- 会社法ー3.持分会社
- 3.社員
- 社員
- Sec.1
1社員
■社員の責任
(1) 社員の責任
社員は次に掲げる場合、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う(会社法580条1項)。
1. 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合 2. 当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く。) |
有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う(会社法580条2項)。括弧書により、「既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く」ので、有限責任社員は、出資の履行を完了していれば、会社債権者に直接会社の債務を弁済する責任は負わない。
① 合名会社
合名会社の社員は、直接無限責任を負うため、定款で定めた出資の価額にかかわりなく、債権者に対して直接の責任を負う。つまり、持分会社の債権者は、無限責任社員に対して直接弁済を求めることができるのである。
② 合資会社
合資会社の無限責任社員も合名会社の社員と同様の責任を負うが、有限責任社員は、会社債権者に対して直接責任を負うが、定款で定めた出資の価額の範囲に限定される。さらに、既に履行した部分については、重ねて責任を負わない。たとえば、定款で定めた出資の価額が100万円の有限責任社員が、既に50万円を履行しているのであれば、残り50万円を弁済する責任を負うのみである。
したがって、合資会社では、債権者保護のため、有限責任社員の出資の価額のほか、既に履行した出資の価額が登記事項とされている。
③ 合同会社
合同会社の社員は、会社成立前に定款で定めた出資全額を履行しているため、会社成立後に会社債権者に対して直接責任を負うことはない(間接責任)。
(2) 社員の責任の変更
① 有限責任社員が無限責任社員となった場合
有限責任社員が無限責任社員となった場合には、当該無限責任社員となった者は、その者が無限責任社員となる前に生じた持分会社の債務についても、無限責任社員としてこれを弁済する責任を負う(会社法583条1項)。
② 無限責任社員が有限責任社員となった場合
無限責任社員が有限責任社員となった場合であっても、当該有限責任社員となった者は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務については、無限責任社員として当該債務を弁済する責任を負う(会社法583条3項)。ただ、この責任は、変更の登記後2年以内に請求または請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後2年を経過した時に消滅する(同条4項)。
③ 合資会社の有限責任社員が出資の価額を減少した場合
有限責任社員(合同会社の社員を除<。)が出資の価額を減少した場合、当該有限責任社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務については、従前の責任の範囲内で責任を負う(会社法583条2項)。ただ、この責任も、登記後2年以内に請求または請求の予告をしない債権者に対しては、当該登記後2年を経過したときに消滅する(同条4項)。
■持分の譲渡
(1) 持分の譲渡の意義
持分会社の社員たる地位、すなわち、持分会社の持分は譲渡の対象となる。
(2) 持分の譲渡の要件
① 原則(他の社員の全員の承諾)
社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部または一部を他人に譲渡することができない(会社法585条1項)。 *定款で別段の定め可(同条4項)
② 例外(業務を執行する社員全員の承諾)
①にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員全員の承諾があるときは、その持分の全部叉は一部を他人に譲渡することができる(会社法585条2項)。また、これによって定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる(同条3項)。後述するが、持分会社の定款を変更するためには、本来総社員の同意を要するが、その例外である。 *定款で別段の定め可(同条4項)
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合名会社 |
合資会社 |
合同会社 |
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無限責任社員の持分譲渡 |
他の社員全員の 承諾 |
他の社員全員の 承諾 |
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有限責任社員の 持分譲渡 |
業務を 執行する社員 |
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他の社員全員の 承諾 |
他の社員全員の 承諾 |
業務を 執行しない社員 |
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業務執行社員全員の承諾 |
業務執行社員全員の承諾 |
(3) 持分の全部を譲渡した社員の責任
持分会社の社員がその有する持分のすべてを譲渡した場合には、社員としての資格を喪失し、会社を退社することになるが、その旨の登記をする前に生じた会社の債務については、従前の責任の範囲内において弁済責任を負う(会社法586条1項)。ただ、この責任は、その登記後2年以内に請求または請求の予告をしない債権者に対しては、当該登記後2年を経過した時に消滅する(同条2項)。
一方、持分会社の社員がその有する持分の一部を譲渡したにとどまる場合には、引き続き社員としての資格を有するため、従前と同様の責任を負う。
(4) 自己持分の取得の禁止
持分会社はその持分の全部または一部を譲り受けることができない(会社法587条1項)。
持分会社が当該持分会社の持分を取得した場合には、当該持分は、当該持分会社がこれを取得した時に消滅する(同条2項)。