- 不動産登記法ー5.根抵当権に関する登記
- 7.元本確定前に根抵当権者又は債務者が会社分割した場合の登記
- 元本確定前に根抵当権者又は債務者が会社分割した場合の登記
- Sec.1
1元本確定前に根抵当権者又は債務者が会社分割した場合の登記
元本確定前の根抵当権者又は債務者が会社分割した場合も、合併の場合と同様に根抵当権の元本は原則として確定しない。引き続き未確定のまま分割会社及び承継会社が分割後に取得する債権又は債務を担保する根抵当権として存続することになる。
■元本確定前に根抵当権者が会社分割した場合
(1) 原則
根抵当権の元本が確定する前に、根抵当権者を分割会社とする会社分割があったときは、引き続き未確定のまま存続することになる。当該根抵当権は、分割の時に存する債権のほか、分割会社及び承継会社が分割後に取得する債権を担保する。(民法398条の10 1項)その結果、元本確定前の根抵当権は、会社分割により法律上当然に分割会社と承継会社の準共有になるため、根抵当権の一部移転登記をすることになる。
(極度額1000万円)
(*1)合併の場合と異なり、分割会社と承継会社(新設分割の場合は、設立会社)の共同申請による。会社分割の場合は合併の場合と違って両社は存続するためである。
(*2)登記原因証明情報として、承継会社(新設分割の場合は、設立会社)の登記事項証明書を提供する。なお、法律上、当然に根抵当権が準共有となるため、分割契約書(新設分割の場合は、分割計画書)の提供は不要である。cf 抵当権者の会社分割の場合
(*3)共同申請であるため、登記義務者の登記識別情報が必要である。
(*4)分割後の共有者の数で極度額を除して計算した額に1000分の2である。
(登録免許税法別表一、一、(七))
cf 合併の場合は、1000分の1
(2) 例外(設定者による元本確定請求)
元本の確定前に根抵当権者を分割会社とする会社分割があった場合、根抵当権の設定者は、根抵当権者につき分割があったことを知った日から2週間を経過する前で、かつ分割の日から1か月を経過するまでに、根抵当権の元本の確定を請求することができる。(民法398条の10 3項、同条の9 3項5項)この場合には、根抵当権者が分割したときにおいて根抵当権の元本が確定したものとみなされる。(民法398条の10 3項、同条の9 4項)元本の確定請求の意思表示が根抵当権者に到達したときではない点に注意!
■元本確定前の根抵当権の債務者が会社分割した場合
(1) 原則
根抵当権の元本が確定する前に、債務者を分割会社とする会社分割があったときは、引き続き未確定のまま存続することになる。当該根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割会社及び承継会社(新設分割の場合は、設立会社)が分割後に負担する債務を担保する。(民法398条の10 2項)元本確定前の根抵当権は、会社分割により法律上当然に分割会社と承継会社を債務者とする根抵当権となる。したがって、債務者を分割会社と承継会社(新設分割の場合は、設立会社)とする変更登記をすることになる。
(*1)登記原因証明情報として、承継会社(新設分割の場合は、設立会社)の登記事項証明書を提供する。なお、法律上、当然に根抵当権が準共有となるため、分割契約書(新設分割の場合は、分割計画書)の提供は不要である。cf 抵当権の債務者の会社分割の場合
(*2)変更登記として、不動産1個につき1000円である。(登録免許税法別表一、一、(十四))
(2) 例外(設定者による元本確定請求)
元本の確定前に債務者を分割会社とする会社分割があった場合、根抵当権の設定者は、債務者につき分割があったことを知った日から2週間を経過する前で、かつ分割の日から1か月を経過するまでに、根抵当権の元本の確定を請求することができる。(民法398条の10 3項、同条の9 3項5項) この設定者からの元本確定請求がされたときは、分割の時(確定請求の意思表示が根抵当権者に到達したときではない!)において根抵当権の元本が確定したものとみなされる。(民法398条の10 3項、同条の9 4項)
ただし、債務者が根抵当権設定者であるときは、債務者の分割を理由として元本の確定請求をすることはできない。(同条ただし書)自らの意思で合併しておきながら、設定者として確定請求するのは不合理だからである。よって、設定者が根抵当権の債務者以外の場合に確定請求できることになる。
設定者からの確定請求の可否 まとめ
根抵当権者の会社分割 | 債務者の会社分割 | |
物上保証人 | ○ | ○ |
債務者兼設定者 | ○ | × |