- 不動産登記法ー3.用益権に関する登記
- 1.用益権の共通の性質
- 用益権の共通の性質
- Sec.1
1用益権の共通の性質
用益権には、地上権のほか、永小作権、賃借権、採石権等があるが、それぞれの用益権によって登記する内容が異なっている。司法書士試験では、これら各用益権特有の登記事項を問う問題がよく出題されているため、それぞれ正確に学習する必要がある。
■用益権の共通の性質
(1) 同一の土地の二重の用益権の設定の可否
① 原則
すでに用益権が設定されている土地を目的として新たな用益権を設定することはできない。
例えば、すでに地上権が設定されている土地に重ねて別の地上権を設定することはできない。
先例 | (S37.5.4民甲1262号) |
既に登記された地上権につき、登記記録上存続期間が満了していることが明らかな場合でも、そ
の地上権の登記を抹消することなく、新たな地上権の設定の登記を申請することはできない。 |
② 例外
(イ)賃借権
賃借権は、物権ではなく債権であるため、排他性がなく重ねて同一物の上に賃借権を設定することは可能である。
(ロ)地役権
地役権は、物権であるが、土地の便益を高めるための権利であるため、性質上同一の土地に重ねて設定することができる。
(2) 一筆の土地の一部を目的とする用益権設定の可否
一筆の土地の一部を目的として用益権を設定することは、実体法上は可能であるが、登記をするためには、前提として分筆登記をすることを要する。一筆の土地の一部の範囲を登記記録上明らかにすることが困難であるためである。
(3) 共有持分を目的とする用益権の設定の可否
数人の共有する土地について、共有者の持分のみを目的として地上権を設定することはできない。
たとえ、他の共有者の同意があってもできない。