• 不動産登記法ー8.仮登記
  • 5.仮登記の抹消
  • 仮登記の抹消
  • Sec.1

1仮登記の抹消

堀川 寿和2022/01/18 09:58

意義

 仮登記がなされても、仮登記原因(ex売買、売買予約)が、存在しなかったり、無効であったり、又は仮登記原因が取消し又は解除された場合、当該仮登記は抹消されることになる。


申請人

(1) 原則(共同申請)

 仮登記の抹消も、仮登記名義人が義務者、仮登記義務者が登記権利者となって共同申請するのが原則である。仮登記の抹消も、権利に関する登記の抹消であるから、抹消につき登記上の利害関係を有する第三者があるときは、その者の承諾を得なければならない。(不登法68条)下記の事例の場合、抹消される仮登記上に乙区1番で抵当権設定仮登記を有するXは利害関係人にあたる。



        共同申請による(1号)仮登記の抹消 申請書 記載例

(*1)2号仮登記の抹消の場合は「2番所有権移転請求権仮登記抹消」とする。

 (完了後の登記記録)


 仮登記に遅れる所有権移転登記がなされている場合

上記のように、乙の仮登記に遅れる甲から丙への所有権移転登記がなされている場合の2番仮登記の抹消登記の申請人(登記権利者)は、甲でも丙でもいずれでもよい。


(2) 例外(単独申請)

① 仮登記名義人の単独申請

 仮登記の抹消は、60条の規定(共同申請の原則)にかかわらず、仮登記の登記名義人が単独で申請することができる。(不登法110条前段)この仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消の申請には、登記識別情報の提供が必要であるが、仮登記義務者(登記権利者)の承諾を証する情報の提供は不要である。


    仮登記名義人の単独申請による仮登記の抹消 申請書 記載例

(*1)2号仮登記の抹消の場合は「2番所有権移転請求権仮登記抹消」とする。

② 登記上の利害関係人の単独申請

 仮登記の登記名義人の承諾がある場合における当該仮登記の登記上の利害関係人も単独で仮登記の抹消を申請することができる。(不登法110条後段) ここでいう登記上の利害関係人とは、その仮登記に基づく本登記がされた場合に、自己の権利が否定されるか、又は所有権に関する仮登記の本登記がなされれば抹消されることとなる者をいう。後順位の抵当権者、用益権者などがこれにあたる。

 さらにここでいう利害関係人には、仮登記義務者も含まれる。



    利害関係人の単独申請による仮登記の抹消 申請書 記載例

(*1)仮登記名義人の承諾書及び抹消される仮登記の登記上の利害関係人がいる場合には、その者の承諾書の添付が必要である。



その他

(1) 仮登記と本登記の同時抹消


先例(S36.5.8民甲1053号)
所有権の移転の仮登記及び当該仮登記に基づく本登記がされた後に、その登記の原因たる売買契約が解除された場合には、1つの申請情報をもって仮登記と本登記の抹消を申請することができる。


      仮登記と本登記の同時抹消登記 申請書 記載例


(*1)この抹消を申請するときは、申請情報と併せて本登記を受けた際の登記識別情報を提供すれば足りる。(質疑登研391号)

(*2)仮登記と本登記の計2個の抹消であるが、不動産は1個なので,登録免許税は1000円である。

 

     (完了後の登記記録)


(2) 仮登記を抹消を命ずる処分による仮登記の単独抹消の可否


先例(S47.12.8民三996号)
仮登記の抹消を命ずる裁判所の処分を得ても、登記権利者が単独で仮登記の抹消を申請することはできない。

⇒ 仮登記の場合には、仮登記を命ずる処分を得れば、仮登記権利者の単独申請で仮登記の申請ができたが、仮登記の抹消登記にはこのような規定はなく、登記義務者(仮登記の登記名義人)が仮登記の抹消の手続に協力しない場合には、原則どおり仮登記の抹消の手続を命ずる執行力ある確定判決を得る必要がある。