- 商業登記法ー11.支店に関する登記
- 1.支店の設置
- 支店の設置
- Sec.1
1支店の設置
■支店設置の手続
支店設置は、会社の業務執行行為の一環であるため、株主総会の承認は不要である。したがって、取締役会を置かない会社においては取締役の決定で、取締役会設置会社は、取締役会の決議により支店の設置場所や設置時期等について決定することになる。なお、支店の設置についての決定は、重要事項であるため各取締役に委任することはできない。
■登記申請手続
(1) 支店についての登記の申請
支店の設置した場合には、本店所在地のほか、支店所在地においてもそれぞれ登記をする必要がある。なお、支店所在地において、同一の管轄内にない支店の登記は不要である。例えば、東京に本店を、大阪に支店を置く会社が新たな名古屋に支店を設置した場合、東京と名古屋で支店設置の登記をすれば足りる。大阪では、名古屋の支店に関する登記はなされない。逆に、名古屋においても、大阪の支店に関する登記は不要である。
(2) 登記事項
① 本店所在地
登記すべき事項
a) 支店設置の旨及びその年月日
b) 新本店所在場所
② 設置した新支店所在地(本店所在地以外の管轄の場合)
(イ)登記すべき事項
a) 商号
b) 本店の所在場所
c) 支店の所在場所(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内にあるものに限る。)
d) 会社の成立年月日
e) 支店の設置の旨及びその年月日
(ロ)会社の成立年月日
(ハ)支店の設置の旨及びその年月日
③ 設置した新支店所在地(既存の支店所在地に支店を設置した場合)
登記すべき事項
a) 支店設置の旨及びその年月日
b) 新本店所在場所
(3) 登記の申請
まず、本店所在地において支店設置の登記をした後、本店所在地においてした登記を証する書面(登記事項証明書)を添付してする。
(4) 登記期間
支店設置の日から、それぞれ次の期間内に登記の申請をしなければならない。まず、本店所在地において支店設置の登記をした後で、支店所在地においてもその旨の登記をすることになる。
・本店所在地 → 2週間以内
・支店所在地 → 3週間以内
なお、ここでいう支店設置の日とは、支店設置についての決議をした日ではなく、現実に支店を開設した日であり、この日が起算日となる。(T10.8.30民甲3487号)
(5) 添付書面
支店設置についての決定を証する書面
① 取締役の決定書(又は、取締役会議事録)
② 代理人の申請による場合は、委任状
(6) 登録免許税
① 本店所在地
新設した支店の数1ヵ所につき、金6万円(ル)
② 支店所在地
新設した支店の数に関係なく、1件につき、9000円(イ)
支店設置の登記 申請書 記載例 (神戸に本店がある会社が名古屋に支店を設置した場合)
(本店所在地分)
商号 株式会社ABC商事
本店 神戸市中央区三宮一丁目2番3号
登記の事由
支店設置
登記すべき事項
平成年月日支店設置
支店 名古屋市中区栄五丁目6番7号
登録免許税
金6万円(ル)
添付書類
取締役の決定書(又は、取締役会議事録) 1通
委任状 1通
完了後の登記記録
支 店 |
1 名古屋市中区栄五丁目6番7号 |
平成何年何月何日設置 |
平成何年何月何日登記 |
支店設置の登記 申請書 記載例(初めて名古屋で支店を設ける場合)(名古屋の支店所在地分)
商号 株式会社ABC商事
本店 神戸市中央区三宮一丁目2番3号
支店 名古屋市中区栄五丁目6番7号
登記の事由
支店設置
登記すべき事項
商号 株式会社ABC商事
本店 神戸市中央区三宮一丁目2番3号
会社成立年月日 平成何年何月何日
支店 名古屋市中区栄五丁目6番7号
登記記録に関する事項
平成何年何月何日支店設置
登録免許税
金9000円(イ)
添付書類
登記事項証明書 1通
完了後の登記記録
商号 |
株式会社ABC商事 |
本店 |
神戸市中央区三宮一丁目2番3号 |
会社成立の年月日 |
平成何年何月何日 |
支店 |
1 名古屋市中区栄五丁目6番7号 |
登記記録に関する 事項 |
平成何年何月何日支店設置 平成何年何月何日登記 |
支店設置の登記 申請書 記載例 (名古屋の同一管轄で2つ目支店を設ける場合)
商号 株式会社ABC商事
本店 神戸市中央区三宮一丁目2番3号
支店 名古屋市中区三の丸四丁目5番6号
登記の事由
支店設置
登記すべき事項
平成何年何月何日支店設置
支店 名古屋市中区栄五丁目6番7号
登録免許税
金9000円(イ)
添付書類
登記事項証明書 1通
完了後の登記記録
商号 |
株式会社ABC商事 |
|
本店 |
神戸市中央区三宮一丁目2番3号 |
|
会社成立の年月日 |
平成何年何月何日 |
|
支店 |
1 名古屋市中区三の丸四丁目5番6号 |
|
2 名古屋市中区栄五丁目6番7号 |
平成何年何月何日設置 |
|
平成何年何月何日登記 |
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登記記録に関する 事項 |
設立 平成何年何月何日登記 |
■会社の設立と同時に支店を設置した場合
(1) 本店の管轄登記所内に支店を設けた場合
会社の設立と同時に支店を設置した場合、本店所在地での支店設置の登記は、会社の設立登記の一部として行われる。
商号 株式会社ABC商事
本店 神戸市中央区三宮一丁目2番3号
登記の事由
平成何年何月何日発起設立の手続き終了(*1)
登記すべき事項(一部記載省略)
商号 株式会社ABC商事
本店 神戸市中央区三宮一丁目2番3号
公告する方法 官報に掲載してする。
支店 神戸市中央区楠町二丁目3番4号
取締役 A
取締役 B
取締役 C
東京都世田谷区成城三丁目4番5号
代表取締役 A
監査役 D
取締役会設置会社に関する事項
取締役会設置会社
監査役設置会社に関する事項
監査役設置会社
登記記録に関する事項
設立
登録免許税
金15万円(*2)
添付書類
(記載省略)
(*1)この場合、登記の事由欄に別途「支店設置」と記載する必要はない。
(*2)設立登記の登録免許税とは別に、支店設置の登録免許税6万円(ル)は不要である。
(2) 本店の管轄登記所外に支店を設けた場合
① 本店所在地
会社の設立と同時に支店を設置した場合、本店所在地での支店設置の登記は、会社の設立登記の一部として行われる。
② 支店所在地
支店所在地においては、本店で会社の設立登記をした日から2週間以内に支店での登記事項を登記することになる。
(3) 登記期間
会社の設立に際して支店を設けた場合には、本店所在地において設立登記をした日から2週間以内に当該支店所在地において、支店所在地における登記をしなければならない。
(4) 登記事項
支店所在地における登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。(会社法930条2項)
① 商号 ② 本店所在場所 ③ 支店(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内にあるものに限る。)の所在場所 ④ その他 支店所在地において、会社法930条2項各号に掲げる登記をする場合には、次の事項(商登法48条2項) (イ)会社成立の年月日 (ロ)支店を設置した旨及びその年月日 |
(5) 支店所在地における設立登記の添付書類
① 原則
本店及び支店の所在地において登記すべき事項について、支店所在地においてする登記の申請書には、本店の所在地においてした登記を証する書面を添付しなければならない。この場合、その他の書面は必要ないため、登記申請の代理についての委任状も不要である。
② 例外
本店及び支店の所在地において登記すべき事項について支店所在地においてする登記の申請は、本店及び支店が法務大臣の指定する登記所の管轄区域内にある場合には、本店の所在地を管轄する登記所を経由してすることができる。(商登法49条1項)
本店で設立登記完了後に管轄外の支店所在地でする登記 申請書 記載例 (乙登記所管轄)
商号 株式会社ABC商事
本店 神戸市中央区三宮一丁目2番3号
支店 大阪市北区梅田二丁目3番4号
登記の事由
平成何年何月何日会社成立と同時に支店設置(*1)
登記すべき事項
商号 株式会社ABC商事
本店 神戸市中央区三宮一丁目2番3号
会社成立年月日 平成何年何月何日
支店 大阪市北区梅田二丁目3番4号
登記記録に関する事項
設立
登録免許税
金9000円(イ)
添付書面
登記事項証明書 1通
(*1)年月日は、会社成立年月日を記載する。
完了後の登記記録
商号 |
株式会社ABC商事 |
本店 |
神戸市中央区三宮一丁目2番3号 |
会社の成立年月日 |
平成何年何月何日 |
支店 |
大阪市北区梅田二丁目3番4号 |
登記記録に 関する事項 |
設立 平成何年何月何日登記 |
(6) 印鑑の提出
代表取締役の印鑑届は、本店所在地のみで足り、支店所在地においてはする必要がない。(商登法20条3項)