- 会社法ー3.持分会社
- 5.社員の加入および退社
- 社員の加入および退社
- Sec.1
1社員の加入および退社
■加入
(1) 加入の意義
加入とは、持分会社の成立後に新たに社員資格を取得する場合をいう。持分会社の社員の持分の全部または一部が譲渡された場合においては、譲受人が新たな社員として加入することになるが、持分会社は、定款を変更して、新たに社員を加入させることもできる。
(2) 新たな社員の加入手続
持分会社は、新たな社員を加入させることができる(会社法604条1項)。加入は、加入しようとする者と会社との間の契約によって行われるが、社員の氏名または名称および住所は持分会社定款の絶対的記載事項であるため、社員の加入は定款変更に当たり、総社員の同意が必要となる(会社法637条)。
(3) 社員の加入の効力発生時期
① 合名会社および合資会社
合名会社および合資会社における社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をしたときにその効力を生じる(会社法604条2項)。
② 合同会社
合同会社における社員の加入については、定款変更と、その出資に係る払込みまたは給付の双方が完了したときにその効力が生じる(会社法604条3項)。合同会社は、設立前においても出資全額の払込みまたは給付の完了を要求するため、会社成立後においても同様の規定を置くことによって、会社債権者の保護を図る趣旨である。
(4) 加入した社員の責任
持分会社の成立後に加入した社員は、その加入前に生じた持分会社の債務についても、これを弁済する責任を負う(会社法605条)。
■退社
① 退社の意義
退社とは、会社の存続中に特定の社員が社員としての資格を喪失することをいう。
退社には、社員が自らの意思によりする任意退社(会社法606条)と、法定の原因により退社する法定退社(会社法607条)がある。持分会社において退社制度が設けられているのは、社員がその持分を譲渡するためには原則として当事者である社員以外の他の社員の承諾が必要とされるため、それにより投下資本を回収することは事実上難しく、退社に伴う会社からの持分の払戻し(会社法611条)という投下資本の回収の手段を講じておく必要性があるためである。
② 退社事由
持分会社の社員は、次の事由により退社する(会社法606条、607条)。なお、6.~8.については、定款で別段の定めを設けることができる(会社法607条2項、608条1項)。
上記の事由により社員が退社した場合は、持分会社は、当該社員が退社した時に、当該社員に係る定款の定めを廃止する定款の変更をしたものとみなされる(会社法610条)。
なお、上記1.~3.、6.~10.の規定は、清算持分会社には適用されない(会社法674条2号、675条)。
③ 持分の払戻し
社員は退社によって持分会社の社員たる地位を失うが、会社から持分の払戻しを受けることができる(会社法611条1項)。持分の払戻しは、出資の種類にかかわらず、金銭によりすることができる(同条3項)。
④ 退社した社員の責任
退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う(会社法612条1項)。
この責任は、当該登記後2年以内に請求または請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後2年を経過した時に消滅する(同条2項)。
また、持分会社がその商号中に退社した社員の氏もしくは氏名または名称を用いているときは、当該退社した社員は、当該持分会社に対し、その氏もしくは氏名または名称の使用をやめることを請求することができる(会社法613条)。
■相続・合併による持分の承継
① 社員の死亡・合併の場合の特則
持分会社は、その社員が死亡した場合または合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人(以下、一般承継人という。)が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる(会社法608条1項)。
社員が死亡した場合や合併により消滅した場合に相続人その他の一般承継人が当該持分を承継する旨の定款規定がなければ、退社原因となる。株式会社の株主たる地位は相続・合併により当然に承継されることと比較。
② みなし定款変更
死亡や合併による持分の承継の定款の定めがある場合には、持分会社は、当該一般承継人等が持分を承継した時に、当該一般承継人に係る定款の変更をしたものとみなされる(会社法608条3項)。
③ 清算会社の特則
清算中の持分会社では、定款で上記①の規定を定めていなかったとしても、一般承継人は、当該社員の持分を承継する(会社法675条)。