• 商業登記法ー1.商業登記制度
  • 5.登記の効力
  • 登記の効力
  • Sec.1

1登記の効力

堀川 寿和2022/01/27 12:19

登記の一般的効力

(1) 公示力

① 消極的公示力(登記がない場合の効力)

 登記すべき事項は登記の後でなければその事項をもって善意の第三者に対抗することができない。これを登記の消極的公示力という。

② 積極的公示力(登記がある場合の効力)

 登記すべき事項について登記があった後は、悪意の第三者のみならず、善意の第三者に対してもその事実を主張することができる。これを登記の積極的公示力という。もっとも、登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、当該第三者に対抗することができない。この正当事由とは、旅行・病気等の主観的事情は含まれず、風水害・地震等の天災、伝染病等による隔離等の客観的事情に限られる。

 cf 不動産登記は原則として登記前は第三者の善意・悪意を問わず第三者に対抗できない。逆に登記後は対抗できる。

 

(2) 公信力(不実の登記の効力)

 故意又は過失によって不実の登記をした者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。この効力を登記の公信力という。これは、不実の登記をした者に故意•過失があるときに限り登記の外観を信頼した者は保護されるという趣旨であり、限定的に登記に公信力を認めたものである。例えば、会社がAを取締役として登記した以上、たとえAが取締役に選任された事実がなくても、Aと取引をした善意の第三者に対し会社は、Aが取締役でないという主張ができず、Aがした取引につき責任を負わなければならない。

 

登記の特殊の効力

(1) 形成力

 通常の登記は、登記によって効力が生ずるものではなく、登記された事項を第三者に主張するものにすぎない。しかし一定の場合に、登記が法律関係の成立要件とされている。この登記が法律関係を形成する効力のことを、登記の形成力という。例えば、会社が設立登記によって、成立するのは、登記の形成力によるものである。

 

(2) 対抗力

 商業登記においても、不動産登記と同じく、登記が第三者に対する対抗要件とされている場合がある。例えば、商号の譲渡については、商号譲渡の登記をしなければその取得を第三者に対抗できない。この場合の登記の効力を、対抗力という。また、商号の二重譲渡がなされた場合に、先に登記をした方が勝つことになるのも、登記の対抗力によるものである。

 

(3) 補完的効力

 登記をすることにより又は登記後一定期間が経過することにより、法律関係の瑕疵が治癒され、有効なものとなってそれを争えなくなる効力を登記の補完的効力いう。例えば、会社の設立登記がなされ、その後2年経過すると設立無効の訴えが提起できなくなるのは、登記の補完的効力による。

 

(4) 免責的効力

 登記をすることにより、又は登記後一定期間が経過することにより一定の者の責任を解除又は免責する効力をいう。例えば、持分会社の社員が退社してその登記をした後、2年内に会社の債権者が請求又は請求の予告をしないとその退社した社員は責任を免れるのは、退社の登記の免責的効力による。

 

(5) 推定力

 登記された事項について、その事実の存在を事実上推定させる効力を推定力という。例えば、合資会社の無限責任社員の持分譲渡の登記がなされると、一応は総社員の同意を得て適法に譲渡があったものと推定される。(大S12.12.21)ここでいう推定は、法律上の推定ではなく、事実上の推定である。したがって挙証責任は転換しないが登記に反する事実を主張する者がそれを立証しなければならない。