- 会社法ー3.持分会社
- 2.設立
- 設立
- Sec.1
1設立
■設立手続
(1) 定款作成
① 記名・押印等
持分会社を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名または記名押印しなければならない(会社法575条1項)。定款を電磁的記録を持って作成することも可能であり、この場合は、法務省令(会施規225条)で定める署名または記名押印に代わる措置をとらなければならない。
② 定款認証の要否
株式会社の場合と異なり、公証人の認証を受ける必要はない。
公証人による定款の認証の要否
株式会社 |
合名会社 |
合資会社 |
合同会社 |
○ |
× |
× |
× |
③ 定款の記載(記録)事項
(a) 絶対的記載(記録)事項(会社法576条1項)
1. 目的 2. 商号 商号中には、その種類に従い合名会社、合資会社または合同会社という文字を用いなければならない(会社法6条2項)。 3. 本店の所在地 4. 社員の氏名または名称および住所 法人も持分会社の社員となることができる。 5. 社員が無限責任社員または有限責任社員のいずれであるかの別 6. 社員の出資の目的およびその価格または評価の標準 なお、有限責任社員にあっては金銭その他財産に限られ、信用や労務を出資の目的とすることはできない。 |
(b) 相対的記載(記録)事項(会社法577条)
定款に絶対的に記載または記録することを要しないが、法律上の効力を生じさせるためには、定款への記載または記録を要する事項である。一例を挙げると、以下のようなものがある。
1. 業務執行社員の指定 2. 社員の退社事由 3. 存続期間 4. 解散事由 |
(c) 任意的記載(記録)事項
その他、持分会社は、会社法の規定に違反しない事項を記載しまたは記録することができる(会社法577条)。
(2) 出資の履行(合同会社のみ)
設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、当該合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない(会社法578条本文)。ただし、合同会社の社員になろうとする者全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定または移転を第三者に対抗するために必要な行為は、合同会社の成立後にすることを妨げない(同条ただし書)。
(3) 設立登記
持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(会社法579条)。
① 持分会社に共通する登記事項(会社法912条〜914条)
すべての持分会社に共通の登記事項は以下のとおりである。
1. 目的 2. 商号 3. 本店および支店の所在場所 4. 会社の存続期間または解散の事由についての定款の定めがある場合は、その定め 5. 会社を代表する社員が法人である場合は、当該社員の職務を行うべき者の氏名および住所 6. 会社法939条1項の規定による公告方法についての定款の定めがある場合は、その定め 7. 公告方法についての定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものである場合は、次に掲げる事項 (イ)電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令(会施規220条)で定めるもの (ロ)会社法939条3項後段の規定による定款の定めがある場合は、その定め 8. 公告方法についての定款の定めがない場合は、会社法939条4項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨 |
② 各持分会社特有の登記事項
(a) 合名会社
(イ)社員の氏名または名称および住所
(ロ)会社を代表する社員の氏名または名称(会社を代表しない社員がある場合に限る。)
(b) 合資会社
(イ)社員の氏名または名称および住所
(ロ)社員が有限責任社員または無限責任社員のいずれかであるかの別
(ハ)有限責任社員の出資の目的およびその価額ならびに既に履行した出資の価額
(二)会社を代表する社員の氏名または名称(会社を代表しない社員がある場合に限る。)
(c) 合同会社
(イ)資本金の額
(ロ)業務を執行する社員の氏名または名称
(ハ)会社を代表する社員の氏名または名称および住所
■設立無効 取消し
(1) 設立の無効
① 設立無効の訴えの提起
持分会社の設立の無効は、持分会社の成立の日から2年以内に、訴えによってのみ主張することができ、この訴えを提起することができるのは社員または清算人のみである(会社法828条1項1号、2項1号)。被告となるのは、設立した持分会社である(会社法834条1号)。
② 設立無効原因
社員の個性が重視される持分会社では、株式会社と異なり、客観的無効原因のみならず、主観的無効原因も設立無効の原因となる。
(a) 客観的無効原因
・定款の絶対的記載事項の記載を欠く場合や内容が無効な場合
・設立登記が無効である場合
(b) 主観的無効原因
・個々の社員の設立行為に無効原因がある場合(ex. 意思無能力等)
(c) 設立無効の効果
(イ)対世効
原告の請求を認容する設立無効の訴えの確定判決は、第三者に対してもその効力を有する(会社法838条)。
(ロ)遡及効の否定(将来効のみ)
原告の請求を認容する設立無効の訴えの判決が確定しても、最初に遡って設立が無効になるわけではなく、判決確定のときから将来に向かって設立無効の効力が生じ、解散の場合に準じて清算手続によって処理していくことになる。また、無効の原因が一部の社員についてのみ存するときは、他の社員の全員の同意によって会社を継続することができ、この場合、無効の原因がある社員は退社したものとみなされる(会社法845条)。
(2) 設立の取消し
持分会社においては、社員の個性が重視されるため、株式会社と異なり、設立取消しの訴えが認められている(会社法832条)。設立取消原因は、次の場合である。
1. 社員が民法その他の規定により設立に係る意思表示を取り消すことができる場合(1号) 2. 社員がその債権者を害することを知って持分会社を設立した場合である(2号)。 |
① 設立取消しの訴えの提起
次に掲げる場合に次の者は、持分会社の成立の日から2年以内に、訴えをもって持分会社の取消しを請求することができる。
1. 社員が民法その他の法律の規定により設立に係る意思表示を取り消す場合は、当該社員、その代理人、同意権者、その承継人 2. 社員がその債権者を害することを知って持分会社を設立した場合は、当該債権者 |
|
設立無効の訴え (会社法828条1項1号) |
設立取消しの訴え(会社法832条) |
|
意思表示の取消し (会社法832条1号) |
詐害設立 (会社法832条2号) |
||
提訴権者 |
社員・清算人 |
設立に係る意思表示を取り消すことができる社員 |
被詐害債権者 |
被告 |
会社 |
会社 |
会社および当該社員 |
提訴期間 |
会社成立の日から2年以内 |
||
管轄裁判所 |
被告となる会社の本店所在地を管轄する地方裁判所 |
② 判決の効力
設立無効の訴えの場合と同様に、原告の請求を認容する確定判決には対世効があるが、遡及効はない。
また、設立取消原因が一部の社員のみにあるときは、他の社員全員の同意によって当該持分会社を継続することができる。
(3) 設立無効(取消し)の登記
設立無効(取消し)判決が確定したときは、裁判所書記官は職権で、遅滞なく会社の本店の所在地を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない(会社法937条1項1号チ)。