- 不動産登記法ー13.総論
- 7.登記官の処分に対する不服申立て
- 登記官の処分に対する不服申立て
- Sec.1
1登記官の処分に対する不服申立て
登記官のした違法・不当な処分によって不利益を受けたと主張する者には、次の3つの救済手段が認められるている。
・ 行政訴訟
・ 国家賠償 ・ 審査請求 |
■行政訴訟
登記官の不当な処分によって不利益を受けた者は、審査請求の申立てをすることなく直接裁判所に対して、登記官の処分の取消しを求める抗告訴訟を提起することができる。
また、法務局長又は地方法務局長に対して審査請求をした者は、その却下ないし棄却の裁決をした局長を被告として、裁決の取消しを求める行政訴訟を提起することもできる。
■審査請求
(1) 意義
登記官の不当な処分により不利益を受けた者は、その不当処分の是正を求め、正当な処分があったのと同様の効果ないし状態を作出するように、その登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に対し請求することができる。(不登法156条)これが、審査請求の制度である。
(2) 審査請求権者
登記宮の不当な処分により直接不利益を受けた者であり、かつ、審査請求が認められることによってその不利益が除去される立場にある者に限られる。例えば、所有権の移転の登記の申請が却下された場合には、登記権利者、登記義務者のいずれもが単独で審査請求をすることができる。
先例 | (大決T9.10.13) |
債権者が代位して申請した登記につき、債務者の申請によりその登記が抹消されたときは、代位債権者は審査請求をすることができる。 |
先例 | (大決T6.4.25) |
抵当権の移転の登記の申請が却下された場合、抵当権設定者は何らの不利益も受けないので、審査請求をすることはできない。 |
(3) 審査請求の対象となる登記官の不当な処分
① 登記官の処分
審査請求の対象となる登記官の処分には、登記申請の受理、却下、登記の実行、登記事項証明書の交付等、不動産登記法において登記官がなすべきとされているすべての行為が含まれる。
② 不当な処分
審査請求の対象となるのは登記官の処分自体が不当であることを要し、かつ登記手続上その登記官の処分が是正可能な場合でなければならない。このように、審査請求をすることができるのは、登記官がその処分を是正することができる場合に限られるので、登記申請が受理され実行されたことにつき審査請求をする場合には、登記官が職権でその登記を抹消できる場合、すなわち不動産登記法25条1号から3号まで及び13号に該当する登記がされた場合に限られる。
(4) 審査請求の手続き
審査請求をしようとする者は、監督法務局地方法務局の長を名宛人として、登記官を経由してしなければならない。(不登法156条2項)審査請求の宛先は局長だが、直接局長に請求するのではなく、実際に当該処分をおこなった登記官を経由して請求しなければならない。
(5) 審査請求の方法
審査請求は書面又はオンラインの方法によってしなければならず、口頭による申出は認められない。
(6) 審査請求に対する措置
① 審査請求に理由があると判断した場合
審査請求に理由があると判断したときは、登記官は相当の処分をしなければならない。(不登法157条1項)
② 審査請求に理由がないと判断した場合
審査請求に理由がないと判断したときは、登記官は3日以内に、意見を付して事件を監督法務局又は地方法務局の長に送付する。(不登法157条2項)そして、送付を受けた法務局又は地方法務局の長が、審査請求に理由があると認めた場合には、登記官に対して相当の処分を命ずる。(同条3項)
審査請求について送付を受けた法務局又は地方法務局の長は、審査請求の審理中に、請求に理由があるとの心証を得たときは、登記官に対し裁決により命ずるであろう登記の仮登記を命ずることができる。(不登法157条4項)
審査請求がされ、それに対する判断がされるまでは相当の日数を要する場合があり、裁決が出た後で第三者が先に登記をして、その是正ができなくなることを防止するためである。法務局の長は、仮登記を命ずることが「できる」のであって、必ず命じなければならないというわけではない。また、審査請求人が仮登記をすることを請求することはできない。