- 不動産登記法ー2.所有権に関する登記
- 6.所有権更正登記
- 所有権更正登記
- Sec.1
1所有権更正登記
■更正登記の意義
所有権の保存や移転の登記がされたが、その登記の内容が、登記の当初から錯誤又は遺漏により実体法上の権利関係と一致しないときは、更正の登記によってその不一致を是正することができる。
■更正登記の要件
更正登記を申請するためには、以下の要件を満たしている必要がある。
① 当初から登記に錯誤又は遺漏があるため、登記と実体関係の間に不一致があること
つまりすでになされた登記に何らかの誤りがあるということである。
② 登記された事項の一部について実体関係との不一致があること
すでになされた登記の一部に誤りがある場合である必要がある。全部が誤っている場合には、登記自体が無効であり、更正登記によることはできず、いったん抹消して、再度登記をし直すべきである。
③ 更正の前後を通じて登記に同一性があること
既にされた登記と本来すべき登記の間に同一性がないときは、更正登記によることはできない。
例えば、AからBになすべきの所有権移転登記を、誤ってAからCに移転してしまったような場合、B名義をC名義に更正することは、更正の前後に同一性がないためできない。
一方、AからBへの所有権移転登記をAからB・C名義に更正することは、更正の前後で同一性があるため、可能である。
登研 | (質疑登研236号) |
甲名義の登記を、甲乙名義に更正することは可能であるが、さらにこれを乙名義に更正することはできない。結果的に、甲から乙名義の更正を認める結果となってしまうからである。 |
④ 登記の一部の抹消の実質を有する更正登記の場合は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾があること
例えば、AからB・Cへの所有権移転登記をAからB名義に更正する場合、C持分が更正登記によって消滅することになるため、C持分の抵当権や差押え等をしている第三者がいる場合には、その者承諾が必要となる。
■所有権移転登記の更正登記(相続以外の原因の場合)
(1) 甲から乙単有名義を甲から乙(2分の1)・丙(2分の1)に更正する場合
(*1)所有権の変更登記の場合と異なり、(付記)という記載は不要である。
(*2)前所有者である甲も登記義務者になる点に注意。申請人欄に改めて持分を記載する必要はない。
(*3)新たに所有権登記名義人になる丙の住所証明情報を提供する。
(*4)更正登記によって、乙持分が2分の1に縮小されるため、乙の所有権に抵当権や差押えを有する者がいる場合には、登記上の利害関係人として、その者の承諾が必要となり、添付情報として承諾があったことを証する情報を提供することになる。
(*5)所有権更正登記の登録免許税は、不動産1個につき、1000円である。(登録免許税法別表一、一、(十四)
(完了後の登記記録) (一部記載省略)
(*1)権利の変更・更正登記は、利害関係人が存在しないか存在する場合には承諾書を提供できれば付記登記にて、利害関係人が存在するが承諾書を提供できない場合には主登記によるのが原則であるが、所有権の更正登記は事実上一部抹消登記に当たるため、抹消登記に準じて利害関係人がいる場合には常に承諾書を提供させ常に付記登記によって登記がなされることになる。
(2) 甲から乙(2分の1)・丙(2分の1)でなされた登記を甲から乙単有に更正する場合
(*1)更正登記によって持分2分の1を失う丙のほか、前所有者である甲も登記義務者になる。
(*2)更正登記によって、丙持分2分の1が消滅することになるため、丙持分に抵当権や差押えを有する者がいる場合には、登記上の利害関係人として、その者の承諾が必要となり、添付情報として承諾があったことを証する情報を提供することになる。
(完了後の登記記録) (一部記載省略)
(3) 共有持分割合を更正する場合
甲から乙3分の2、丙3分の1でなされた所有権移転登記を甲から乙2分の1、丙2分の1に更正する場合
(*1) 持分のみの更正の場合には住所の記載は不要。
(*2) 持分の増加する丙が登記権利者、減少する乙を登記義務者とする。
持分のみの更正の場合は、前所有者である甲は登記義務者にならない。
(4) 所有権全部移転を一部移転に更正する場合
甲から乙への所有権全部移転を所有権一部(2分の1)移転に更正する場合
(5) 所有権一部移転を全部移転に更正する場合
甲から乙への所有権一部(2分の1)移転を所有権全部移転に更正する場合
(*1)更正により増加すべき所有権の持分価格が課税価格であり、登録免許税の税率は所有権一部
部移転の登記原因ごとに、例えば売買なら1000分の20である。更正分1000円の納付は不要である。実質上、増加すべき持分の移転登記だからである。
(6) 登記原因を更正する場合
登記原因を「売買」から「贈与」に更正する場合
(*1)原因日付に誤りがなければ、日付の記載は不要である。
先例 | (S41.6.24民三1792号) |
登記原因が「遺贈」とあるのを、「相続」と更正することができる。 |
登研 | (質疑登研362号) |
「売買」を登記原因とする所有権移転を「真正な登記名義の回復」に更正することができる。 |
(7) 甲→乙・丙各2分の1名義になされた所有権移転登記を、乙・丁2分の1に更正する場合
(*1)更正後の事項として持分に変更のない乙についても記載を要するとするのが先例である。新たな登記名義人丁が登場したからと考えられる。
(*2)持分に変更のない乙は申請人にはならない!一方、前所有者甲は丁に対する登記申請義務を履行していないため、申請人となる。
(完了後の登記記録) (一部記載省略)