- 商業登記法ー16.資本金の額の増加に関する登記
- 1.準備金の資本組入れ
- 準備金の資本組入れ
- Sec.1
1準備金の資本組入れ
■意義
株式会社は準備金の額を減少させて、その減少する準備金の全部又は一部を資本金とすることができる。(会社法448条1項2号)準備金の額については登記事項とされていないが、減少した準備金を資本金に組み入れると資本金の額は増加することになるため、その旨の変更登記をすることを要する。
■準備金の資本組入れの手続き
(1) 準備金の存在
① 減少額の制限
決議で定める効力発生日における準備金の額を超えて減少額を定めることはできない。(会社法448条2項)資本金の額の4分の1を超えて準備金の額を減少することもできる。
② 減少できる準備金の種類
準備金の額を減少して資本金の額を増加させる場合、減少させる準備金は資本準備金・利益準備金のいずれでもよい。(会計規25条1項1号)
(2) 決議機関
① 原則
準備金の額を減少するためには、原則として株主総会の普通決議が必要である。(会社法448条1項)
② 例外
次の場合には、取締役会設置会社では取締役会決議、取締役会を置かない株式会社では取締役の決定によることができる。(会社法448条3項)
a) 株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合であること
b) 効力発生日後の準備金の額が効力発生日前の準備金の額を下回らないこと
(3) 決議事項
次に掲げる事項を定めなければならない。(会社法448条1項)
① 減少する準備金の額
前述のとおり、減少する準備金の額は効力発生日の準備金の額を超えることはできない。
② 減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額
③ 準備金の額の減少の効力発生日
(4) 債権者保護手続
① 原則
株式会社が準備金を減少する場合、原則として、資本金の額を減少する場合と同様の債権者保護手続が必要になる。(会社法449条)具体的には、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者に対し各別に催告することを要する。ただ、官報と定款で定めた官報以外の方法による二重の公告をすることにより各別の催告を省略することは可能である。
(イ)当該準備金の額の減少の内容
(ロ)会社の計算書類に関する事項
(ハ)債権者が1か月を下らない一定の期間内に異議を述べることができる旨
② 例外
次に掲げる場合には、債権者保護手続は不要となる。
(イ)減少する資本準備金の額の全部を資本金に計上する場合(会社法449条1項カッコ書)
(ロ)定時株主総会において準備金の額のみの減少を決議した場合であって、減少する準備金の額が当該定時株主総会の日における欠損の額を超えないとき
(5) 効力発生日
決議により定めた効力発生日に効力は生じる。もっとも、債権者保護手続が終了していないときは、この限りでない。なお、効力発生日は、効力発生日前であればいつでも当該日を変更することができる。この変更は、業務執行の一環であるため、取締役会決議(取締役会を置かない会社においては、取締役の過半数)による。
■登記申請手続
(1) 登記の事由
「準備金の資本組入れ」と記載する。「準備金の額の減少による資本金の額の増加」とする記載例もある。
(2) 登記すべき事項
変更後の資本金の額及び変更年月日である。
(3) 添付書面
① 決議機関に応じて、「株主総会議事録及び株主リスト」「取締役会議事録」「取締役の過半数の一致を証する書面」
② 会社法448条3項に規定する場合には、「会社法448条3項に規定する場合に該当することを証する書面」
株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合で、効力発生日後の準備金の額が効力発生日前の準備金の額を下回らないことを証する書面である。株主総会の決議による場合には不要である。
③ 「減少に係る準備金が計上されていたことを証する書面」(商登法69条)
決議で定めた効力発生日において減少に係る準備金が計上されていることを証するためである。
一般的には、代表者の作成に係る証明書を添付するが、監査役作成の準備金が存在することを証する書面でもよいとされる。
④ 効力発生日を変更した場合は、これを証する「取締役会議事録」又は「取締役の過半数の一致を証する書面」
⑤ 代理人によって申請する場合、「委任状」
* 債権者保護手続を行う場合であっても、準備金の額は登記事項ではなく準備金の額の減少に係る債権者保護手続を行ったことを証する書面の添付は要しない。(H18. 3. 31民商782号)
* 準備金の額の減少による資本金の額の増加による変更登記の申請においては資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上したことを証する書面の添付を要しない。(H18.3.31民商782号)減少に係る準備金の額が計上されていたことを証する書面を添付するため、そこから確認することができるためである。
(4) 登録免許税
増加した資本金の額×1000分の7 (これにより計算した額が3万円に満たない場合には3万円)である。(ニ)
準備金の資本組入れの登記 申請書 記載例
登記の事由
準備金の資本組入れ(準備金の額の減少による資本金の額の増加)
登記すべき事項
平成何年何月何日変更
資本金の額 金 何万円
課税価格
増加した資本金の額
登録免許税
増加した資本金の額×1000分の7
(これにより計算した額が3万円に満たない場合には3万円) (ニ)
添付書類
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
減少に係る準備金の額が計上されていたことを証する書面 1通
委任状 1通
完了後の登記記録
資本金の額 |
金×××万円
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金○○○万円 |
平成年月日変更 |
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平成年月日登記 |