号変更による解散登記
「商号変更による解散」と記載する。
(4) 登記すべき事項
① 商号変更による設立登記
登記すべき事項は、株式会社の設立の登記と同一の事項のほか、会社成立の年月日、特例有限会社の商号並びに商号を変更した旨及びその年月日である。(会整法136条19項)
商号変更と同時に、資本金の額の増加その他の登記事項の変更が生じた場合において、移行による設立の登記の申請書に当該変更後の登記事項を記載したときは、組織変更による設立の登記と同様に、受理される。
なお、移行による設立の登記においては、登記官は職権ですべての取締役及び監査役につきその就任年月日を記録する。特例有限会社の取締役又は監査役が商号の変更の時に退任しない場合には、その就任年月日(会社成立時から在任する取締役又は監査役にあっては、会社成立の年月日)を移記し、取締役又は監査役が商号の変更の時に就任した場合には、商号の変更の年月日を記録しなければならない。
② 商号変更による解散登記
登記すべき事項は、「解散の旨並びにその事由及び年月日」であり、この登記をしたときは、その登記記録は閉鎖される。(商登法71条1項)
(5) 添付書面
① 商号変更による設立登記
a) 商号変更による移行を決議した「株主総会議事録」
b) 商号変更後の株式会社の「定款」
c) その他、移行により役員に変更が生じる場合には、選任・退任に関する書面及び就任承諾書、本人確認証明書又は印鑑証明書等が必要になる。なお、取締役会設置会社でない通常の株式会社への移行と同時に取締役が任期満了により退任してその取締役が新たに就任する場合、再任に当たるため本店所在地の設立登記の申請書に商登規61条4項の印鑑証明書の添付は省略できる。
d) 代理人によって申請する場合、「委任状」
② 商号変更による解散登記
委任状を含めて、いっさいの添付書面を要しない。
(6) 登録免許税
① 商号変更による設立登記
移行による設立の登記の登録免許税額は、組織変更による設立の登記と同様に,申請1件につき、本店の所在地においては資本金の額の1000分の1.5 (商号変更の直前における資本金の額を超える資本金の額に対応する部分については、1000分の7。計算額が金3万円に満たない時は金3万円)(登録免許税別表一.二十四.(一)ホ)支店の所在地においては金9000円である。(登録免許税別表一.二十四.(二)イ)
② 商号変更による解散登記
金3万円(別表一、二十四(一)レ)
商号変更による株式会社の設立登記 申請書 記載例
商号 株式会社ABC
本店 何県何市何町何丁目何番何号
登記の事由
平成何年何月何日商号変更による設立(*1)
登記すべき事項
商号 株式会社ABC
本店 何県何市何町何丁目何番何号
公告する方法 官報に掲載してする。
目的 1.○○○
2.△△△
3.×××
発行可能株式総数 何株
発行済株式の総数 何株
資本金の額 金何万円
株式の譲渡制限に関する規定
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。
取締役 A
取締役 B
何県何市何町何丁目何番何号
代表取締役 A
登記記録に関する事項
平成何年何月何日有限会社ABCを商号変更し、移行したことにより設立(*2)
課税価格
金何万円(*3)
登録免許税
金何万円
添付書類
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
定款 1通
委任状 1通
(*1)年月日は、定款変更についての株主総会の決議の日を記載する。
(*2)新設型であるため、本来であれば年月日の記載は要しないはずであるが、便宜上登記申請日を記載する扱いである。
(*3)商号変更直前の特例有限会社の資本金の額を超える部分がある場合には、「ただし、内金〇円は、商号変更の直前における資本金の額を超過する部分である。」と記載する。
完了後の登記記録
商号 |
株式会社ABC |
本店 |
何県何市何町何丁目何番何号 |
公告する方法 |
官報に掲載してする。 |
目的 |
1.○○○ 2.△△△ 3.××× |
発行可能株式総数 |
何株 |
発行済株式の総数 |
何株 |
資本金の額 |
金何万円 |
株式の譲渡制限に 関する規定 |
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。 |
役員に関する事項 |
取締役 A |
取締役 B |
|
何県何市何町何丁目何番何号 代表取締役 A |
|
登記記録に関する事項 |
平成何年何月何日有限会社ABCを商号変更し、移行したことにより設立 |
商号変更による特例有限会社の解散登記 申請書 記載例
商号 有限会社ABC
本店 何県何市何町何丁目何番何号
登記の事由
商号変更による解散
登記すべき事項
平成何年何月何日株式会社ABCに商号変更し、移行したことにより解散(*1)
登録免許税
金3万円
添付書類
なし
(*1)年月日は登記申請日を記載する。
完了後の登記記録
登記記録に関する 事項 |
平成何年何月何日株式会社ABCに商号変更し、移行したことにより解散 平成何年何月何日登記 平成何年何月何日閉鎖
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■登記申請手続ー2
(7) 移行による設立登記とあわせてできない登記
① 本店移転の登記
移行後の株式会社の登記記録には、特例有限会社の商号及び本店移転後の本店は登記されるが、本店移転前の特例有限会社の本店が登記されないため、本店移転後の本店で登記されてしまうと当該登記記録から商号変更前の特例有限会社の登記記録を検索できない(連続性が確認できない)ため、あわせてすることができない。つまり移行による株式会社の設立登記では登記記録に関する事項欄に「年月日〇〇有限会社を商号変更し、移行したことにより設立」とのみ記載、住所が記載されないので移行前の有限会社と移行後の株式会社の住所が相違すると登記簿の記載から移行前の有限会社の閉鎖登記簿も検索できなくなる結果となり不都合だからである。よって本店移転の登記は一括申請できない。
② ある登記所において初めてする支店設置・支店移転の登記
株式会社に移行する登記は、本支店所在地において特例有限会社についての解散の登記と、株式会社についての設立の登記を同時に申請しなければならない関係上、ある登記所において初めてする支店設置・支店移転の登記はあわせてすることはできない。新たに支店を設置する所在地を管轄する登記所に既存の支店の登記がない場合には、特例有限会社の解散の登記をすることができず、整備法の規定に沿うことができないため、当該登記を併せてすることはできない。
③ ある登記所において営業所が存しないこととなる支店廃止・移転の登記
この場合も、上記②の同時申請の要求があるが、この事例の場合、当該支店所在地において解散の登記は申請できても設立の登記が申請できない(特例有限会社の登記は閉鎖され、設立後の登記をすることはできない。)ため、同時申請に反することとなる。
例えば、東京に本店を有する特例有限会社が株式会社への移行と同時に唯一の支店を大阪から名古屋に移転する場合、大阪では株式会社の設立の登記をすることができないことになり、名古屋では特例有限会社の既存の登記がなく、特例有限会社の解散の登記ができず同時申請に反するからである。また本店所在地の東京以外の地に支店を設置する場合や支店を廃止する場合も同様である。なお、支店設置であっても本店所在地における設置であれば一括申請は可能である。