- 商業登記法ー5.定款変更に伴う変更登記
- 3.目的の変更
- 目的の変更
- Sec.1
1目的の変更
■実体手続
(1) 目的の変更の態様
① 目的の削除
ex A・B・C ⇒ A・B
② 目的の追加
ex A・B・C ⇒ A・B・C・D
③ 目的の変更
ex A・B・C ⇒ D・E・F
(2) 株主総会の決議
目的の変更も、定款変更になるため、株主総会特別決議を要する。
(3) 決議内容の問題
① 目的の適格性
(イ)会社は、公序良俗又は法令に違反する事業を目的とすることはできない。例えば、会社は債権の取立を目的とすることは、原則としてできない(昭35.11.26民甲2966号)。債権の取立業務は、弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)の規定に反するためである。一方、「集金代行業務」や「割賦債権買取業務」を目的とすることはできる。(昭35.11.26民甲2966号)
(ロ)一定の業務を行う者に一定の資格を要求されるものについては、会社目的とすることは許されない。
ex × 司法書士の業務(S27. 7. 21民甲1047号)
× 行政書士の業務(S39.1.24民甲167号)
× 弁理士の業務(S29. 3. 6民甲481号)
× 税理士の業務(S28.3.24民甲469号)
一方、事実行為を行うについて一定の資格が要求されるにすぎないものについては、会社の目的とすることができる。事実行為を行うについて一定の資格が要求されている場合は、当該事実行為を現実に行う者にその資格が要求されるにすぎず、その者以外の者がその行為を引き受けて、資格を有する者にその行為を行わせることまで禁止しているとは解しえないからである。
ex 〇 理髪•美容(S30. 2.18民甲354号)
〇 測量(S35.10. 4民四185号)
〇 不動産鑑定(S39.12. 28民四426号)
② 営利性
株式会社は、対外的事業活動を通じて上げた利益を構成員に分配するものであるため、会社の目的は営利性のあるものでなければならない。
先例 |
(S40.7.22民四242号) |
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「社会福祉への出費並びに永勤退職従業員の扶助」「会社及び業界利益のための出費並びに政治献金」を目的とすることは株式会社の本質に反し、許されない。 |
③ 具体性
会社の目的をどの程度具体的に定めるかは、会社が自ら判断すべき事項であり、目的の具体性は登記官による審査の対象とはならない。(H18.3.31民商782号)したがって、目的を商業や単に事業とすることも差し支えないとされている。
④ 明確性
会社の目的は、明確性を有するものであることを要する。意味の通じない目的を定款に記載しても、法的効力を有しないので、登記することもできない。
先例 |
(H14.10.7民商2364号) |
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「LPガス」「LAN工事」「NPO活動」などローマ字を含む表記方法が社会的に認知されている語句は、目的の明確性の要請に反しない限り、目的の登記に用いても差し支えない。 |
■登記申請手続
(1) 登記の事由
「目的の変更」と記載する。
(2) 登記すべき事項
変更後の目的及び変更年月日
(3) 添付書面
① 本店所在地における申請の場合
(イ)目的変更の決議した「株主総会議事録」
(ロ)株主の氏名又は名称、住所、持株数、持株比率等を記載した「株主リスト」
(ハ)代理人によって申請する場合の「委任状」
(ニ)その他
a) 総株主の議決権の過半数の出席なくして定款変更決議をしたときは、定足数を3分の1を限度に引き下げる旨定めのある「定款」
b) 目的の変更について官庁の許可を要する場合は「官庁の許可書」又は「その認証がある謄本」
② 支店所在地における申請
会社の目的は、支店での登記事項とされていないため、支店所在地においては変更登記の必要はない。
(4) 登録免許税
金3万円(登録免許税別表1、24、(1)ツ)
(5) 登記期間
定款変更の効力が生じた日、目的変更について官庁の許可又は認可を要するときは、その許可書又は認可書の到達した日から本店所在地において2週間以内である。
目的の変更登記 申請書 記載例 (A・B・C ⇒ A・B・C・D)
登記の事由 目的の変更
登記すべき事項 平成何年何月何日 目的変更
目的 1.不動産の売買、賃貸、仲介
2.レストランの経営
3.自動車の販売
4.前各号に附帯する一切の事業
登録免許税 金3万円(ツ)
添付書類 株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
委任状 1通
完了後の登記記録
目的 |
1.不動産の売買、賃貸、仲介 2.レストランの経営 3.前各号に附帯する一切の事業 1.不動産の売買、賃貸、仲介 2.レストランの経営 3.自動車の販売 4.前各号に附帯する一切の事業 平成何年何月何日変更 平成何年何月何日登記 |