• 不動産登記法ー3.用益権に関する登記
  • 2.地上権に関する登記
  • 地上権に関する登記
  • Sec.1

1地上権に関する登記

堀川 寿和2022/01/12 16:35

意義

 地上権とは、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用・収益できる権利である。(民法265条)

地上権の登記事項

 地上権の登記の登記事項は、不登法59条各号の一般的登記事項(登記の目的、原因及びその日付等)のほか、地上権特有の登記事項がある。(不登法78条)


(1) 絶対的登記事項(設定契約で必ず定めて登記しなければならない事項)

地上権設定の目的

地上権は、工作物又は竹木の所有を目的して設定するため、具体的な目的を定めて登記する必要がある。

 ex 「建物所有」「ゴルフ場所有」「スキー場所有」「杉所有」「松所有」


(2) 任意的登記事項(設定契約で定めたときには登記しなければならない事項)

① 地代又はその支払時期

 地上権は、地代の支払いを要件としていないが、当事者間で地代等につき定めることもでき、地代やその支払時期について定められたときは、登記する必要がある。

 ex 「地代 1平方メートルにつき1年○○円」「支払時期 毎年何月何日」


判例(大M40.3.12)
地上権の存続期間中は地代の増額をしないといった定めも、この地代の定めに該当する。


② 存続期間

 存続期間を定めるか否かは自由であるが、存続期間を定めたときは登記しなければならない。

 民法上、地上権の存続期間の上限、下限とも制限はないが、借地借家法の適用を受ける「建物所有を目的とする地上権(借地権)」については、借地借家法で最低期間の定め(30年以上)がある。


判例(大M36.11.16)
建物所有を目的とする地上権(借地権)以外の地上権の存続期間については、長期・短期の制限はなく、「永久」の地上権の設定も認められる。


③ 借地借家法22条前段、23条1項の定め

 定期借地権(借地借家法22条)や事業用借地権(借地借家法23条1項)については特有の登記事項がある。詳しくは賃借権の登記の後で後述する。



    地上権設定登記設定登記 申請書 記載例

(*1)法定地上権の場合には、「年月日法定地上権設定」となる。

(*2)農地に用益権を設定する場合、農地法の許可が必要となり、許可証明情報の提供が必要である。

(*3)地上権設定の目的たる土地の価格を課税価格として、その1000分の10である。

(登録免許税法別表一、一、(三)イ)

 

         (完了後の登記記録)           (一部記載省略)


地上権の移転登記

 地上権者が地上権を第三者に譲渡したり、又は地上権者が死亡して相続が開始したときは、地上権は移転する。この場合には、地上権の移転の登記を申請することができる。


先例(S35.5.18民甲1132号)
登記記録上、地上権の存続期間が満了していることが明らかな場合、存続期間が満了した後の日付を原因日付として、地上権の移転の登記を申請することはできない。


(1) 特定承継(売買、贈与等)による移転

 地上権を取得した者が登記権利者、地上権を譲渡した者(地上権者)が登記義務者とする共同申請による。


(*1)所有権登記名義人が登記義務者となる場合でないため、登記義務者の印鑑証明書の提供は不

要である。

(*2)特定承継(売買、贈与等)による用益権の移転の場合、地上権の目的たる土地の価格を課税価格として、その1000分の10である。(登録免許税法別表一、一、(三)ニ)



 (完了後の登記記録)           (一部記載省略)

(*)地上権の移転登記は、所有権以外の権利の移転登記であるため、付記登記で実行される。

(2) 包括承継(相続、合併)による移転

 相続人や権利を承継した法人からの単独申請による。


(*1)地上権者が複数の場合、持分も登記事項となる。

(*2)包括承継(相続、合併)による用益権の移転の場合、地上権の目的たる土地の価格を課税価格として、その1000分の2である。(登録免許税法別表一、一、(三)ロ)