• 不動産登記法ー13.総論
  • 8.一般承継人による登記
  • 一般承継人による登記
  • Sec.1

1一般承継人による登記

堀川 寿和2022/01/19 09:25

 物権変動が生じたが、その登記を申請する前に申請人である登記権利者や登記義務者が死亡したときは、その相続人が被相続人に代わって、被相続人がすべきであった登記を申請することができる。(不登法62条)合併によって登記権利者や登記義務者が消滅した場合には、承継会社が消滅会社のすべきであった登記を申請することができる。


相続人による申請

(1) 登記権利者の相続人が申請する場合

 Aの所有する不動産をBが買い受けたが、その所有権の移転の登記を申請する前にBが死亡した。相続人は子のCである。本来であれば、A・Bの共同申請で、AからBへの所有権移転登記を申請するはずであったが、その前にBは死亡したので、その相続人であるb1及びb2がBに代わって、Aと共同して登記を申請する。



 買主の相続人による所有権移転登記 申請書 記載例

(*1)所有権登記名義を取得する亡Bの住民票の除票の写し又は戸籍の付票を提供する。

(*2)b1とb2がBの相続人であることを証するためにB・b1・b2の戸籍謄抄本(戸籍全部事項証明書)を提供する。


 登記権利者の相続人が登記を申請する場合、相続人が数人いるときは、そのうちの1人が登記義務者とともに登記を申請することもできる。共有物の保存行為(民法252条ただし書)といえるからである。その場合の、申請人欄の記載方法は以下のとおりである。


(2) 登記義務者の相続人が申請する場合

 登記義務者の相続人が登記を申請する場合に、相続人が数人いるときは、相続人の全員が登記権利者と共同して登記を申請することを要する。(S27.8.23民甲74号)

 被相続人の登記申請義務は、相続人全員に不可分的に帰属すると解されるからである。



売主の相続人による所有権移転登記 申請書 記載例

(*1)死亡したAが所有権を取得した際に通知を受けた登記識別情報又は交付を受けた登記済証

を提供する。

(*2)実際に登記を申請するAの相続人であるa1及びa2の印鑑証明書を提供する。

(*3)Bが甲の相続人であることを証するために亡A・a1・a2の戸籍謄抄本(戸籍全部事項証明書)を提供する。


先例(S37.3.8民甲638号)
上記の事例で、AからBへ移転登記をすべきところ、Aからa1及びa2へ相続登記をしてしまった場合、本来であれば相続登記を抹消した上でAからBへの相続登記をすべきであるが、A・B間の売買の日付で直接a1・a2からBへと売買による移転登記をしてもよい。


(3) 添付情報

 相続人による登記の際には、通常の添付情報に加えて、「相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」が添付情報となる。

 具体的には、相続を証する戸籍謄抄本、合併を証する会社の登記事項証明書がこれにあたる。


承継会社による申請

 A・Bが会社などの法人の場合で、合併(一般承継)があったときも同様である。(不登法62条)

 A会社が合併による消滅会社である場合は、そのA会社の承継会社とB会社で、B会社が合併による消滅会社であるときはA会社とB会社の承継会社で所有権の移転登記を申請することになる。