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1監査等委員会設置会社である旨の登記

堀川 寿和2022/01/28 11:34

監査等委員会設置会社の定めの設定ー1

(1) 監査等委員会設置会社の意義

 株式会社は、定款の定めにより、監査等委員会を置くことができる。(会社法326条2項)監査等委員会を置く株式会社を監査等委員会設置会社という。(会社法2条11号の2) 監査等委員会設置会社である旨は登記事項とされている。また、監査等委員である取締役及びそれ以外の取締役の氏名、取締役のうち社外取締役であるものについて社外取締役である旨も登記事項となる。さらに、監査等委員会設置会社の取締役の過半数が社外取締役である場合又は定款で取締役に委任できる旨を定めた場合においては、取締役会はその決議によって、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができ(会社法399条の13第6項)、その旨が登記事項となる。(会社法911条3項22号)募集株式の発行に係る募集事項の決定が委任された場合などである。

 

(2) 決議

 監査等委員会設置会社である旨は、登記事項であるとともに、定款の相対的記載事項である。(会社法326条2項)したがって、監査等委員会設置会社の定めを設定するには、株主総会の特別決議が必要である。

 

(3) 監査等委員会設置会社の定めの設定登記と同時に申請すべき登記

取締役会設置会社の登記

 取締役会設置会社である旨の登記がされていない場合には、取締役会設置会社の定めの設定の登記も同時に申請しなければならない。(会社法327条1項3号)

監査役(会)設置会社の定めの廃止の登記及び監査役の退任の登記

 監査役(会)設置会社である旨の登記がされている場合には、その廃止の登記及び監査役の退任の登記も同時に申請しなければならない。(会社法327条4項、336条4項2号)

監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めの廃止の登記

 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めの設定の登記がされている場合には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めの廃止の登記をあわせて申請しなければならない。(会社法327条4項)

会計監査人設置会社の定めの設定の登記及び会計監査人の就任の登記

 会計監査人設置会社である旨の登記がされていない場合には、会計監査人設置会社の定めの設定の登記及び会計監査人の就任の登記を同時に申請しなければならない。(会社法327条5項)

指名委員会等設置会社の定めの廃止の登記及び委員、執行役、代表執行役の退任の登記

 指名委員会等設置会社である旨の登記がされている場合には、その廃止の登記及び委員、執行役、代表執行役の退任の登記を同時に申請しなければならない。(会社法327条6項、332条7項1号)

特別取締役の議決の定めの廃止の登記及び特別取締役の退任の登記

 特別取締役の議決の定めの登記がされている場合には、その廃止の登記及び特別取締役の退任の登記を同時に申請しなければならない。(会社法373条1項)

 

(4) 登記手続

登記の事由

 監査等委員会設置会社の定めの設定」「取締役、代表取締役の変更」会計参与設置会社であった場合には、「会計参与の変更」と記載する。また、監査役(会)設置会社であった場合には、「監査役(会)設置会社の定めの廃止、監査役の変更登記」、会計監査人を設置していなかった場合には、「会計監査人設置会社の定めの設定、会計監査人の変更」登記もそれぞれ同時にしなければならない。

登記すべき事項

 次の事項が登記事項となる。

(イ)監査等委員会設置会社である旨

(ロ)代表取締役の氏名及び住所

(ハ)社外取締役である旨(既に社外取締役である旨の登記があるときは不要)

(ニ)従前の取締役、代表取締役、会計参与、監査役の退任した旨

(ホ)取締役(監査等委員である取締役及びそれ以外の取締役)及び会計参与の就任又は重任した旨

 監査等委員会設置会社の取締役の選任においては、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別してしなければならない。(会社法329条2項)

(ヘ)監査役(会)設置会社の定めの廃止した旨

(ト)監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある場合には当該定めを廃止した旨の登記

(チ)取締役会の決議によって重要な業務執行の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めた場合はその旨

添付書面

(イ)定款変更についての「株主総会議事録」

(ロ)株主リスト

 株主総会議事録や種類株主総会議事録の添付を要する際にあわせて添付する。

(ハ)取締役会議事録

(ニ)本人確認証明書

(ホ)就任承諾を証する書面

(ト)印鑑証明書

a) 就任承諾書の押印についての印鑑証明書

 代表取締役の就任登記として添付する被選定者の就任承諾を証する書面については、その者の印鑑証明書を添付しなければならない。(商登規61条2項3項)

b) 選定議事録の押印についての印鑑証明書

 代表取締役の就任による変更登記の申請書に添付する選定決議の議事録の押印について、署名義務者全員の印鑑証明書を添付しなければならない。(商登規61条6項3号)ただし、変更前の代表取締役が取締役として取締役会に出席し、従前の届出印を押印している場合は不要。

(チ)代理人によって申請する場合の「委任状」

登録免許税

 監査等委員会設置会社の定めの設定登記の分として3万円(ワ)

 役員変更登記分 金3万円(資本金の額が1億円以下の会社の場合は1万円)(カ)

 監査役設置会社の定めの廃止の登記分として3万円(ツ)

 

       監査等委員会設置会社の定めの設定登記 申請書 記載例

(監査役1名を置く監査役設置会社が定款を変更して監査等委員会設置会社とする場合)

(同時に会計監査人設置会社の定めを設ける場合)

登記の事由  取締役、監査等委員である取締役、代表取締役、監査役、会計監査人の変更

         監査役設置会社の定めの廃止

         監査等委員会設置会社の定めの設定

         会計監査人設置会社の定めの設定

         重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めの設定

登記すべき事項  平成何年何月何日次の者退任

         取締役 ○○

         取締役 ○○

         取締役 ○○

         監査役 ○○

         同日代表取締役○○資格喪失により退任

         同日次の者就任

         取締役 ○○

         取締役 ○○

         取締役(社外取締役) ○○

         何県何市何町何丁目何番何号

         代表取締役 ○○

         会計監査人 ○○監査法人

         監査等委員である取締役 ○○

         監査等委員である取締役(社外取締役) ○○

         監査等委員である取締役(社外取締役) ○○

         同日監査役設置会社の定め廃止

         同日監査等委員会設置会社の定め設定

         同日会計監査人設置会社の定め設定

         同日設定

         重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めがある

登録免許税  金9万円(資本金の額が1億円以下の会社の場合は、金7万円)

         (カ)(ワ)(ツ)

添付書類    株主総会議事録               1通

         株主リスト                 1通

         取締役会議事録               1通

         就任承諾を証する書面         

         各議事録の記載を援用する。

         本人確認証明書               ○通

         印鑑証明書                 ○通

         登記事項証明書(会社法人等番号)

         委任状                   1通

 

監査等委員会設置会社の定めの設定ー2

 

先例

(H27.2.6民商13号

 

従前の取締役が退任と同時に監査等委員である取締役に就任した場合の登記原因は「退任」及び「就任」であるが、従前の取締役が、退任と同時に監査等委員である取締役以外の取締役に就任した場合の登記原因は「重任」である。

 

完了後の登記記録(一部抜粋)

役員に関する事項

取締役 ○○

平成年月日就任

平成年月日登記

平成年月日退任

平成年月日登記

取締役 ○○

平成年月日就任

平成年月日登記

平成年月日退任

平成年月日登記

取締役 ○○

平成年月日就任

平成年月日登記

平成年月日退任

平成年月日登記

取締役 ○○

平成年月日就任

平成年月日登記

取締役 ○○

平成年月日就任

平成年月日登記

取締役 ○○

(社外取締役)

平成年月日就任

平成年月日登記

取締役・監査等委員 ○○

平成年月日就任

平成年月日登記

取締役・監査等委員 ○○

(社外取締役)

平成年月日就任

平成年月日登記

取締役・監査等委員 ○○

(社外取締役)

平成年月日就任

平成年月日登記

何県何市何丁目何番何号

代表取締役 ○○

 

平成年月日就任

平成年月日登記

平成年月日退任

平成年月日登記

何県何市何丁目何番何号

代表取締役 ○○

平成年月日就任

平成年月日登記

平成年月日退任

平成年月日登記

監査役 ○

平成年月日就任

平成年月日登記

平成年月日退任

平成年月日登記

会計監査人 ○○監査法人

平成年月日就任

平成年月日登記

取締役会設置会社に

関する事項

取締役会設置会社

               平成年月日設定  平成年月日登記

監査役設置会社に

関する事項

監査役設置会社

平成年月日設定  平成年月日登記

 

平成年月日廃止  平成年月日登記

監査等委員会設置会社に

関する事項

監査等委員会設置会社

平成年月日設定  平成年月日登記

重要な業務執行の決定の取締役への委任に関する事項

重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めがある

平成年月日設定  平成年月日登記

会計監査人設置会社に

関する事項

会計監査人設置会社

平成年月日設定  平成年月日登記

 

監査等委員会設置会社の定めの廃止

(1) 廃止の意義

 監査等委員会を置く旨の定款の定めを廃止した場合、監査等委員会設置会社の定めを廃止した旨の登記をしなければならない。また、定款変更の効力が生じた時点で既存の取締役、監査等委員である取締役、会計参与の任期が満了するため、その退任登記をしなければならない。

 

(2) 決議

 監査等委員会設置会社である旨は、登記事項であるとともに、定款の相対的記載事項である。(会社法326条2項)したがって、監査等委員会設置会社の定めを廃止するには、株主総会の特別決議が必要である。

 

(3) 監査等委員会設置会社の定めの廃止の登記と同時に申請すべき登記

従前の取締役及び会計参与が退任した旨

監査等委員会設置会社の定めの廃止により社外取締役の登記を抹消する旨(*1)

取締役、監査等委員である取締役及び会計参与が就任又は重任した旨、監査役が就任した旨

取締役会の決議によって重要な業務執行の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めている場合はその登記を抹消する旨

監査役設置会社の定めを設定した旨

(*1)当該会社が特別取締役による議決の定めの設定の登記をしたとき又は指名委員会等設置会社の定めの設定の登記をしたときは、社外取締役の登記の抹消を要しない。

 

(4) 登記手続

登記の事由

 監査等委員会設置会社の定めの廃止」「取締役、監査等委員である取締役、代表取締役の変更」と記載する。また、取締役会の決議によって重要な業務執行の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めている場合には、「重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めの廃止」、さらに定款変更後、監査役設置会社となる場合には、「監査役設置会社の定めの設定、監査役の変更登記」もそれぞれ同時にしなければならない。

登記すべき事項

 次の事項が登記事項となる。

(イ)監査等委員会設置会社の定めを廃止した旨

(ロ)従前の取締役及び会計参与が退任した旨

(ハ)監査等委員会設置会社の定めの廃止により社外取締役の登記を抹消する旨

 ただし、特別取締役による議決の定めの設定の登記をしたとき又は指名委員会等設置会社の定めの設定の登記をしたときは除く。

(ニ)取締役及び会計参与が就任又は重任した旨、監査役が就任した旨

(ホ)取締役会の決議によって重要な業務執行の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めた場合はその登記を抹消する旨

(ヘ)監査役設置会社の定めを設定した旨

添付書面

(イ)定款変更についての「株主総会議事録」

(ロ)株主リスト

 株主総会議事録や種類株主総会議事録の添付を要する際にあわせて添付する。

(ハ)取締役会議事録     

 新たに代表取締役を選定したことを証するために添付する。

(ニ)本人確認証明書

 新たに取締役等に選任された者について添付を要する。なお、再任された者については不要である。

(ホ)就任承諾を証する書面

(ト)印鑑証明書

a) 就任承諾書の押印についての印鑑証明書

 代表取締役の就任登記として添付する被選定者の就任承諾を証する書面については、その者の印鑑証明書を添付しなければならない。(商登規61条4項5項)

b) 選定議事録の押印についての印鑑証明書

 代表取締役の就任による変更登記の申請書に添付する選定決議の議事録の押印について、署名義務者全員の印鑑証明書を添付しなければならない。(商登規61条6項3号)ただし、変更前の代表執行役が取締役又は監査役として取締役会に出席し、従前の届出印を押印している場合には、添付を要しない。

(チ)代理人によって申請する場合の「委任状」

登録免許税

 監査等委員会設置会社の定めの廃止登記の分として3万円(ワ)

 役員変更登記分 金3万円(資本金の額が1億円以下の会社の場合は1万円)(カ)

 監査役設置会社の定めの設定登記分として3万円(ツ)

 

       監査等委員会設置会社の定めの廃止の登記 申請書 記載例

(監査等委員会設置会社とする旨を廃止し、監査役設置会社とする場合)

登記の事由  取締役、監査等委員である取締役、代表取締役、監査役の変更

         監査役設置会社の定めの設定

         監査等委員会設置会社の定めの廃止

         重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めの廃止

登記すべき事項  平成何年何月何日次の者退任

         監査等委員である取締役 ○○

         監査等委員である取締役(社外取締役) ○○

         監査等委員である取締役(社外取締役) ○○

         同日次の者重任

         取締役 ○○

         取締役 ○○

         取締役 ○○

         何県何市何町何丁目何番何号

         代表取締役 ○○

         同日次の者就任

         取締役 ○○

         監査役 ○○

         同日監査等委員会設置会社の定め廃止

         同日監査役設置会社の定め設定

         同日重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定め廃止

登録免許税  金9万円(資本金の額が1億円以下の会社の場合は、金7万円)

         (カ)(ワ)(ツ)

添付書類    株主総会議事録               1通

         株主リスト                 1通

         取締役会議事録               1通

         就任承諾を証する書面         

         各議事録の記載を援用する。

         本人確認証明書               ○通

         印鑑証明書                 ○通

         委任状                   1通

 

先例

(H27.2.6民商13号

 

従前の監査等委員である取締役が退任と同時に取締役に就任した場合の登記原因は「退任」及び「就任」であるが、従前の監査等委員である取締役以外の取締役が退任と同時に取締役に就任した場合の登記原因は「重任」である。