• 不動産登記法ー2.所有権に関する登記
  • 5.所有権変更登記
  • 所有権変更登記
  • Sec.1

1所有権変更登記

堀川 寿和2022/01/12 14:26

共有物不分割特約(共有物分割禁止特約)

 各共有者は、最長5年の範囲内で、共有物の分割をしない旨の特約をすることができる。(民法256条ただし書)この期間は5年以内であることを要し、5年より長い期間を定めた場合は却下される。

(1) 所有権一部移転の場合

 例えば、AからBに売買等で所有権の一部が移転するのと同時に、共有者となったA・B間で共有物不分割特約をした場合には、所有権一部移転登記の申請情報の一部として共有物不分割特約を提供することができる。



(*1) 最長でも5年を超えることはできない。「○年間共有物分割禁止」とする記載例もある。

(*2) 所有権移転登記の義務者について登記識別情報を提供する。共有物不分割特約の登記の義務者としての登記識別情報の提供は不要である。


先例(S50.1.10民三16号)
所有権一部移転登記完了後に、別個に所有権変更登記として共有物不分割登記を申請することも差し支えない。


(2) 所有権全部移転の場合


 AからB・Cへ各持分2分の1で売買すると同時に、B•C間で共有物不分割特約をした場合、所有権移転と共有物不分割特約の登記は同時申請情報によることはできない。AからB・Cへの所有権移転登記後、B•C間で、所有権変更登記として申請しなければならない。この2つの登記は、申請人を異にするためである。


(1件目)


   (完了後の登記記録)


 (2件目)

(*1)所有権の変更登記は利害関係人の承諾を得られれば付記にて(利害関係人が存在しない場合を含む)、得られなければ主登記にて登記をすることになる。付記登記による場合には、登記官に注意を促すために、(付記)と記載することとされている。なお主登記による場合には(主登記)と記載する必要はない。

(*2)共有物不分割特約成立の日を記載する。

(*3)共有者全員が「登記権利者兼登記義務者」として申請する。各共有者に分割請求できないという不利益と、分割請求を拒否できるという利益が共存するためである。

(*4)申請人全員の登記識別情報(登記済証)を提供する。

(*5)共同申請ではないが申請人全員の印鑑証明書の提供を要する。

(*6)例えば本事例において、B持分のみに又はC持分のみに抵当権や差押え等の登記をしている第三者がいれば共有物不分割特約に際して利害関係人となる。共有物不分割特約が付されることによって権利行使が制限されることになり得るためである。

(*7)不動産1個につき1000円である。(登録免許税法別表一、一、(十四))

(*8)所有権保存登記・移転登記ではないため住所証明情報の提供は不要である。


   (完了後の登記記録) 付記登記による場合


  (完了後の登記記録) 主登記による場合


先例(S49.12.27民三6686号)
Aが死亡してB・Cの共有となった場合も同様に、相続による所有権移転登記と共有物不分割特約の登記は、別件で申請しなければならない。


所有権移転失効の定めの廃止の登記


 前提知識  「権利消滅の定め」がある所有権移転登記 申請書 記載例 


   (完了後の登記記録)

上記のような所有権移転失効の定めがあり、その登記がなされている場合において、当事者間の合意によってそれを廃止することができる。この場合、所有権変更登記の形式でその廃止の登記を申請することになる。

     

   所有権移転失効の定めの廃止の登記 申請書 記載例

(*1)変更登記であるが、一部抹消の実質を有するため抹消登記に準じて常に付記登記による。