- 不動産登記法ー9.信託の登記
- 3.信託の任務の終了
- 信託の任務の終了
- Sec.1
1信託の任務の終了
■受託者の任務の終了
(1) 受託者の任務終了事由
受託者の任務は、信託の清算が終了した場合のほか、以下の事由によって終了する。(信託法56条)
① 受託者である個人の死亡
② 受託者である個人が後見開始又は保佐開始の審判を受けたこと
③ 受託者が破産手続開始の決定を受けたこと
④ 受託者である法人が合併以外の理由により解散したこと
⑤ 受託者の辞任
⑥ 受託者の解任
⑦ 信託行為において定めた事由の発生
上記のいずれかの理由で受託者の任務が終了しても、当然に信託の効力が消滅することはない。新たな受託者又は残存する受託者の下で信託は存続することになる。
(2) 受託者が1人で、その任務が終了した場合
受託者が1人である場合に、その任務が終了し、新受託者が就任したときは、新受託者は原則として前受託者の任務が終了した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなされる。(信託法75条1項)よって、前受託者の任務が終了した日をもって、新受託者に所有権移転登記を申請することになる。
なお、受託者が死亡した場合でも当該不動産は信託財産であるため、死亡した受託者の相続人に所有権移転登記をすることはできない。
(3) 受託者が複数で、そのうち1人の任務が終了した場合
受託者が複数存する場合に、そのうちの1人の任務が終了したときは、その任務が終了した時に存する信託に関する権利義務は、原則として他の受託者が当然に承継する。(信託法86条4項)
よって、複数の受託者のうちの1人の任務が終了したときは、他の受託者のために権利の変更の登記を申請することになる。
■受託者の任務終了による登記手続き
(1) 申請人
① 受託者の任務が死亡、破産手続開始の決定、後見開始、保佐開始の審判、法人の合併以外の理由による解散、裁判所もしくは主務官庁による解任命令により終了した場合
受託者変更による権利の移転の登記、任務の終了による権利の変更の登記は、新受託者又は残存する受託者が単独で申請することができる。(不登法100条)旧受託者を関与させることが不可能だったり不適当であるからである。
② 上記(1)以外の事由で受託者の任務が終了した場合
新受託者を登記権利者、旧受託者を登記義務者として、共同で所有権移転又は変更登記を申請する。(不登法60条)
(2) 添付情報
新受託者又は残存受託者が単独で権利の移転又は変更の登記を申請するときは、申請情報と併せて、不動産登記法100条1項に規定する事由によって受託者の任務が終了したことを証する市区町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報を提供することを要する。単独申請する登記なので、登記の正確性を確保するため、公務員が職務上作成した情報を提供させることによって真正を担保する。
(3) 登録免許税
受託者の変更による権利の移転の登記については、登録免許税は課されない。(登録免許税法7条1項3号)信託行為による所有権の移転の登記においても登録免許税は課されないため、受託者の変更による所有権の移転の登記においても非課税扱いとされている。
合有名義人の変更登記 申請書 記載例 (受託者A・B・CのうちAが死亡した場合)
(*1)残存受託者の単独申請による。
(受託者A・B・Cのうち、Aが辞任した場合)
(*1)残存する受託者B・Cを登記権利者、辞任するAを登記義務者とする共同申請による。