- 不動産登記法ー9.信託の登記
- 5.信託の併合、分割
- 信託の併合、分割
- Sec.1
1信託の併合、分割
■信託の併合の意義
信託の併合とは、受託者を同一とする2以上の信託の信託財産の全部を、一の新たな信託の信託財産とすることをいう。(信託法2条10号)信託の併合によって、従前の各信託は終了することになるが、その財産は信託の清算を経ずに新たな信託の信託財産を構成することとなる。
例えば、委託者A、受託者Cとする甲信託(信託財産X土地)と、委託者B、受託者Cとする乙信託(信託財産Y土地)が併合され、新たな丙信託としたような場合である。信託の併合に際しては、必要に応じて債権者保護手続をすることを要する。(信託法152条)
■信託の分割の意義
信託の分割とは、ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする他の信託の信託財産として移転すること(吸収信託分割)又はある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする新たな信託の信託財産として移転すること(新規信託分割)をいう。
吸収信託分割は株式会社における吸収分割に、新規信託分割は株式会社における新設分割に類似するものである。信託の分割に際しては、必要に応じて債権者保護手続をすることを要する。(信託法156条)
■信託の併合又は分割によってなすべき登記
信託の併合又は分割がされても、信託財産の帰属に変更は生じない。信託の併合又は分割は、受託者を同一とする別の新たな信託の信託財産とするものだからである。よって信託財産の所有権が移転するということはない。ただし、信託財産の帰属先に変更が生じることになるため、所有権に変更が生じることになり、所有権の変更の登記を申請することになる。
・ 所有権等の変更登記
・ 従前の信託登記の抹消
・ 新たな信託についての信託の登記
(1) 一括申請
従前の信託についての信託の登記の抹消と新たな信託についての信託の登記は、信託の併合又は分割による所有権等の変更の登記と1つの申請情報で申請する。
(2) 申請人
① 信託の併合又は分割による所有権等の変更登記
新たな信託の受託者及び受益者を登記権利者、従前の信託の受託者及び受益者を登記義務者として、共同で申請する。(不登法104条の2 2項3号)
② 従前の信託の抹消登記及び新たな信託についての信託登記
受託者が単独で申請する。(不登法98条2項、104条2項)
(3) 添付情報
① 登記義務者の登記識別情報
信託の併合又は分割による所有権等の変更の登記を申請する場合、登記義務者たる従前の信託の受益者については、登記識別情報を提供することを要しない。受益者は所有権の登記名義人というわけではないので、もともと登記識別情報が通知されていないからである。
もう一方の登記義務者である従前の信託の受託者については、原則どおり、登記識別情報を提供することを要する。
② 債権者保護手続をしたことを証する書面
信託の併合又は分割をする場合には、債権者保護手続きをする必要があるため、信託の併合・分割による所有権等の変更の登記を申請する場合には、債権者保護手続が適法に行われたこと等を証する情報を提供することを要する。