- 権利関係ー6.抵当権(担保物権)
- 1.抵当権の内容
- 抵当権の内容
- Sec.1
1抵当権の内容
抵当権とは、いわゆる借金のカタの一つで、例えば、金融機関で住宅ローンを組む場合に、必ずと言っていいほど要求されるものである。抵当物件を仲介する場合、そもそも抵当権が付いたまま取引してもよいのか、借金が返済できなかったらどうなってしまうのかなど、宅地建物取引士にとっては、抵当権の知識は宅建試験受験上重要なテーマである一方、技術的な内容が多く、細部まで理解するのは困難である。頻出の基本的事項に的を絞って効率よく学習しよう。 |
学習のポイント
1. 抵当権の概要(抵当権とはどのようなものなのか?)、抵当権に関する用語について理解する。
2. 抵当不動産の第三取得者に絡んだ問題(抵当権消滅請求・代価弁済・第三者弁済)について理解する。
3. 抵当権の実行に際して問題となること(法定地上権・一括競売)を把握する。
■抵当権とは
抵当権は、担保物権の1つであり、債務者または第三者(物上保証人)が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、債務が履行されない場合に競売に付し、その競売代金から他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる権利である。
抵当権は、当事者間の合意(抵当権設定契約)によって成立する。自己の所有する不動産に抵当権を設定した者を抵当権設定者といい、抵当権の設定を受けた債権者を抵当権者という。また抵当権により担保される債権を被担保債権という。
事例1 A銀行のBに対する貸金債権を担保するため、債務者であるBは自己の所有地にA銀行の抵当権を設定した。
事例2 A銀行のBに対する貸金債権を担保するため、第三者であるCは自己の所有地にA銀行の抵当権を設定した。この場合、債務者と抵当権設定者が別人となるが、Cのような、債務者以外の担保提供者を物上保証人という。
事例3 AのBに対する貸金債権を担保するため、B所有地にAの抵当権が設定されていたが、債務者Bが債務を弁済しないため、抵当権者Aは抵当権を実行し、B所有地を競売に付した。Bには、他に債権者C・Dがいたが、C・Dは何ら担保を有していない。
競売代金が3,000万円であった場合、ここからAは優先的に2,000万円の弁済を受けることができ、他の債権者C・Dは、残額である1,000万円からその債権金額に応じて弁済を受けることになる。
■抵当不動産の使用・収益等
抵当権が成立したあとも、担保として提供された不動産の占有は移転しないので、抵当権設定者は、いままでどおり抵当不動産を使用・収益することができる。そのほか、抵当権者の同意を得ることなく抵当不動産を売却など処分することができる。つまり、抵当権設定者は抵当権が設定された土地を賃貸して地代をとることもできるし、売ってしまうこともできる。
また、抵当不動産に他の債権者のために抵当権を重ねて設定することもできる。
Point 抵当権設定者は抵当不動産を使用・収益することができるが、あくまでも通常の利用に限られ、これを逸脱するような行為(抵当不動産の担保価値を下げるような行為)までが認められるものではない。抵当権設定者がこのような侵害行為を行ったときは、抵当権者は、その排除を求めることができる。