- 会社法ー6.商法
- 1.商法の意義
- 商法の意義
- Sec.1
1商法の意義
民法は一般市民間の利害関係を調整する法律であり、個人間で行われる売買(取引)は民法で規律される。それに対して、商取引として行われる売買(取引)は商法によって規律される。個人間の売買は通常その1回限りであるのに対して、商取引としての売買は大量に、また反復継続的に行われるという特徴がある。
このような特徴を持つ商取引を円滑に処理するために、民法とは異なるルールを商法として定め、これを民法に優先して適用し、商法に規定のない事柄については民法を補充的に適用することになっている。このような関係を、「商法は民法の特別法である」という。
学習の際には、通則としての民法の規定が商法においてどのように修正されているかに注意しながら進めていくのが効率的である。
■形式的意義の商法と実質的意義の商法
商法は、「形式的意義の商法」と「実質的意義の商法」に分けられる。
(1) 形式的意義の商法
「形式的意義の商法」とは、商法典のことである。つまり、「商法」という名称を持った法典のことである。
(2) 実質的意義の商法
「実質的意義の商法」とは、「企業に関する法」としての商法である。いいかえれば、企業の活動を規律している法のことである。
実質的意義の商法には、おもに、次のようなものがある。
① 商法(商法典)
商法(商法典)は、形式的意義の商法でもあり、実質的意義の商法でもある。しかし、企業の活動を規律しているのは、商法(商法典)だけではない。
② 商事特別法
商事特別法とは、「商法」(商法典)の規定をより具体化したり、その規定を補充・変更したりするために制定された法令である。商事特別法も、企業の活動を規律している。
商事特別法には、たとえば、次のようなものがある。
商法(商法典)の規定をより具体化するもの |
商法施行法、商業登記法など |
商法(商法典)の規定を補充・変更するもの |
会社法、手形法、小切手法、保険法など |
③ 商慣習法
商慣習法とは、法規範として承認されるに至った商慣習である。
④ 民法
民法も、企業の活動を規律している。
■実質的意義の商法の適用順序
(1) 商法と商事特別法との関係
商法と商事特別法の適用関係について、商法は、次のように規定する(商法1条1項)。
商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによる。 |
このように、商法と商事特別法とは、一般法と特別法の関係にある。したがって、商事特別法のほうが、商法に優先して適用される。
(2) 商法と商慣習法・民法との関係
商法は、商法と商慣習法・民法との適用関係について、次のように規定する(商法1条2項)。
商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる。 |
したがって、商法→商慣習法→民法の順で適用されることになる。
【実質的意義の商法の適用順序(まとめ)】
① 商事特別法 ↓ ①がない ② 商法 ↓ ②がない ③ 商慣習法 ↓ ③がない ④ 民法 |