- 不動産登記法ー2.所有権に関する登記
- 7.所有権抹消登記
- 所有権抹消登記
- Sec.1
1所有権抹消登記
所有権保存又は移転登記がなされたが、その登記が無効であるような場合、登記を抹消することができる。
■所有権移転登記の抹消
上記の事例で、AからBへの所有権移転登記を抹消する場合である。
(*1)所有権の登記名義を回復するAを登記権利者、抹消される所有権登記名義人Bを登記義務者とする共同申請による。
(*2)抹消されるBの所有権の上に担保権、用益権、差押え等の権利を有する者がいれば、登記上の利害関係人としてその者の承諾が必要となり、添付情報として承諾証明情報を提供することを要する。抹消登記の際に登記官がその者の権利の登記を職権で抹消することになるためである。
(*3)不動産1個につき1000円であり、同一申請情報により20個を超える不動産につき登記の抹消を受けるときは申請1件につき2万円である。(登録免許税法別表一、一、(十五))
(完了後の登記記録) (一部記載省略)
(*)抹消登記は、付記登記ではなく、主登記によってなされる。抹消された権利は上記のように下線が引かれることになる。
(1) 申請人
所有権移転登記の抹消は、原則どおり登記権利者と登記義務者の共同申請による。(不登法60条)
登研 | (質疑登研333号) |
相続による所有権移転の登記の抹消も、登記権利者と登記義務者の共同申請による。 |
登研 | (質疑登研427号) |
相続の登記の抹消において、登記権利者として申請する真実の相続人が数人いるときは、そのうちの1人が登記義務者と共同して申請することができる。 |
⇒ 共有物の保存行為に該当するからである。これに対して、登記義務者側が数人の場合には、その全員で申請しなければならない。
前記のように、AからB・C各2分の1に相続による所有権移転登記がなされたのちB・Cが相続放棄をし、第2順位の相続人甲及び乙が相続人となった場合
(1件目)
(*1)新相続人甲及び乙が亡Aに代わって相続放棄者B・Cと共同して相続による所有権移転登記を抹消することになるため、甲及び乙がAの相続人であることを証する書面を提供することを要する。具体的にはA、甲及び乙の戸籍のほか、B・Cが相続放棄によってAの相続人でなく
なったことを証する相続放棄申述受理証明書を添付することを要する。
(2件目)
先例 | (S30.8.10民甲1705号) |
売買によるAからBへの所有権の移転の登記がされた後に売主Aが死亡した場合、売主の相続人Cと買主Bは当該売買契約を合意解除することができ、所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。 |
⇒ 相続人Cは、Aの売主たる地位を承継しているため、Aに代わって売買契約を解除することができる。
(2) 登記原因及び日付
① 売買、贈与などの法律行為を法定解除したときは「解除」、合意解除のときは「合意解除」(S31.6.19民甲1247号)、取り消したときは「取消し」とし、その日付は解除又は取消しの効力が生じた日である。
② 登記原因が無効又は不成立の場合は「売買無効(不存在)」「錯誤」とし、それぞれ日付を要しない。(登研423号)
(3) 添付情報
① 登記原因証明情報
売買契約が解除された、取り消された、売買契約が存在しなかったといったことを明らかにした報告形式の情報をそれぞれの原因に応じて提供する。
② 登記義務者の登記識別情報
登記義務者が所有権の移転の登記を受けた際の登記識別情報(登記済証)を提供する。
③ 印鑑証明書
所有権抹消登記は、所有権登記名義人が義務者になる場合に該当するため、登記義務者の印鑑証明書の提供を要する。
④ 登記上の利害関係を有する第三者の承諾等を証する情報
権利の登記の抹消を申請する場合に、登記上の利害関係を有する第三者がいるときは、申請情報と併せてその者が作成した承諾を証する情報又はその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供することを要する。
⑤ 代理権限証明情報
司法書士に抹消登記の申請を委任する場合には、登記権利者及び登記義務者から司法書士への委任状を提供する。
(4) 順次移転登記の抹消
先例 | (S43.5.29民三1830号) |
AからB、 BからCへの所有権の移転の登記がされた後に、各所有権の移転の登記の抹消を申請するときは、まずBを登記権利者、Cを登記義務者としてBからCへの所有権の移転の登記を抹消し、登記名義をBに戻した上で、Aを登記権利者、Bを登記義務者としてAからBへの所有権移転登記の抹消を申請することを要する。 |
(完了後の登記記録) (一部記載省略)
■所有権保存登記の抹消
所有権保存登記がなされたが、その登記が無効である場合、所有権保存登記の抹消を申請することができる。例えば、A名義で建物の所有権保存登記がなされたが、真実は建物の所有者はAではなくBであったような場合、A名義の所有権保存登記は無効であるため、抹消して改めてB名義の所有権保存登記をするべきである。
(*1)所有権保存登記は前所有者が存在しないため、単独申請による。そしてその者が所有権保存登記の抹消をすることなく死亡した場合には、その相続人によって抹消できる。