• 会社法ー3.持分会社
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堀川 寿和2022/01/25 10:23

業務の執行

(1) 業務の執行機関

① 原則

 持分会社においては、各社員が業務を執行する(会社法5901項)。

 

② 例外

 定款で別段の定めをすることは可能である。したがって、定款で定めることによって、一部の社員のみを業務執行社員とすることもできる(会社法5901項)。

 

③ 社員の監視権

 業務を執行する社員を定款に定めた場合には、各社員は持分会社の業務を執行する権利を有しないときであっても、その業務および財産の状況の調査をすることができる(会社法5921項)。定款で別段の規定をすることも可能であるが、定款によっても、社員が事業年度の終了時または重要な事由があるときに上記の調査をすることを制限する旨の規定を設けることはできない(同条2項)。

 

(2) 業務執行の決定

① 原則

 社員が2人以上ある場合は、定款で別段の定めがあるときを除き、その過半数により決定する(会社法5902項)。

 

② 定款で業務執行社員を定めたとき

 定款で、業務を執行する社員を2人以上定めたときは、定款に別段の定めがあるときを除き、その業務を執行する社員の過半数により決定する(会社法5911項)。もっとも、業務執行社員を定款で定めた場合でも、支配人の選任および解任は、社員の過半数をもって決定する(同条2項)。ただし、この場合も、定款で別段の定めを設けることができる(同項ただし書)。

 

③ 決定した業務の執行

 決定された事項の具体的執行は、各社員(または定款で定めた業務を執行する社員各自)が単独で行うことができる。

 

④ 会社の常務

 会社の常務(日常の業務)は、各社員(または定款で定めた業務を執行する社員各自)が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員(または業務執行社員)が異議を述べたときは、この限りではないため、原則どおり、社員(または業務執行社員)の過半数の決議によらなければならない(会社法5903項)。

 

⑤ 業務を執行する社員の辞任および解任

(a) 辞任

 定款で定めた業務を執行する社員は、正当な事由がなければ辞任することができない(会社法5914項)。定款で別段の定めをすることは可能である(同条6項)。

(b) 解任

 定款で定めた業務を執行する社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができる(会社法5915項)。こちらも、定款で別段の定めをすることは可能である(同条6項)。

 

(3) 業務を執行する社員の義務と責任

① 善管注意義務

 持分会社の業務を執行する社員は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行う義務を負う(会社法5931項)。

 

② 法令・定款遵守義務、忠実義務

 業務を執行する社員は法令および定款を遵守し、持分会社のために忠実にその職務を行わなければならない(会社法5932項)。

 

 これら①②の義務に違反した場合においては、一般の債務不履行責任(民法415条)を負うほか、除名の訴えまたは業務執行権の消滅の訴えおよび代表権消滅の訴えの対象となる(会社法8595号•、8601号)。

 

③ 競業の禁止、利益相反取引の制限

 株式会社の取締役等と同様に、競業や利益相反取引が制限されている(会社法594条、595条)。

 

④ 任務を怠った場合の責任

 業務を執行する社員がその任務を怠ったときは、持分会社に対し、連帯してこれによって生じた損害を賠償する責任を負う(会社法596条)。

 

⑤ 業務を執行する有限責任社員の第三者に対する損害賠償責任

 業務を執行する有限責任社員がその職務を行うについて悪意または重過失があるときは、第三者に生じた損害を連帯して賠償する責任を負う(会社法597条)。

 

会社の代表

① 原則

 業務を執行する社員は、持分会社を代表する(会社法5991条)。また、業務を執行する社員が2人以上ある場合には、業務を執行する社員は、各自、持分会社を代表する(同条2項)。

 持分会社の社員は、原則として全員が業務執行権を持つため、次の②の場合を除き、同時に代表権を持つのが原則ということになる。

 

② 例外(定款または定款の規定による互選)

 持分会社は、定款または定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から持分会社を代表する社員を定めることができる(会社法5993項)。

 

③ 代表社員の権限

 持分会社を代表する社員の権限は、持分会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有し、これに制限を加えても善意の第三者に対抗することができない(会社法59945項)。

 

④ 代表社員の登記

 会社を代表しない社員がいる場合は、会社を代表する社員の氏名または名称を登記しなければならない。また、代表社員が法人である場合は、当該社員の職務を行うべき者の氏名および住所が登記事項となる。

 詳しくは、商業登記法にて!