• 不動産登記法ー13.総論
  • 9.判決による登記
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  • Sec.1

1判決による登記

堀川 寿和2022/01/19 09:32

意義

 登記は、原則として登記権利者と登記義務者が共同で申請しなければならないが、登記権利者又は登記義務者の一方が登記申請手続に協力しないということも考えられる。そんな場合には、登記に協力しない者を被告として登記手続を命ずる確定判決を得て、判決を得た者が単独で登記を申請することができる。(不登法63条1項)これを、判決による登記という。




意思表示の擬制

 登記を申請するということは、登記所に対する意思表示(公法上の法律行為)ということができる。

 上記の事例でいうと、AからBへのへの所有権移転登記の申請は、登記権利者であるBと登記義務者であるAが登記所に対して「所有権移転登記をしてください」という意思表示であると考える。

 そして、登記義務者が登記手続に協力しないということは、登記義務者が登記所に対して登記申請の意思表示をしないということができる。なお、売主Aは買主Bに対して所有権の移転の登記をする義務を負っている。つまり、登記所に対して登記申請の意思表示をする義務を負っていると考える。

 そして、民法414条2項ただし書で、「法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる」とされているため、登記請求権の債権者Bは債務者Aを被告として訴えを提起し、「被告Aは原告Bに対して所有権の移転の登記の手続をせよ」という判決がなされたときは、Aが登記所に対して登記申請の意思表示をしたことになる。(登記申請意思の擬制)

 Aの意思表示は裁判で擬制されたので、登記権利者であるBが単独で登記を申請することができることになる。


判決の種類、内容

(1) 給付判決であること

 不動産登記法63条1項が要求する判決は、登記義務者の登記を申請するという意思表示を擬制するものであるので、債務者に対し一定内容の登記手続を命じた給付判決でなければならない

 確認判決や形成判決では足りない。例えば、「甲土地は原告Bが所有するものである。」いったことを確認する判決をもって、Bが単独で所有権の移転の登記を申請することはできない。原告が不動産の所有者であることが確認されても、直ちに原告が被告に対して所有権の移転の登記の請求権を有するとは限らないからである。   cf 判決による所有権保存登記(不登法74条1項2号)


先例(M33.9.24民刑1390号)
「被告は原告より金1000万円を受領し、甲土地を原告に売り渡せ」との判決をもって、登記権利者は単独で売買による所有権の移転の登記を申請することはできない。

⇒ 登記手続を命じた給付判決とはいえない。


先例(S56.9.8民三5484号)
「所有権の移転の登記に必要な書類を交付せよ」との判決をもって、登記権利者は単独で所有権の移転の登記を申請することはできない。

⇒ この判決は“書類を交付せよと言っているだけであって、登記手続を命じた給付判決ではないからである。


(2) 判決が確定していること

 債務者の意思表示を求める裁判においては、判決が確定した時に債務者が意思表示をしたものとみなされるので、判決は確定していることを要する。