- 不動産登記法ー3.用益権に関する登記
- 7.借地借家法に関する登記
- 借地借家法に関する登記
- Sec.1
1借地借家法に関する登記
借地借家法とは、建物の所有を目的とする地上権や土地賃借権、並びに建物の賃貸借がされた場合についての特別の定めである。地上権や賃借権については、民法上で規定されているが、一定の要件を満たす場合に、特別法である借地借家法を優先適用することによって、立場の弱い賃借人を保護しようとするものである。
■借地権
(1) 意義
建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権のことを借地権という。(借地借家法2条1号)
借地権の場合、存続期間は、30年である。ただし、当事者間の契約でこれより長い期間を定めた場合には、その期間となる。(借地借家法3条)つまり、最低でも30年以上ということになる。
cf 民法上の賃貸借の存続期間は、20年を超えることができないが、借地権の場合には存続期間が最低30年以上ということになる。人の土地を借りて建物を建てることになるため、期間は長いに越したことはないという考えによる。
(2) 自己借地権
自分が所有の土地に借地権を設定すること(自己借地権)はできないが、他の者と共有する場合であれば、自己借地権の設定も可能である。
(3) 存続期間満了後の更新
存続期間満了後も借地人が土地の使用を継続する場合、建物がある場合に限り、地主が遅滞なく異議を述べなければ、存続期間の点を除き、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされる。(借地借家法5条2項)この法定更新を阻止するためには地主が遅滞なく異議を述べなければならないが、この異議を述べるには正当事由がなければならない。(借地借家法6条)
(4) 定期借地権
定期借地権とは、一定の存続期間を定め、その期間が満了しても契約の更新を保障せず、存続期間の満了によって借地関係を確定的に消滅させる制度である。通常の借地権の場合、存続期間が満了しても、正当事由がなければ引き続き借地関係が更新されるため、一定の要件を定めてその存続期間を満了すれば借地権を消滅させる新たな借地権を新設した。借地借家法22条から24条に規定がある。
① 一般の定期借地権(借地借家法22条)
公正証書等書面によって次の特約をした借地権である。
(イ)存続期間を50年以上とする
(ロ)契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がない
(ハ)存続期間の満了の際に建物買取請求をしない
(*1)50年以上であることを要する。
(*2)判決による場合を除き、契約書等の他に借地借家法22条後段の書面(特約に係る書面)をも登記原因証明情報の一部としなければならない。借地借家法22条の定期借地権は特約を公正証書等の書面でしなければならず、その書面が登記原因証明情報の一部となる。
② 事業用借地権(借地借家法23条1項、2項)
事業用借地権の設定は、事業の用に供することを目的とする借地権で、1項2項とも必ず公正証書によってしなければならない。(借地借家法23条3項)
(イ)1項の事業用借地権
借地借家法23条1項の事業用定期借地権は、専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合には、「契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに借地借家法13条の規定による建物の買取請求をしないこととする」旨の特約を付すことができるとする借地権である。
社宅や賃貸マンションの所有を目的とする事業用借地権の設定の登記をすることはできない。
(*1)30年以上50年未満であることを要する。
(*2)原則として、公正証書の謄本が登記原因証明情報となる。ただし、登記原因証明情報として、執行力ある確定判決書の正本を添付したときは、公正証書の謄本を添付することを要しない。
(ロ)2項の事業用借地権
2項の事業用借地権は、専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、当然に契約の更新、存続期間の延長の規定が適用されず、かつ建物の買取請求等の規定も適用されないというものである。1項の事業用借地権のように特約を付さなくても当然に上記の制限がかかることになるため、「特約 借地借家法第23条第2項の特約」と申請書に記載する必要はない。
(*1)10年以上30年未満であることを要する。
(*2)原則として、契約を証する公正証書の謄本が登記原因証明情報となる。ただし、登記原因証明情報として、執行力ある確定判決書の正本を添付したときは、公正証書の謄本を添付することを要しない。
③ 一時使用目的の借地権(借地借家法25条)
臨時設備の設置、その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合は、存続期間に関する規定、契約の更新、存続期間の延長に関する規定が適用されず、かつ建物買取請求に関する規定も適用されない。このような借地権を、一時使用目的の借地権という。存続期間に関する規定が適用されないため、期間は30年未満でも差し支えなく、また公正証書等の書面によって契約をすることは要件とされていない。申請情報の内容として、「目的 臨時建物所有」と提供する。
■借家権
建物賃貸借については、特に存続期間について制限はない。ただし、期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めのない賃貸借とみなされる。(借地借家法29条)なお、建物賃貸借の場合にも存続期間満了によって賃貸人が契約の更新を拒絶するためには、正当事由を必要とする。
(1) 定期建物賃貸借(借地借家法38条)
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。このような特約のある賃貸借を、定期建物賃貸借という。
(*1)原則として、契約を証する公正証書の謄本が登記原因証明情報となる。ただし、登記原因証明情報として、執行力ある確定判決書の正本を添付したときは、公正証書の謄本を添付することを要しない。
(2) 取壊し予定の建物賃貸借
法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において建物の賃貸借をするときは、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨の特約をすることができる。(借地借家法39条1項)この賃借権設定登記の申請情報にはその特約として「特約 建物を取り壊すこととなる時に賃貸借終了」と記録する。この特約は、建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってすることを要する。(同条2項)
(*1)取壊し予定の建物の賃貸借は、特約を書面でしなければならず、その書面が登記原因証明情報の一部となる。ただし、登記原因証明情報として執行力ある確定判決の正本を提供した場合を除く。