• 商業登記法ー22.特例有限会社
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1総論

堀川 寿和2022/01/31 13:15

総論

(1) 特例有限会社の意義

 有限会社法は、平成18年5月1日の会社法の施行に伴い、廃止された。(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律1条3号)会社法の施行日までに旧有限会社法の規定に基づいて設立された有限会社であって、会社法施行の際現に存するもの(以下、旧有限会社という)は、会社法施行後においては会社法の規定による株式会社として存続することになった。(整備法2条1項)

 この規定により存続する株式会社であって、その商号中に有限会社という文字を用いる株式会社を特例有限会社という。

 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下、整備法という)の規定により当然に旧有限会社は会社整備法2条1項の規定により特例有限会社となり、旧有限会社から特例有限会社に移行する際、旧有限会社の定款変更や登記申請手続は、原則として不要である。

 しかし、旧有限会社法に基づいて設立された会社に対して、株式会社に関する規定を全面的に適用すると、不都合が生じるため、特例有限会社に適用される条文についての経過措置及び会社法の規定の適用の除外等の規定が会社整備法に設けられている。

 

(2) 特例有限会社と通常の株式会社の違い

① 商号

 特例有限会社は、商号中に有限会社の文字を用いなければならず、株式会社の文字を用いてはならない。(整備法3条)

② 株式の譲渡制限に関する規定

 特例有限会社は、その全部の株式について株式の譲渡制限に関する規定が定められている。(整備法9条1項)つまり発行するすべての株式が譲渡制限株式である。この株式の譲渡制限に関する規定を廃止することはできない。(同条2項)したがって、特例有限会社は常に公開会社ではない会社ということになる。ただ、特例有限会社の株主がその株式を譲渡により取得する場合においては、譲渡が承認されたものとみなされる。(整備法9条1項 )つまり株主が他の株主から株式を取得する場合には、会社の承認が不要ということである。

③ 株主総会

(イ)招集手続

 株主総会の招集手続は、旧有限会社における社員総会と同様に、招集通知の方法の制限はなく、通知は会日の1週間前までに通知を発すればよく、定款をもってさらにこれを短縮することも可能である。また、原則として議題を通知する必要はなく、定時株主総会の招集通知にも計算書類等を添付する必要もない。

(ロ)特別決議要件

 特例有限会社の株主総会の特別決議は、総株主の半数以上であって、当該株主の議決権の4分の3以上に当たる多数をもって行う。(整備法14条3項)定款で要件をさらに厳しくすることも可能である。

cf 通常の株式会社では、株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数で行う点と比較!

(ハ)少数株主による招集

 少数株主による総会招集請求は、旧有限会社と同じく、総株主の議決権の10分の1以上を有する株主に認められている。

④ 特例有限会社の機関設計

 特例有限会社は、通常の株式会社と同様に株主総会と取締役を置かなければならないが、その他で置くことができる機関は、監査役のみである(整備法17条)

 取締役会、会計参与、監査役会、会計監査人、監査等委員会、指名委員会等は置くことができない。つまり特例有限会社は、常に取締役会設置会社以外の株式会社ということある。

 監査役を置く特例有限会社の定款には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものとみなされる。(整備法24条)ただ、この定めについては、株式の譲渡制限に関する規定と異なり、を廃止することは可能である。つまり、定款変更することによって、監査役に業務監査の権限を与えることは可能である。

 なお、清算株式会社の機関としても、任意に置くことができるのは監査役だけで、清算人会を置くことはできない。

⑤ 役員の任期

 特例有限会社では、役員の任期についての定めがない。(整備法18条)定款で任期を定めることは可能であるが、定款で何も定めていなければ、任期の満了によって退任することがない。

 また、任期についての定めがないので、休眠会社のみなし解散の制度も存在しない。(整備法32条)

⑥ 計算書類の公告

 特例有限会社は、定時株主総会後に貸借対照表などを公告する必要はない。(整備法28条)

⑦ 組織再編行為

 特例有限会社が存続することとなる吸収合併や、他の会社の権利義務の全部又は一部を承継する吸収分割ができない。(整備法37条)つまり吸収合併存続会社になること及び吸収分割承継会社になることはできないということである。

 また、株式交換や株式移転をすることもできない。(整備法38条)したがって、完全親会社となることはもちろん、完全子会社になることもできない。