- 商業登記法ー13.募集株式の発行に関する登記
- 4.現物出資
- 現物出資
- Sec.1
1現物出資
■募集事項での定め
募集株式の発行を行う場合において、金銭以外の財産を出資の目的とすることができる。設立の場合とは異なり、定款に定める必要はなく、現物出資をする旨は募集事項の一つである。(会社法199条1項3号)
■現物出資者の給付義務
現物出資をする募集株式の引受人は、払込期日又は払込期間内に、それぞれの募集株式の払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければならない。(会社法208条2項)
なお、金銭出資の場合、添付書面として「払込みがあったことを証する書面」が要求されるが、現物出資の場合、「給付したことを証する書面」は、商業登記法上、添付を要求されていない。
■検査役の選任及び調査
(1) 原則
株式会社は、募集株式の発行等の際に、金銭以外の財産を出資の目的とすることを定めた場合、募集事項の決定後遅滞なく、現物出資財産の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。(会社法207 条1項)
裁判所により選任された検査役は、必要な調査を行い、裁判所に結果を報告する。(会社法207条4項)報告を受けた裁判所は、募集事項に定められた現物出資財産の価額が不当であると判断した場合は、これを変更する決定をしなければならない。(会社法207条7項)
この場合、それぞれ「検査役の調査報告書及びその附属書類」「検査役の報告に関する裁判の謄本」がそれぞれ添付書類となる。
(2) 例外(検査役の調査が不要となる場合)
① 少数株式による例外
募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を超えない場合(会社法207条9項1号)現物出資者が複数ある場合には、その合計数で判断される。
割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を越えないとは、全ての現物出資者に割り当てる株式の合計数で計算する。例えば発行済株式の総数が400株の会社において、現物出資者全員に割り当てる株式の数が40株を超えない場合である。
この場合、添付書類としては、特に要求されていない。
② 少額財産による例外
現物出資財産について定められた価額の総額が500万円を超えない場合(会社法207条9項2号)現物出資が複数ある場合には、その合計額で判断する。この場合も、添付書類としては、特に要求されていない。
③ 市場価格のある有価証券による特例
現物出資財産のうち、市場価格のある有価証券について定められた価額が当該有価証券の市場価格を超えない場合(会社法207条9項3号)である。この例外に該当する場合、「有価証券の市場価格を証する書面」が添付書類となる。
④ 価格の相当性につき証明のある現物出資
募集事項の決定で定められた現物出資財産の価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人の証明(現物出資財産が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合、検査役の調査は不要となる。(会社法207条9項4号) この例外に該当する場合、「弁護士等の証明書及びその附属書類」が添付書類となる。不動産が現物出資財産である場合には、不動産鑑定士の「鑑定評価を記載した書面」も添付書類となる。附属書類とは、目的財産が不動産である場合の「所在図」等がこれに該当する。また、「固定資産課税台帳に登録されている価額に関する証明書」も附属書類の一部となり得るが「鑑定評価を記載した書面」とすることはできない。
⑤ 金銭債権の特則
現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る。)であって、当該金銭債権について定められた募集事項の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合である。この例外に該当する場合、「金銭債権について記載された会計帳簿」が添付書類となる。
先例 |
(H18.3.31民商782号) |
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会計帳簿の記載から当該金銭債権の弁済期の到来の事実を確認することができない場合であっても、会社が期限の利益を放棄していないことが添付書面から明らかな場合を除き、受理される。 |