- 不動産登記法ー5.根抵当権に関する登記
- 6.元本確定前に根抵当権者又は債務者が合併により消滅した場合の登記
- 元本確定前に根抵当権者又は債務者が合併により消滅した場合の登記
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1元本確定前に根抵当権者又は債務者が合併により消滅した場合の登記
元本確定前の根抵当権者又は債務者が合併によって消滅しても、根抵当権の元本は原則として確定しない。なぜなら合併による承継会社や新設会社も引き続き合併後も取引を継続することが予想されるからである。よって引き続き未確定のまま承継会社(新設会社)の特定の債権債務を担保する根抵当権として存続することになる。したがって、相続の場合のように指定合意による登記は必要ない。
■元本確定前に根抵当権者が合併によって消滅した場合
(1) 原則
根抵当権者であるA社がC社に合併された場合、A社の根抵当権者たる地位は当然にC社に引き継がれることになる。この場合、A社の合併前のBとの売買取引上の債権と、合併後のC社のBとの売買取引上の債権を担保する根抵当権として引き続き未確定のまま存続することになる。したがって、この場合、合併による根抵当権の移転登記のみをすればよいことになる。
合併による根抵当権の移転登記 (極度額1000万円)
(*1)C社がA社を合併した旨の記載された合併後のC社の登記事項証明書を提供する。
ただ、C社の会社法人等番号を提供すれば、省略することができる。
(*2)根抵当権の極度額を課税価格として、その1000分の1である。
(登録免許税法別表一、一、(六)イ)
(2) 例外(設定者による元本確定請求)
元本の確定前に根抵当権者が合併により消滅したときは、根抵当権の設定者は、根抵当権者に合併があったことを知った日から2週間を経過する前で、かつ合併の日から1か月を経過するまでに、根抵当権の元本の確定を請求することができる。(民法398条の9 3項5項)
この場合には、根抵当権者が合併したときにおいて根抵当権の元本が確定したものとみなされる。(民法398条の9 4項)元本の確定請求の意思表示が根抵当権者に到達したときではない点に注意!
■元本確定前の根抵当権の債務者が合併によって消滅した場合
(1) 原則
債務者であるB社がD社に合併された場合、B社の債務者たる地位は当然にD社に引き継がれることになる。この場合、B社の合併前のA社との売買取引上の債権と、合併後のD社のA社との売買取引上の債権を担保する根抵当権として引き続き未確定のまま存続することになる。したがって、この場合、合併による債務者の変更登記のみをすればよいことになる。
合併による根抵当権の債務者の変更登記
(*1)D社がB社を合併した旨の記載された合併後のD社の登記事項証明書を提供する。
(*2)変更登記として、不動産1個につき1000円である。(登録免許税法別表一、一、(十四))
(2) 例外(設定者による元本確定請求)
元本の確定前に債務者が合併により消滅した場合、根抵当権の設定者は、債務者に合併があったことを知った日から2週間を経過する前で、かつ合併の日から1か月を経過するまでに、根抵当権の元本の確定を請求することができる。(民法398条の9 3項5項) この設定者からの元本確定請求がされたときは、債務者が合併した時(確定請求の意思表示が根抵当権者に到達したときではない!)において根抵当権の元本が確定したものとみなされる。(民法398条の9 4項)
ただし、債務者が根抵当権設定者であるときは、債務者の合併を理由として元本の確定請求をすることはできない。(同条ただし書)自らの意思で合併しておきながら、設定者として確定請求するのは不合理だからである。よって、設定者が根抵当権の債務者以外の場合に確定請求できることになる。
設定者からの確定請求の可否 まとめ
根抵当権者が合併した場合 | 債務者が合併した場合 | |
物上保証人 | ○ | ○ |
債務者兼設定者 | ○ | × |