- 商業登記法ー8.機関に関する登記
- 2.取締役会設置会社設置会社についての登記
- 取締役会設置会社設置会社についての登記
- Sec.1
1取締役会設置会社設置会社についての登記
■取締役会設置会社の定めの設定
(1) 取締役会の設置義務
次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
① 公開会社
② 監査役会設置会社
③ 監査等委員会設置会社
④ 指名委員会等設置会社
上記以外の場合でも定款で定めることによって任意に取締役会を設置することができる。
(2) 決議
取締役会設置会社に関する事項は定款記載事項であるため、株主総会の特別決議をもって設置又は廃止の旨を定める。
(3) 登記手続
① 登記の事由
「取締役会設置会社の定めの設定」と記載する。
② 登記すべき事項
取締役会設置会社の定めを設定した旨及びその年月日である。
③ 添付書面
(イ) 定款変更についての「株主総会議事録」
(ロ) 株主リスト
株主総会議事録や種類株主総会議事録の添付を要する際にあわせて添付する。
(ハ)代理人によって申請する場合の「委任状」
④ 登録免許税
申請1件につき金3万円(ワ)
取締役会設定会社の定めの設定の登記 申請書 記載例 (*1)
登記の事由 取締役会設置会社の定めの設定
登記すべき事項 平成何年何月何日取締役会設置会社の定め設定
登録免許税 金3万円(ワ)
添付書類 株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
委任状 1通
(*1)本事例では取締役会設置会社の定めの設定の申請書記載例のみを掲げているが、取締役会設置会社になる以上、取締役は最低3名以上、監査役は1名以上置かなければならないため、取締役を3名以上置いていない会社は取締役の選任登記を、監査役を設置していない会社は監査役設置会社の定めの設定登記と監査役の選任登記を同時にしなければならない。
完了後の登記記録
取締役会設置会社 に関する事項 |
取締役会設置会社
平成年月日設定 平成年月日登記 |
(4) 取締役会設置会社の定めの設定の登記と同時に申請すべき登記
① 取締役の員数が3名に満たない場合、その就任の登記をあわせて申請しなければならない。
② 監査役設置会社の登記、監査役の就任登記又は会計参与設置会社の登記、会計参与の就任登記
監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社の定めの設定を同時に申請する場合を除き、監査役設置会社の登記がされていない場合には、監査役設置会社の定めの設定及び監査役の就任登記をあわせて申請しなければならない。
③ 代表取締役の変更登記
(イ)各自代表であった会社が取締役会設置会社になった場合
取締役会設置会社においては、代表取締役は取締役会で選定しなければならないため、従前の代表取締役のうち新たに代表取締役として選定されなかった者については、退任の登記をしなければならない。新たに選ばれた代表取締役については別段の登記は不要である。
取締役全員(甲・乙・丙)が各自代表の取締役会非設置会社が取締役会を設置し、取締役会でそのうち一部の者(甲)のみを代表取締役に選定した場合
登記の事由
取締役会設置会社の定めの設定
代表取締役の変更
登記すべき事項
平成何年何月何日 取締役会設置会社の定め設定
同日 代表取締役乙 代表取締役丙は退任(*1)
登録免許税
金6万円(*2)
添付書類
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
取締役会議事録 1通(*3)
就任承諾書 1通(*3)
委任状 1通
(*1)代表取締役に選定された甲については、地位に変更はないので重任登記は不要である
(*2)取締役会に関する登記の分として3万円(ワ)と役員変更分3万円(資本金の額が1億円以下の会社の場合は1万円)(カ)
(*3)代表取締役に選定された甲の重任登記は要しないから就任承諾書と選定を証する取締役会議事録は不要なはずであるが、乙と丙の退任を証する書面として添付する。なお就任そのものではないので甲の印鑑証明書の添付は不要である。
完了後の登記記録
役員に関する事項 |
取締役 甲 |
平成年月日就任 |
平成年月日登記 |
||
取締役 乙 |
平成年月日就任 |
|
平成年月日登記 |
||
取締役 丙 |
平成年月日就任 |
|
平成年月日登記 |
||
何県何市何町何丁目何番何号 代表取締役 甲 |
平成年月日就任 |
|
平成年月日登記 |
||
何県何市何町何丁目何番何号 代表取締役 乙 |
平成年月日就任 |
|
平成年月日登記 |
||
平成年月日退任 |
||
平成年月日登記 |
||
何県何市何町何丁目何番何号 代表取締役 丙 |
平成年月日就任 |
|
平成年月日登記 |
||
平成年月日退任 |
||
平成年月日登記 |
||
監査役 丁 |
平成年月日就任 |
|
平成年月日登記 |
||
取締役会設置会社に 関する事項 |
取締役会設置会社 平成年月日設定 平成年月日登記 |
(ロ)代表取締役を取締役の中から選定していた会社が取締役会設置会社となった場合
従前の代表取締役が取締役会により選定された場合には、当該代表取締役については別段の登記は不要だが、従前の代表取締役と異なる者を代表取締役に選定した場合には、新たに選定された者の就任の登記及び選定されなかった従前の代表取締役についての退任の登記をしなければならない。新たに選定された者については、選定を証する取締役会議事録、就任承諾書、これらの書面に関する印鑑証明書を添付しなければならない。(登研708号)
取締役(甲・乙・丙)のうち、甲を取締役に選定している取締役会非設置会社が取締役会を設置し、取締役会で乙のみを代表取締役に選定した場合
(取締役会議事録に甲が従前の届出印を押印しているものとする)
登記の事由
取締役会設置会社の定めの設定
代表取締役の変更
登記すべき事項
平成何年何月何日 取締役会設置会社の定め設定
同日 代表取締役甲退任
同日次の者就任
何県何市何町何丁目何番何号
代表取締役 乙
登録免許税
金6万円(金4万円) (ワ)(カ)
添付書類
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
取締役会議事録 1通
就任承諾書 1通
印鑑証明書 1通
委任状 1通
■取締役会設置会社の定めの廃止
(1) 取締役会の廃止の可否
前述のとおり、① 公開会社、② 監査役会設置会社、③ 監査等委員会設置会社、④ 指名委員会等設置会社は、取締役会の設置が義務付けられるため、これらについての変更登記を同時にしなければ、取締役会設置会社の定めを廃止することはできない。上記以外の場合は、定款で定めることによって任意に取締役会を廃止することができる。
(2) 決議
取締役会設置会社に関する事項は定款記載事項であるため、株主総会の特別決議をもって廃止の旨を定める。
(3) 登記手続
① 登記の事由
「取締役会設置会社の定めの廃止」と記載する。
② 登記すべき事項
取締役会設置会社の定めを廃止した旨及びその年月日である。
③ 添付書面
(イ)定款変更についての「株主総会議事録」
(ロ)「株主リスト」
株主総会議事録や種類株主総会議事録の添付を要する際にあわせて添付する。
(ハ)代理人によって申請する場合の「委任状」
④ 登録免許税
申請1件につき金3万円(ワ)
取締役会設定会社の定めの廃止の登記 申請書 記載例
登記の事由 取締役会設置会社の定めの廃止
登記すべき事項 平成何年何月何日取締役会設置会社の定め廃止
登録免許税 金3万円(ワ)
添付書類 株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
委任状 1通
完了後の登記記録
取締役会設置会社 に関する事項 |
取締役会設置会社
平成年月日設定 平成年月日登記 |
平成年月日廃止 平成年月日登記 |
(4) 取締役会設置会社の定めの廃止の登記と同時に申請すべき登記
① 株式の譲渡制限に関する規定の変更
定款で譲渡の承認機関を取締役会とし、その旨を登記している株式会社が取締役会設置会社の定めを廃止する場合、承認機関の定めを変更する必要がある。
取締役会設置会社の定めの廃止に伴う株式の譲渡制限に関する規定の変更
(譲渡承認機関を取締役会から株主総会に変更する場合)
登記の事由
株式の譲渡制限に関する規定の変更
登記すべき事項
平成何年何月何日変更
株式の譲渡制限に関する規定
当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を受けなければならない。
登録免許税
金3万円(ツ)
添付書類
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
委任状 1通
② 監査役会設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社の定めの廃止の登記
監査役会設置会社又は監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社である場合には、それぞれの場合に応じて監査役会設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社の定めの廃止の登記と同時でなければ、取締役会設置会社の定めの廃止の登記を申請することができない。詳しくは、後述する。
③ 特別取締役の議決の定めの廃止の登記
特別取締役による議決の定めの登記がある場合には、当該定めの廃止の登記を同時に申請しなければならない。なお、特別取締役による議決の定めの登記を登記官が職権で抹消する旨の規定は存在しない。
④ 代表取締役の変更登記
(イ)取締役会設置会社が取締役会設置の定めを廃止したとき(廃止の際に代表取締役を定めていない場合)
取締役会を置く旨の定款の定めを廃止した場合において、代表取締役を互選によって定める旨の定款の規定を設けず、代表取締役について何も定めなかった場合には、会社法349条1項ただし書の「他に代表取締役を定めた場合」に該当しないことになり、取締役全員が当然に代表取締役となる。
したがって代表取締役でなかった取締役全員については、「代表権付与」を原因とする代表取締役の登記を申請しなければならない。(会社法915条1項)なお、すでに代表取締役の登記をしてある者については、登記すべき事項に変更が生じないので、変更登記の必要はない。
取締役甲・乙・丙 代表取締役甲とする取締役会設置会社が取締役会を廃止し、各自代表(代表取締役を定めない)とする場合
登記の事由
取締役会設置会社の定めの廃止
代表取締役の変更
登記すべき事項
平成何年何月何日取締役会設置会社の定め廃止
同日次の者に代表権付与
何県何市何町何丁目何番何号
代表取締役 乙
何県何市何町何丁目何番何号
代表取締役 丙
登録免許税
金6万円(金4万円) (*1)
添付書類(*2)
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
委任状 1通
(*1)取締役会に関する登記の分として3万円(ワ)と役員変更分3万円(資本金の額が1億円以下の会社の場合は1万円)(カ)
(*2)添付書類として、代表取締役の就任承諾書及び印鑑証明書(商登規61条5項、6項1号)の添付は不要である。代表取締役の選定はなされていないし、また就任を承諾しているわけでもないため、就任承諾書に押印した印鑑証明書も、代表取締役の選定をした決議の議事録についての印鑑証明書の添付いずれも問題とならない。
完了後の登記記録
役員に関する事項 |
取締役 甲 |
平成年月日就任 |
平成年月日登記 |
||
取締役 乙 |
平成年月日就任 |
|
平成年月日登記 |
||
取締役 丙 |
平成年月日就任 |
|
平成年月日登記 |
||
何県何市何町何丁目何番何号 代表取締役 甲 |
平成年月日就任 |
|
平成年月日登記 |
||
何県何市何町何丁目何番何号 代表取締役 乙 |
平成年月日代表権付与 |
|
平成年月日登記 |
||
何県何市何町何丁目何番何号 代表取締役 丙 |
平成年月日代表権付与 |
|
平成年月日登記 |
||
監査役 丁 |
平成年月日就任 |
|
平成年月日登記 |
||
取締役会設置会社に 関する事項 |
取締役会設置会社 平成年月日設定 平成年月日登記 |
|
平成年月日廃止 平成年月日登記 |
(ロ)取締役会設置会社の定めの廃止と同時に、取締役による代表取締役の互選規定を定款に設け、取締役の互選によって再度甲を代表取締役に選定した場合
甲は、すでに代表取締役として登記されているため、特に登記の必要はない。重任登記も不要である。したがって、取締役会設置会社の定めの廃止の登記のみをすればよい。ただ、その際添付される株主総会議事録には、新たに定款を変更して取締役による代表取締役の互選規定を設けた旨の記載があることを要する。
(ハ)取締役会設置会社の定めの廃止と同時に、甲以外の乙を新たに代表取締役に選定した場合
取締役会設置会社の定めの廃止の登記とあわせて、甲の代表取締役の退任登記と、乙の代表取締役の就任登記が必要となる。